402話 先を行け
今、エルフィンさんはなにを考えているか?
突然、リーンとモニカが現れて……そして、フィーニアと一緒に姿を消した俺のことを、どう思っているか?
たぶん、怒り心頭という具合だろう。
俺の策略で、リーンとモニカをあらかじめダンジョンに潜ませておいて、不正を働こうとした。
こんな具合に思考が傾いていると思う。
誰も入ることのできないはずのダンジョンに二人がいたら、そう思うのも仕方ない。
ホント、あの二人、どこから現れたのやら……
まあ、それを考えるのは後回しだ。
とにかくも、エルフィンさん……それに他の不死鳥族も、俺がリーンとモニカと組んでいると考えているだろう。
それを否定するために、二人を捕まえないといけない。
あと……どうせまた、ろくでもないことを企んでいるだろうからな。
それも止めないといけない。
「で、でも、あの……どうするんですか? ワタシ達、自分がどこにいるのかもわからないのに……」
「おふぅ……」
二人はしょんぼりとしているが、対策はある。
「時間をかければ、不死鳥族の里に戻ることはできる」
多数の動物と仮契約をして、人海戦術で里を探す。
こうすれば、時間はかかるかもしれないが、確実に見つけることができるだろう。
ただ、今は時間がない。
リーンとモニカが次の行動に移らないとも限らないし……
なによりも、人質になっているカナデとシフォンのことが心配だ。
だから、別の方法を選ぶ。
「不死鳥族の里に戻るんじゃなくて、先に、リーンとモニカを見つけよう」
「え……と、それはそれで、難しいんじゃあ……?」
「いや。あの二人の追跡なら、そう難しいことじゃない……というか、かなり楽だ」
あのまま不死鳥族の里にとどまっているとは思えない。
一度外に出て、次の行動に向けて体を休めるために、野営をしているはずだ。
野営をする際、火は必須。
体を温めるだけではなくて、動物や魔物を近づけないという目的もある。
「火を使うのは人だけ。こんな状況で外で火を使うのは、リーンとモニカ以外にいないだろう。それを探せばいい」
「な、なるほど……でも、どうやって?」
「ちょっと協力をしてもらうことになるんだけど、えっと、不死鳥族の里に行く途中で見かけたから、たぶん、ここら辺にも……おっ、いたいた」
全身が赤い鳥を見つけて、呼び寄せた後、仮契約をする。
「それは……な、なんですか?」
「こいつは、ヒドリっていう名前の鳥なんだ。ほら、全身が火のように赤いだろう? だから、ヒドリ」
「な、なるほど……」
「コイツはおもしろい習性があって、熱いところの近くで体を休めるんだよ。基礎体温が低いらしく、自然と熱いところを探すようになったとか。その感知能力は驚くほどに優れていて、数キロ先の熱源を探すことができるとか」
「あっ、それじゃあ……」
俺の考えていることを理解したらしく、フィーニアは納得顔になる。
「うん。まずは、コイツに仲間を呼んでもらい……」
独特の鳴き声が響くと、さらに十羽ほどのヒドリが現れた。
全部、仮契約する。
「頼んだぞ」
一斉に飛んでもらう。
バサバサバサ、と無数の羽音が響いた。
十数羽のヒドリは、俺達の上で円を描くようにして飛ぶ。
たぶん、熱源を探しているのだろう。
そして、半分ほどがバラバラの場所に飛んで……
残りの半分が、まとまって一つの方向に飛ぶ。
「あの集団についていこう」
「は、はいっ」
「オンッ!」
――――――――――
見知らぬ土地を駆けることしばらく。
カナデと契約した力があるとはいえ、さすがに息切れを起こしてきた。
そんな俺に構うことなく、ヒドリはまっすぐ飛び続けている。
これでリーンとモニカがいなかったら、泣くぞ。
どうか間違いのありませんように……と祈りつつ、ヒドリの後を追う。
「ほ、本当に……あの人間がこの先にいるんでしょうか?」
フィーニアはサクラに乗っている。
サクラの体力は無限なのか、まるで疲れた様子がない。
「五羽が反応しているから、火を目指していると思いたいが……これで、単なる山火事とかだったら泣けてくるな」
「そ、そういう可能性もあるんですね……」
「山火事だとしたら、煙なんかで遠くからでもわかるから、それはないと思うが……待て。ストップ」
「ふぇ……?」
それに気がついた俺は、すぐに近くの茂みに身を潜めた。
フィーニアはキョトンとしていたが、サクラは俺の言いたいことを理解してくれたらしく、続けて茂みに潜り込んでくる。
「ど、どうしたんですか……?」
「静かに……ほら、アレ」
俺の視線の先に、焚き火が見えた。
人の姿は見えないが、焚き火はまだ燃えたままだ。
たぶん、一時的に席を外しているのだろう。
「た、焚き火ですっ」
「よし。正解を引けたみたいだな」
「ど、どうするんですか……?」
「リーンとモニカが戻ってくるのを待って……いや。その前に、ちょっとしかけておくか」
「しかける?」
――――――――――
「あはははっ、不死鳥族? 呀狼族? あいつら、めっちゃちょろいんですけど」
「ふふっ、うまくいきましたね」
リーンとモニカは、次は呀狼族の里を訪れた。
そこでモニカの力を使い、不死鳥族のフリをして、魔物を呼び寄せてやる。
彼らは見事に騙されてくれて、不死鳥族に対する敵意を募らせていた。
同じことを両種族に繰り返していけば、ほどなくして全面抗争に発展するだろう。
そうして潰し合いをしてもらい……
最後に残った方を叩く。
楽な仕事だ。
それだけではなくて、とても楽しい。
最強種が自分の手の平でいいように踊る……滑稽すぎて笑いが止まらなくなりそうだった。
「あー……でも、何度も転移したり召喚したから、ちょっと疲れたわー」
「では、休憩をしましょうか。そのままにしていますから、すぐに野営ができますよ」
「本当ならベッドがいいんだけどねー。ま、そこまで贅沢は言ってられないか」
リーンとモニカは野営地に戻った。
そこで火にあたり、ゆっくりと休む。
心地よくて、ついついうつらうつらとしてしまう。
「……えっ!?」
チクリとした感触がして、一気に目が覚める。
しかし、体は自由に動くことはなくて……そのまま、ころりと横に倒れてしまう。
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