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395話 レース開始!

 夜が明けて、朝が訪れる。

 といっても、ダンジョンの中にいるせいで太陽が上っているかどうかはわからない。

 時間感覚がちょっとおかしくなりそうだ。


 なにはともあれ、翌日。

 呀狼族と不死鳥族の友好を深めるためのレースが行われることに。


 大きな部屋に、たくさんの呀狼族と不死鳥族が集まっていた。

 その中に、人質として別行動をとっていたカナデとシフォンの姿も。

 よかった、特になにもされていないみたいだ。


 そして、中心に俺とサクラ。

 エルフィンさんとフィーニアが。


「サクラ、がんばれよ! 俺達呀狼族の力、見せつけてやれー!」

「兄ちゃん、期待しているぜ! 代表として、がんばれよー!」


 呀狼族の人達は、けっこう好意的な応援をしてくれている。

 先日の試練のおかげで、しっかりと認めてくれたみたいだ。


 一方、不死鳥族の方はというと……


「ちっ……なんで人間なんかがこんなところに。エルフィンさま、ソイツ、燃やしてもいいですよ!」

「人間が里に足を踏み入れるなんて……フィーニアちゃん、焼き払って、綺麗に掃除しちゃいましょう! 大丈夫、私は許すわ!」


 ものすごいヘイトが向けられていて、あちらこちらから刺すような視線と言葉が飛んでくる。

 人を嫌う精霊族の里を訪ねた時も、こんなことは起きなかった。


 今回はぜんぜん違う。

 本当に命を狙われているのでは? と危機感を覚えてしまうほどで、なにもしていないのに疲労が積み重なってしまう。


 こんな状態から、不死鳥族を味方につけることなんて、本当にできるのだろうか?

 ……いや。

 弱気になったらダメだ。


 できるかどうか、じゃない。

 絶対にしてみせる、だ。

 俺のためじゃなくて、イリスのために。


「それじゃあ、私が審判を務めるよ」


 シグレさんが一歩前に出た。


「このダンジョンは、全部で十層で構成されている。ここは三層。四層以降は手をつけられてなくて、魔物やらトラップがあるよ」


 魔物がいる上で暮らすなんて、不死鳥族はすごいな。

 普通なら考えられない。

 最強種ならでは、ということだろうか?


「十層のどこかに置いてあるお宝を手にして、先にここへ戻ってきたチームの勝ち。相手チームへの妨害は可能で、お宝を横取りすることも可能。まあ、最後まで油断したらいけないよ、ということさね」

「ちょっといいですか? そのルールだと、開幕と同時に乱戦になりません?」

「大丈夫さね。そうならないように、最初は、それぞれ別の道を進んでもらう。ダンジョンだから、入り口出口はたくさんあるのさね」


 なるほど。

 それなら、いきなり乱戦になる可能性はない。

 何度もレースが行われているだけあって、色々と考えられているみたいだ。


「他に質問はあるかい?」

「相手チームへの妨害っていうのは、どの程度のレベルまで許されるんです?」

「各々の裁量に任せているよ」

「それはまた……」


 どうとでもとれるような言葉に、思わず顔をひきつらせてしまう。


 シグレさんは各々の良識に期待すると言うのだけど、人を敵視する不死鳥族が手加減をしてくれるとは思えない。

 むしろ、ここぞとばかりに、積極的に攻勢に出てくるだろう。


 俺達……というか、俺にとってはかなり不利な条件だ。

 向こうが思う存分にやってくるからといって、こちらは力を貸して欲しいため、無茶苦茶やるわけにはいかない。

 そんな関係だから、下手したら一方的にやられる可能性がある。


 でも……だからこそ、なのか。


 俺に有利な条件で勝利しても、不死鳥族は力ある者と認めてくれないだろう。

 不利な状況で、逆境をはねのけてこそ、強い力と心を持つと、人間に対する考えを変えてくれるかもしれない。


 たぶん、シグレさんはそこまで考えた上で、今回のルールを設けたのだろう。

 厳しいといえば、かなり厳しいのだけど……

 でも、それしか道がないというのなら、やってみせようじゃないか。


「他に質問はあるかい?」

「俺はないです」

「オンッ」


 他に知りたいことはない。

 俺は問題ないというように頷くのだけど、


「質問をいいでしょうか?」


 エルフィンさんが口を開く。


 ちらりとこちらを見た後、笑いながら言う。


「相手チームへの妨害は可能ということですが……その結果、殺めてしまうことになったら、どうなるのですか?」

「個人の裁量に任せると言ったはずだよ」

「それがあなたの答えなのですか?」

「ああ、そうさね」

「……なるほど、わかりました。ふふっ」


 最後にもう一度、エルフィンさんが笑う。

 思わずゾクリと震えてしまうような、凶悪な笑みだ。


 これは……レース中、絶対になにかしかけてくるな。

 それも、ただの妨害じゃなくて、攻撃の類。

 下手をしたら、本気で命を狙いに来るだろう。


 俺は覚悟を決めているからいいんだけど……

 サクラはどうだろう?

 完全にこちらの事情、都合に巻き込んでしまっている。

 そのことが申しわけなく……


「グルルゥ……」

「いたっ」


 サクラは不機嫌そうに唸り、俺の足を軽く噛む。

 何事かと見ると、サクラがじっと俺を見つめていた。

 その瞳は、まるで、つまらないことを考えるな、と言っているかのようだ。


 犬と同列に扱うのは失礼かもしれないけど……

 犬はとても鋭いところがあり、人の心がわかるとも言う。

 だからこそ、サクラは俺の迷いを見抜いたのかもしれない。

 そして、自分を侮るな、昨日一緒にがんばると約束しただろう……と、怒っているのかもしれない。


 どうして、サクラがそこまで俺のことを信頼してくれるのか?

 そこは、謎なのだけど……

 でも、しっかりと応えられるように、がんばらないといけないな。


「悪かったよ」

「オフゥ……」

「一緒にがんばろう」

「オンッ!」


 うん。

 これで、俺達の心は一つだ。

 もう迷いはない。

 どんな困難が待ち受けていようと、サクラと一緒に、全力でぶつかり全力で乗り越えていくだけだ。


「質問は以上かい?」

「ええ、大丈夫です」

「俺も」

「なら、レースを始めようか」


 スッと、シグレさんが手を上げる。

 少しの間を置いて、その手を振り下ろして、


「始め!」


 レースが開始された。

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

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よろしくおねがいします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] サクラ、出逢ったばかりのレインに発破をかけるとは中々に度胸あるな。
[一言] もし未来の話で、 今度はたくさんの呀狼族(サクラ)と不死鳥族(フィーニア)の2種族だけではなく、 レイン(人間)・猫霊族(カナデ)・竜族(タニア)・精霊族(ソラ&ルナ)・神族(ニーナ)・幽霊…
[良い点] 迷いから解き放たれて覚悟が固まった回でしょうか?想いが純粋であれば、後は道理が加護しますから思う存分に。少なくても対戦相手は邪心満々の様ですから実力の大半は、想いの差で抑えられ実力も拮抗す…
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