387話 試練をくぐり抜けろ
里の中央にある広場に移動する。
俺とシフォンが横に並び、シグレさんと対峙する。
そんな俺達を取り囲むように、呀狼族の方達が。
それと、がんばれー、と応援してくれるカナデ達。
「まさか、こんなことになるなんて……」
力を貸してほしいというのならば、まずは、俺達が力を示せ。
呀狼族が力を貸すにふさわしい器であるか、その価値を見せろ。
さきほどの会議でそんな結論が出されることになり……
人間である俺とシフォンは、シグレさんと決闘をすることになった。
戦うことで力を示す。
いつぞやの精霊族の時と似たような展開だ。
戦い、勝利すればいいということなので、わかりやすくはあるんだけど……
だからといって、簡単なことじゃない。
なにしろ、相手は最強種。
しかも、今まで知ることのなかった種族だ。
どれだけの力を持つのか、どんな戦い方をするのか、さっぱりわからない。
故に、勝算も未知数。
でも、
「レイン君、がんばろうね」
「ああ!」
やはり、諦めるという選択肢なんてない。
これしか道がないというのならば、迷うことなく突き進む。
障害があるのならば、なにがあろうと乗り越えてみせる。
「さて……準備は整ったかい?」
シグレさんが静かに問いかけてきた。
戦いを前にしているからなのか、鋭い闘気のようなものを感じる。
かなりの歳だと思うのだけど、でも、それに騙されたらいけないな。
呀狼族を代表して戦うくらいだから、相当な実力者なのだろう。
それこそ、スズさんのような力を持っていてもおかしくない。
「俺はいつでも」
「私も問題ないです」
「なら、始めようかね。サクラ、合図を」
「オンッ!」
サクラが高い声で鳴いて、試合が始まる。
「ふぅううううう……はぁっ!」
シグレさんは深く息を吸い込んだ後、力強く吐いた。
それがトリガーとなっていたらしく、青白い炎のようなものが彼女の体を包み込む。
「あれは!?」
「これが闘気さね。呀狼族の戦い方、見せてあげるよ」
シグレさんは両拳を腰だめに構えた。
なにをしてくるのか?
行動を読むことができず、俺とシフォンは互いに身構える。
「はぁっ!」
シグレさんが両拳を前に突き出す。
それに合わせて、青白い炎のようなもの……闘気が形を取り、矢のごとく射出される。
速い!
地面を蹴り、さらに体を倒すようにしつつ、闘気の矢を避ける。
シフォンも同じような行動をとり、避けていた。
「ぐっ!?」
完全に避けることができず、ジリッ、とかすめた。
それだけなのに、攻撃魔法が至近距離で炸裂したような、とんでもない衝撃が走る。
一瞬ではあるが、意識が持っていかれそうになった。
シフォンもその恐ろしさを感じ取ったらしく、顔をひきつらせている。
「と、とんでもないね……これ、ためらったりしていたら、あっという間にやられちゃうかも」
「こちらは二人で、なんかもうしわけないけど……でも、そんなことは言ってられないか」
「うん。全力でいこう」
俺とシフォンは互いを見て、合図をするように頷いた。
そして、手の平をシグレさんに向ける。
「ファイアーボール・マルチショット!」
「ギガボルトッ!」
無数の炎の球と、竜のごとくうねる稲妻がシグレさんを狙う。
手加減なしの全力の一撃だ。
これで勝てるとはさすがに思っていないけど、それなりのダメージは与えられるかもしれない。
そんな期待をしていたのだけど……
「さて、次は連射さね」
シグレさんは再び闘気の矢を射出した。
さきほどのものよりも小さいけれど、立て続けに射出できるらしく、俺達の攻撃を全て迎撃してしまう。
さすがに、これは予想外だ。
極大の一撃を放つだけではなくて、連射もできるという。
遠距離攻撃に関しては、ほぼほぼ完璧なのではないか?
なら、近接戦にするべきか?
「……んっ」
ちらりとシフォンを見ると、軽く頷かれた。
どうやら彼女も同じ考えだったらしい。
「ファイアーボール・マルチショット!」
もう一度、複数の火球を生み出した。
ただし、目標はシグレさんじゃない。
その周囲に火球を着弾させて、土煙を舞い上がらせる。
単純な目くらましだけど、ないよりはマシだろう。
俺とシフォンはそれぞれに武器を抜いて、土煙の中に飛び込む。
こちらからも見えないけれど、大体の位置は覚えている。
そちらに駆けるのだけど……しかし、シグレさんの姿はない。
慌てて周囲を探るのだけど、やはりいない。
「あ、あれ? いったいどこに……?」
「これは……っ!? シフォンっ、上だ!」
「えっ!?」
直上から強い圧を感じて、空を見上げると、闘気をまとい空を自由自在に飛ぶシグレさんの姿が。
「……うそぉ」
シフォンが呆然としているけれど、きっと、俺も似たような顔をしていると思う。
闘気をまとうことで、色々なことができるようになるとは聞いていたけれど……まさか、空を飛ぶことができるなんて。
いや、それ……反則じゃないか?
「ほらほら、驚いているヒマはないよ」
シグレさんは余裕の笑みを浮かべながら、空から闘気の矢を射出してきた。
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