表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

382/1168

382話 不死鳥族

「えっ、他にも最強種がいるんですか?」

「ここから西に、ここと同じような平原があるのは知っているかい?」

「はい。行ったことはないですけど、地図があるので」

「へえ。この大陸の地図を持っているのかい。誰か知らないけど、その地図を作った人は優秀だねえ。おっと、すまないねえ。話が逸れてしまったよ。いけないねえ、歳を取ると、どうもおしゃべりが多くなってねえ」


 シグレさんは愛嬌のある笑みを見せてくれる。


 精霊族と似たように、人間に呆れ、姿を消したと聞いたけど……

 その割には、俺やシフォンに対して、けっこう友好的だよな?


 サクラが懐いているから、だから、俺達のことも信用するという話だけど。

 孫が信用しているから自分も信用する。

 そんな簡単な話なのだろうか?


 信用しているという話にウソはないと思う。

 だから、他になにか、信じるだけの要素が隠されていると思う。


「どうしたんだい?」

「あ、いえ……なんでもありません」


 いけないいけない。

 気になることだけど、今は、もう一つの最強種についての話を聞かないと。


「もう一つの最強種について、教えてもらうことは可能ですか?」

「ああ、いいさね」


 シグレさんは一つ頷いた後、ゆっくりと語る。


「ここから西の平原に、広大なダンジョンの入り口がある。いや……元ダンジョンというべきかね」

「元……? それ、どういうことなんですか?」

「件の最強種は、そのダンジョンを住処としているんだよ。だから、元ダンジョン、というわけさ」

「なるほど……」


 ダンジョンを住処にしてしまうなんて、とんでもない最強種だ。

 普通、そんな事は考えないし、仮に考えたとしても、実行できるだけの力がない。


 さすが、最強種というべきか。

 こちらも規格外の存在らしい。


「彼らは私らとは違い、幼少期は違う姿を取る、なんていうことはないよ。その外見は人間によく似ている。特徴としては、そうさねえ……炎を操るというところかねえ?」

「炎を……ということは、治癒能力は持たない?」

「いや」


 シグレさんは首を横に振る。

 それから、考えるような仕草をしつつ、言葉と情報を組み合わせていく。


「炎を操るといっても、攻撃能力に特化しているわけじゃないよ。レインが求める治癒の力を、彼らは持っている。治癒の炎、というヤツだね」

「治癒の炎……」

「その炎は、炎でありながら暴力的ではなくて、とても優しい。肌を焼くようなことはなく、むしろ、温かく包み込む。死者すら生き返らせることが可能……と言われているね」

「本当ですか!?」

「あくまでも、そのように聞いている、というだけさね。不死鳥族のことは私達も詳しいけれど……さすがに、そこまでの力があるかどうか、それは断定できないよ」

「そうですか……」


 なにもかもが思い通りというわけにはいかず、少しガッカリしてしまう。


 でも、道は開けた。

 治癒の力を持つという、最強種は確かに存在した。

 あとは、どうにかして協力を取り付けることができれば……!


「不死鳥族は、どうして北大陸に?」

「あー……それなんだけどねえ」


 シグレさんが、とても苦い顔をした。

 あまりよくない予感がする。


「基本的に、私達や精霊族と似たようなものさ。人間に愛想をつかして、人間のいない北大陸に移住したのさ。私達と同じくらいの時期だから、記録に残っていないんだろうね」

「なるほど……」

「ただ、一つ大きな問題がある」

「問題ですか……?」

「彼らは、人間をひどく敵視しているのさ」


 シグレさんの話によると……


 昔は、人と不死鳥族は良き友人として同じ道を歩いていたらしい。

 しかし、不死鳥族が死者すら蘇らせることができるという力を持つと知り、人は彼らを求めた。


 家族を蘇らせてほしい。

 友人を蘇らせてほしい。


 欲望はそれだけにとどまらず……

 死んでも生き返る方法を教えてほしい。

 不老不死になる方法を教えてほしい。

 理不尽な要求を突きつけるように。


 それで人に愛想を尽かした不死鳥族は、呀狼族と同じように、人と距離をとろうとした。

 しかし、人はそれを許さない。

 かつて、天族にしたように……

 人の道を踏み外した行いに出ようとした。


 結果……人と不死鳥族の間で争いが起きた。

 そして、関係は最悪の状態へ。

 不死鳥族は人を完全に敵と見なしつつ、北大陸へ逃げたという。


「……なんてこった」


 ひどい話を聞かされた俺は、思わずその場で頭を抱えてしまう。

 どこの誰か知らないが、過去の人は余計なことをしまくってくれる。


「うーん……そんな背景があると、ますます難しいかもしれないね」


 シフォンが顔を曇らせつつ言う。

 そうなのだ、彼女の言う通りなのだ。


 不死鳥族は、自分達の力を利用されることを嫌い、北大陸へ移動した。

 そして俺達は、そんな不死鳥族の力をアテにして、ここまでやってきた。


 スムーズに物事が展開していくとは、欠片も考えられない。

 トラブルの予感しかしない。


「私達呀狼族や精霊族なんかは、人間を嫌っているだけさね。冷たく突き放すようなことはしても、攻撃するようなことはない。まあ、向こうからしかけてきたら別だけどね。ただ、不死鳥族は違くてねえ……彼らは、人間を見つけたら、問答無用で攻撃するだろうね。それこそ、魔物と扱いは変わらないよ」

「うにゃー……私達、魔物なんかじゃないのに」


 カナデが不服そうに唇を尖らせた。

 その気持ちはわかる。

 わかるけど……不死鳥族の気持ちも、なんとなく理解できるんだよな。


 シグレさんの話を聞くと、過去、相当ひどい目に遭ったみたいだ。

 それこそ……イリスのように。

 そんな目に遭えば、人をとことん敵視しても仕方ないだろう。


「さて……不死鳥族については、こんなところかね。細かい場所を教えても構わないが、十中八九、攻撃されるね。種族全体で、思う存分に暴れると思う。そんなことになる未来は見えているんだけど……どうする?」

「もちろん、行きます」


 即答すると、シグレさんは目を丸くした。


「……私の話、聞いてなかったのかい?」

「聞いていますよ。たぶん、問答無用で攻撃されるんですよね? 話し合いをするヒマすらないというか、そもそも説得も難しい。俺達の目的が治癒能力にある以上、さらに話がこじれる可能性が高い」

「そこまでわかっているのなら……どうしてなんだい?」

「……苦しんでいる子がいるんです」


 過去にひどい目に遭って、以降、ずっと暗闇の中で生きてきて……

 そんなイリスが時折見せる、空虚な笑みが忘れられない。

 生きていることなんて、どうでもいいというような……そんな空っぽの笑みが、脳裏に焼き付いて離れてくれない。


「俺は……イリスに笑ってほしい。心の底からの笑みを、また見たい」


 以前……なにも知らない時にイリスと話をした時は、楽しそうに笑っていたような気がする。

 あの時のような笑顔を取り戻したいと、心の底から願う。


「だから、なにがあろうと、なにが待ち受けていようと……俺は突き進むだけです」

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマやポイントをしていただけると、とても励みになります。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[一言] ろくでもないのは現在の人間もですね。 前勇者を筆頭に、領主、レインと夫婦漫才以外の冒険者、ギルドや騎士団の上層部など、ここまでで描写された人間の半数以上が腐りきってますよね。
[良い点] 何時も楽しく読ませて頂いてます! [気になる点] あの…もしかしてラスボス魔王じゃなくて人類そのものなんじゃ…
[良い点] やばいレインがかっこよすぎる、イリスの為に全力ダッシュだ、必ず助かると信じてます。 [一言] 不死鳥族がついに癒し系の最強種でましたね、このままだと、サクラと不死鳥族が仲間入りするのかな?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ