378話 小さな……
俺はビーストテイマーだ。
最初はみんなに規格外とか言われていて、その自覚はなかったのだけど……
最近では自分の出自などを知り、それなりの自信を持つことができた。
なんでも……とは言わないけど、普通の動物なら、テイムする自信はある。
体調が悪いとか、そういう問題がなければ、100パーセントの可能性で成功させることができると、そんな自負がある。
それなのに……
「なんで失敗するんだ……!?」
繰り返してみるが、狼をテイムすることができない。
おかしい。
こんなことは初めてだ。
思わず動揺してしまい、棒立ちになってしまう。
そんな俺を見た狼は、
「オンッ!」
鋭く鳴くと、勢いよく地面を蹴る。
そのまま、ダダダッ! と突進してきた。
「うわっ!?」
突進をまともに受けてしまい、押し倒されてしまう。
思った以上の力で、抵抗することができなかった。
狼はそのまま俺の胸元に乗り、口を開けた。
鋭い牙がいくつも並んでいるのが見える。
そして……
「レイン!?」
「あー……うん、大丈夫」
悲鳴に近い声をあげるカナデに、問題ないと応えてみせた。
俺の上に乗る狼は……
「ハッハッハッ……クゥン!」
とてもうれしそうに尻尾をブンブンと横に振りながら、俺の顔をペロペロと舐めていた。
よだれでベトベトだ。
なんでかわからないけど、すごく懐かれてしまったみたいだ。
エサもあげていないし出会ったばかりなのに、なんでだろう?
「レインっ、大丈夫?」
カナデ達が駆けてきた。
そして、俺の上に乗る狼を見て、ぎょっとなる。
「うわっ!? この子、けっこう大きいね……」
「ホント……こんな大きな狼、初めて見るかも。レイン君、大丈夫?」
シフォンの言う通り、やたら大きい狼だ。
体長は俺と同じくらいだろうか?
全身にびっしりと生えている黒い毛は、毛先が赤く輝いているという、ちょっと見たことのない配色をしていた。
手足の先の爪は、刃のように鋭い。
ただ、俺のことを気遣ってくれているらしく、爪が刺さらないように、手足の先をきゅっと丸めていた。
尻尾はとても大きい。
体と同じくらいのサイズで、遠くから見たら、どちらが本体かわからないかもしれない。
そして、よくよく見てみると、額に小さな角が生えていた。
小さいながらも槍のように鋭く、しっかりと存在感を主張していて……
「……って、角?」
普通の狼にはありえないものに、思わずキョトンとしてしまう。
見間違いではなくて、しっかりと生えている。
こいつは……
「狼じゃない」
俺の答えを先回りするように、リファがそう言う。
「よしよし。いい子」
「クゥン」
リファは狼を俺の上から降りるように誘導した後、その頭を撫でる。
狼はリファにも懐いている様子で、頭を撫でられると気持ちよさそうな声をこぼしていた。
というか、リファだけじゃない。
カナデやシフォン、恐る恐る触るニーナに対しても、とても友好的な態度を示していた。
「キミ、賢いね。ボクの眷属になる?」
「ウォン」
「残念」
狼が首を横に振る。
今の話、理解したのだろうか……?
だとしたら、知能も相当なものだな。
「この子、魔物なのかな?」
「それはないと思うんだけど……」
シフォンがそう思うのも無理はない。
普通の狼にない特徴を持っているし、知能も力もやたらと高い。
でも、魔物が人に懐くなんてことはありえない。
モンスターテイマーが使役するのならば別だけど……
俺はそんなことをしていないし、できない。
となると……いったい?
ホント、謎の狼だ。
「にゃー……」
カナデがじっと狼を見つめた。
そんな彼女を、狼もじっと見つめ返す。
「……にゃんっ!」
「オンッ!」
互いに吠える。
会話をしているかのようだ。
「カナデ、もしかして、ソイツのことがわかるのか?」
「うーん……根拠はないんだけど」
一拍置いて、カナデは自分なりの結論を口にする。
「この子……最強種なんじゃないかな?」
「「えっ!?」」
俺とシフォンの驚きの声が重なる。
ただ、カナデと同じ結論に至っていたのか、ニーナとリファは驚かない。
「それは本当なのか?」
「根拠はないから、断定はできないよ。でも、私と契約してるレインを押し倒すなんてこと、普通の狼やそこらの魔物ができるわけないし」
そういえば、そうだ。
「レインが仮契約できないっていうのも、この子が最強種だとしたら納得の話だよね。いくらレインでも、最強種をホイホイと簡単に仮契約できるわけないし……うーん、でも、レインならやってのけそう?」
「無茶言わないでくれ。さすがに無理だ」
本契約ならともかく、最強種を仮契約で使役できるわけがない。
「あと、私の勘のようなものになっちゃうけど……この子、なーんか共感を感じるんだよね。私達最強種ならではの感覚というか……お仲間みたいな雰囲気を覚えるんだ」
「なるほど……」
最強種であるカナデが言うと、やたら説得力があった。
「お前、最強種なのか?」
「オンッ!」
こちらの疑問を知ってか知らずか、狼は元気よく吠えるのだった。
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