377話 北大陸
「到着なのじゃ」
精霊族の里を経由して、転移門を使用して、北大陸に到着した。
そこに広がる光景は……
「にゃー……なんか、思っていたよりも普通だね」
カナデの言う通り、普通だった。
なだらかな平原が広がる。
左手奥に森が見えた。
さらにその奥に小さな山。
右手には、やや幅の広い川が流れていた。
ずっとずっと奥に伸びていて、どこが源泉なのかは、ここからではわからない。
さすがに街道が整備されているということはないが……
特筆するようなことはない、ごくごく普通の光景だ。
「カナデさんの言う通り、普通だね……私、もっとおどろおどろしい光景を想像していたんだけど」
「うんうん、そうだよねー。こう、自分の何倍もあるような大きな木が密集していたり、見たことのない花とかが咲いていたり、くけぇー、なんていう奇声を発する鳥がいたり」
シフォンとカナデが北大陸についてのイメージを話す。
実のところ、俺も似たようなイメージを抱いていた。
だって、未開の地だからな……
未開=とんでもない場所、という印象があったせいか、悪いイメージばかりが膨らみ、すさまじい光景を思い浮かべていた。
実際は、そんなことないみたいだけど……
ほっとしたというか、少し拍子抜けした。
「お主らの言うこともわからんではないがな。人間にとって未開の地であるだけで、最強種などは住んでいるのじゃ。ならば、住みやすいように開拓するのが当然じゃろう?」
アルさんの言う通りだった。
「ただ、油断するでないぞ? 見た目は平凡だとしても、その奥になにが潜んでおるか、それは誰にもわからぬ。子うさぎかと思い油断したら、とんでもない化け物という可能性もある。心して進むのじゃ」
「はいっ」
「では、妾はクリオスに戻るのじゃ。一緒に行けぬのはもうしわけなく思うが……気をつけるのじゃぞ?」
「「「はいっ」」」
今度はみんなで返事をした。
それを見たアルさんは満足そうに笑い、転移門の中へ消えた。
「さて……それじゃあ、北大陸の攻略開始だな」
「んっ……がん、ばる」
ニーナは小さな拳をぎゅっとして、やる気を見せていた。
イリスのことが気になっているのだろう。
今までにないやる気だ。
優しい子だ。
「ふぁ」
ついついいい子いい子をしてしまうと、ニーナが頬を染めた。
でも、すぐに気持ちよさそうな顔になり、頭を差し出してきた。
「にゃーうー……」
「むっ」
カナデとリファのうらめしそうな視線が。
こんなことをしている場合じゃない、と言いたいのかもしれない。
確かにその通りなので、なでなではほどほどにして、まずは地図を広げた。
「レイン君、これからどうしようか?」
「そうだな……」
レゾナさんにもらった地図には、北大陸の大体の地形が書き込まれていた。
この部分は海岸、ここから先は山。
そして、この辺りは森……などというように。
ただ、俺達が探す最強種がどこにいるのか、などという情報はない。
なので、大体の地形から、最強種が暮らしている場所を推測しなければいけないのだけど……
「普通に考えるなら、ここかここ、だよな?」
北大陸の北東部、及び北西部に平原がある。
他は森が広がっていたり、崖があるなど、平穏に生活するのには適していない。
ただ……
「森で暮らす方が適している、という可能性もある」
リファの言う通り。
例えば、精霊族は森を住処にしているし……
俺は知らないが、険しい崖を住処にする最強種もいるかもしれない。
もっと言えば、海の中で生活をしている最強種の可能性も。
最強種っていうのは、人の常識が通用しないからな。
火山の中に住んでいる最強種がいたとしても、ぜんぜん不思議じゃない。
そのことを考えると、どこを探していいものやら。
「……ひとまず、北東と北西の平原に行ってみよう。俺達の常識は通用しないかもしれないけど……普通に考えると、ここで暮らしている可能性が高い。見つからなくても、なにかしら手がかりを得られるかもしれない。他に選択肢がない以上、そうしてみようと思うが……みんなはどう思う?」
「うん、レインの言う通りでいいと思うよ。にゃんっ」
「私もカナデさんと同じく賛成かな」
「わたし……も、いいと思う」
「ボクも賛成」
「よし、決まりだ」
満場一致で平原を目指すことにした。
北東にある平原の方がわずかに近い。
まずはそちらを目指すことにしよう。
「出発しようか」
「うんっ」
カナデが元気よく頷いて、食料や水などが入った大きな荷物袋をひょいっと担いだ。
女の子にこんな大きな荷物を持たせてしまうことは申しわけないのだけど……
実際、カナデが一番の力持ちなんだよな。
カナデと契約をしているから、俺もそこそこはあるんだけど……それでも、最強種の力には敵わない。
カナデより一回り小さいサイズの荷物袋を持つ。
シフォンも同じような荷物袋を背負う。
さすが勇者。
最強種と契約をしていないのに、とんでもない力だ。
「んー……?」
ふと、シフォンがこちらを見た。
「レイン君、今、失礼なことを考えてなかった?」
「え? そんなことはないけど……」
「女の子なのに力持ちだなあ、とか思ってなかった?」
「それは思った」
「それはダメ。特にうれしくない言葉なんだからね」
「えっと……すまない」
女の子……難しいな。
「おっ」
少し歩いたところで、狼を見つけた。
敵意はないらしく、いきなり襲ってくることはない。
むしろこちらに興味がある様子で、トテトテと近づいてきた。
「ちょうどいいや。少し力を貸してくれ」
道案内のために狼をテイムしようとするのだけど……
「えっ……仮契約できない!?」
いったい、なにが起きたのか?
仮契約のための術式が跳ね返されてしまうのだった。
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