375話 助っ人
「あ……」
目を開けると、宿の部屋の天井が見えた。
私……シフォン・ノクスは体を起こして、ぐるりと部屋を見る。
ミルフィーユとショコラがベッドに寝ていた。
特におかしな様子はなくて、普通に寝ているだけみたい。
「えっと、私……」
なんでこんなところで?
考えて……そして、すぐに思い出した。
「そっか……私、裏切るようなことをして、それでレイン君に負けて……」
自分の行動を思い返して、
「あああああぁっ……!?」
頭を抱えた。
「私、なんてことを……辛いからって、楽な方に逃げ出して……うぅ、すごく恥ずかしい。レイン君だって、きっと辛いことを経験しているはずなのに、それなのに私は……ああもうっ、本当に私っていう人は……」
はぁあああっ、と深いため息がこぼれた。
自分に対する失望だ。
「私……勇者の資格なんてないよね」
楽な道を選んで、前を向いて戦おうとしないで……ダメダメすぎる。
本当に恥ずかしい。
レイン君と戦い、その強さを身を以て知った今ならわかる。
なにがあろうと前を向いて歩き続ける強さを持つことこそが、とても大事なことだ。
そのことを私は忘れていた。
そんな私に勇者を名乗る資格なんて……
「って……ここで短絡的な答えを出して、そのまま辞めちゃう方がダメダメだよね。全てを報告して、そして、私のことはアルガスさまが判断すること。ここで資格がないから返上するなんてしたら、それこそ無責任すぎるし、逃げているだけ。今は、私であり続けるように努力しないと」
間違えてしまった私だけど……
でも、全てが終わってしまったわけじゃない。
また歩き直すことはできる。
そう、レイン君に教わったから。
――――――――――
シフォンの目が覚めたということで、彼女達が泊まる宿へ。
扉を開けて部屋に入ると、
「ごめんなさいっ!!!」
「ごめんなさいー」
「すまん」
シフォン、ミルフィーユ、ショコラが横に並んでいて、いきなり頭を下げられた。
突然のことに面食らってしまう。
「えっと……?」
「本当にごめんね、レイン君……私、ちゃんと記憶が残っているの。というか、ほぼほぼ自分の意思で行動していたし……操られていたわけじゃないんだ」
「ということは、俺と戦ったことも?」
「……はい」
本当にもうしわけなさそうに……あと、恥ずかしそうにしつつ、シフォンがうつむいた。
「私、ものすごい迷惑をかけちゃったよね……本当にごめんなさいっ!」
シフォンは何度も何度も頭を下げている。
そのうち、土下座までしそうな勢いだ。
「あ、いや……別に気にしていないから」
「でも……」
「本当に気にしていないから。シフォンの気持ちは、俺なりにわかっているつもりだ」
俺も最初は夢に囚われていた。
イリスの助けがなかったら目覚めることはできなかったかもしれない。
そのことを考えると、シフォンを責めるつもりになんてなれない。
「ありがとう……レイン君は優しいね」
「そういうわけじゃないさ」
「ううん、優しいと思う。そういうところは、レイン君の美徳かな」
「えっと……」
「おっ、こやつ照れているぞ」
「ふふっ、かわいらしいですねー」
「二人はもっと反省して」
「「すみません」」
「ははっ……」
イリスのことがあって、ピリピリしていたのだけど……
仲の良い三人を見ていたら、少しだけ和んだ。
「ところで……あれからどうなったのか、教えてもらってもいいかな? その……恥ずかしい話だけど、ちょっと前に目を覚ましたばかりだから、なにがどうなっているのかわからなくて……」
「……ああ、いいよ」
今、どういう状況になっているのか?
そのことを説明するのは、いささか気が重い。
「実は……」
アルファさんは説得に応じてくれて、結界を解除した。
霧はまだ残っているものの、一日もすれば晴れるだろうということ。
そして……イリスが傷つけられたこと。
重傷で、治療方法を探すために北大陸へ向かうこと。
それらの説明をする。
「そんなことになっているなんて……」
シフォンの顔は暗い。
ミルフィーユとショコラも、とても難しい顔をしていた。
それぞれに責任を感じているんだと思う。
気にするな……っていうのは無理か。
短い付き合いだけど、三人の責任感が強いことはよく知っている。
「レイン君」
「うん?」
「私達にできることはない?」
「それは……」
正直に言うと、ある。
ものすごくある。
北大陸に行くとなると、やはり不安要素は拭えない。
パーティーを分断しないといけないから、戦力も半減だ。
シフォン達に協力してもらうことで、それを補うことができれば?
また、ミルフィーユがイリスの治療に参加してもらえれば?
ソラとルナの負担もだいぶ減ると思う。
「正直に言うと、すごく助かる。でも、シフォン達は勇者パーティーだから」
「うん、そうだね。私達の使命は、魔王討伐のための旅をすること。それが一番に優先される。そのために、彗星の剣の修理が最優先される」
「なら……」
「でも!」
シフォンは強い口調で言う。
「私は勇者である前に、一人の人間なの。誰かが危ない目に遭っているのなら……ましてや、その原因を作る一端が私にあるとしたら……それを見過ごすなんていうことをしたらいけないと思うの」
「……シフォン……」
「お願い。私にも手伝わせて」
「私も手伝わせてくださいー。責任があると思いますから」
「同じく」
ミルフィーユとショコラも同じことを口にした。
「うん……わかった」
「それじゃあ……」
「イリスを助けるために、力を貸してほしい」
「「「もちろんっ!」」」
三人は揃って、力強い様子で頷いた。
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