340話 霧に包まれた街
翌日。
準備を終えた俺達は、朝早くに街を出た。
何事もなく進むことができて……
予定よりもかなり早く、昼過ぎにカグネの近くに来ることができた。
「それにしても……これは、ちょっとすごいな」
「にゃー……まっしろ」
霧が発生していた。
昼過ぎだというのに、消えることなく、周囲を白く染め上げている。
「霧の発生源は、この先……カグネみたいですねー」
「異常気象か? それとも……」
ミルフィーユとショコラが訝しげな顔になる。
ミルフィーユは魔法も使って調査しているものの、その原因はハッキリとしないらしい。
「にゃー……カグネは霧の街、っていうわけじゃないんだよね?」
「そのはずだ。独自の文化が育っている街だけど、霧で有名なんてことはない」
「うん、私もそう思うよ。そんな話、聞いたことないからね」
カナデの質問を、俺とシフォンが揃って否定した。
すると、なぜかカナデがジト目になる。
「うにゃ。二人共、息ぴったり」
「まるで示し合わせたみたいね」
「知り合ったばかりではなくて、昔からの旧友みたいですね」
「旧友というか、それ以上みたいなのだ」
なぜか、タニアとソラとルナも加わり、みんな、なんともいえない顔になる。
俺、なにもをしていないよな……?
「ほいほい。みんな、落ち着きー。気持ちはわからんでもないが、今は、目の前のことに集中した方がええで」
「異常な霧。警戒した方がいい」
ティナとリファにもっともなことを言われてしまい、みんなおとなしく引き下がる。
「敵の反応はないんだよな?」
「そうですねー、魔物などの反応はありませんねー。当然、魔族もいませんよー」
「ふむ」
俺の知らない魔物、あるいは魔族の仕業かと一瞬考えたけど、そういうわけでもなさそうだ。
クリオスの一件があったから、敏感になっているのかもしれない。
「ひとまず、中に入ってみるか。ここで見ていても仕方ないし……もちろん、警戒しつつ」
「そうだね」
俺とシフォンの間で意見が一致した。
他のみんなも異論はないらしく、それぞれこくりと頷いた。
「じゃあ、行こうか」
いつでも武器を抜けるように、わずかに身構えつつ。
俺達はカグネに足を踏み入れた。
――――――――――
街の中に入ると、さらに霧が濃くなった。
視界がかなり制限されてしまい、先を見通すことはできない。
五メートルくらい先になると、ほぼほぼ霧で視界が奪われてしまい、足元が見えるか見えないかというところだ。
そんな状態ではあるものの、カグネの人は元気だった。
家に引きこもることはなくて、普通にたくさんの人が外を歩いている。
露店などもあちらこちらにあり、威勢のいいかけ声が響いていた。
「なんというか……これ、意外だね」
「そうだな」
カナデの感想に、俺も同意した。
こんな霧が出ているのだから、てっきり、街の人は不安に思っていたり、怯えていたりするものだと……
でも、実際はそんなことはなくて、普通に過ごしていた。
いや……普通というよりは、元気に、幸せそうに過ごしているように見えた。
たまに見える人の顔は、どれも笑顔で満たされている。
「危険、は……ない?」
「せやなあ。見た感じ、特になんもなさそうやな」
「というか、平和そのもの」
リファの意見に賛成だ。
これが平和でないとしたら、なにになるのだろうか?
ただ……
少しだけ違和感を覚えた。
言葉にしづらいのだけど、歪な感じがするというか……
街の人が見せる笑顔に、どこか不自然なものを感じた。
でも、それ以上のことはわからない。
誰かが害を受けているとか、そういう様子はないから……
今は様子見かな?
「ひとまず、宿に行こうか」
「そうだね。宿は早いうちに確保しておきたいし、そこにいる人から、色々な情報を得られるかも」
シフォンと意見が一致して、俺達は宿を探すことにした。
深い霧の中なので、多少、手間取ってしまうが……
三十分ほどで、無事に宿を見つけることができた。
十一人という大人数だけど、部屋も問題なく確保。
さあ、聞き込みにいこうか。
そう意気込んだのだけど……
「……はふぅ」
ニーナがものすごく眠そうに、うつらうつらとあくびをこぼした。
カグネに到着したばかりで休んでいないから、疲れが表に出てきたのかもしれない。
見ると、他のみんなも似たような感じで、個人の差はあれ、疲れているみたいだった。
「みんな疲れているみたいだし、聞き込みは明日にするか」
「そうだね。危険はないと思うから、私は賛成」
「ふかふかのベッドなのだー! 熱い風呂にも入りたいのだー!」
「あっ、ルナ! 一人で抜け駆けは許しませんよ」
ルナとソラがダダダと二階に駆けて行った。
それでみんなの緊張が解けたらしく、笑いつつ、それぞれ部屋に向かう。
途中、街で休んだりはしたものの……
じっくりと体を落ち着けていないため、完全に疲れはとれていない。
今日はゆっくりと休むことにしよう。
そう決めて、俺も宿の階段を上がった。
――――――――――
「……?」
声が聞こえたような気がした。
意識は深いまどろみの中にあって、体はまともに動かなくて……
ぼんやりとしつつ、自分は今寝ているんだな、なんてことを思う。
明晰夢とは違うけれど、たまに、そんな風に、寝ていながらも自分の状態がわかる時、っていうのはないかな?
「……ン……」
また声が聞こえた。
途切れ途切れで何を言っているかわからない。
でも……なんだろう?
ものすごく懐かしくて、聞いているだけで泣いてしまいそうな……そんなよくわからない感情がこみ上げてきた。
「レイン。起きなさい、レイン」
今度は、ハッキリと声が聞こえた。
その優しい声に引き寄せられるように、意識が浮上していく。
「ん……」
「レイン、起きた?」
ゆっくりと体を起こして、視線を横にやる。
そこにいたのは……
「……母さん?」
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