332話 新しい勇者の力
「グルァ!」
空から舞い降りてきたのは、ワイバーンだ。
しかも、五頭。
ワイバーンはCランクにカテゴリーされる魔物で、それほど高い攻撃力は持たない。
普段は鋭い爪で攻撃をして、時に、追いつめられた時などは、ドラゴンのようにブレスを吐く。
ただ、それほどの威力ではないため、問題なく耐えられると思う。
厄介なのは、空を高速で飛ぶということだ。
遠距離攻撃を持たないと、一方的に攻撃されて追い回される、なんていう事態もある。
とはいえ、その心配はいらないだろう。
ソラとルナがいるし……リファも、遠距離攻撃ができると聞いている。
「ふふんっ、ワイバーンか。ちょうどヒマをしていたところなのだ! 我のちょーすごい魔法で消し炭になるといい!」
「たまに思うのですが、ソラは、妹の貧弱な語彙力が心配になります」
「ふはははっ、いざ、我の魔法を……」
「ギガボルト!」
ルナがなにか言っている途中に、シフォンが魔法を唱えた。
かつてアリオスが見せたように、その手から雷撃が放たれる。
紫電は龍のようにくねり、空に向けて駆け上がり……
そして、ワイバーンに食らいついた。
強烈な雷撃に全身を絡め取られたワイバーンは、ビクンッ! と体を震わせた。
金属を擦り合わせるような悲鳴をあげて、そのまま落下する。
「まずは一体だね!」
「あぁ!? 我の活躍の場が!?」
「ショックを受けている場合ですか。次が来ますよ」
残り四頭。
仲間がやられても怯むことなく、むしろ、仇というように、今まで以上に激しい攻撃を繰り出してきた。
空高くに舞い上がり、太陽を背に急降下。
なかなかに考えられている攻撃だ。
「甘いぞ」
ショコラが前に出て、巨大な盾を構えた。
敵は太陽を背にしているのだけど、そんなことはショコラには関係ないらしい。
しっかりとした動きで、ワイバーンの同時攻撃を、一人で全て受け止めてみせた。
「アンチヒール!」
ワイバーンの動きが止まったところで、ミルフィーユが魔法を唱えた。
あらかじめ示し合わせていたかのような動きだ。
ショコラをくらおうとするワイバーン達が光に包まれた。
ヒールを使った時の光に似ているけど、どこか違和感がある。
なんだろう?
不思議に思っていると、突然、ワイバーン達が苦しみだした。
俺達はなにもしていないのに、その体に勝手に傷ができていく。
それはどんどん大きくなり……
ほどなくして限界を迎えて、ワイバーン達が倒れた。
「な、なんや? 今のえげつない現象は……」
「傷……勝手にできて、いたね」
「今のはー、私の魔法ですよー」
ミルフィーユが、どことなく誇らしげに言った。
確かに、彼女が魔法を唱えてから、今の現象が起きたわけだけど……
でも、いったいなにを?
聞いたこともない、見たこともない魔法だった。
ヒールという単語が含まれていたから、治癒魔法なのか?
でも、今の現象は、治癒とはまったく正反対のことで……
「実はですねー、今の魔法は、治癒魔法とまったく正反対の効果を引き起こすことができるんですよー」
「正反対? っていうことは、もしかして……」
「レインさん、わかったみたいですねー。察している通り、今の魔法は、対象に過剰な治癒力を与えることで逆に体を崩壊させるという、一種の攻撃魔法なんですよー」
「……えげつないな」
「ふふー」
褒め言葉です、なんていう感じで、ミルフィーユは意味深に微笑むのだった。
「ちょっと、まだ戦いは終わってないわよ!」
「最後の一匹、来るよ!」
タニアとカナデが警戒するように、強い口調でそう言った。
そういえばというか、俺はまだなにもしていない。
ここらで一つ、良いところを……
なんて思っていたのだけど、俺よりも先にシフォンが動いた。
「せっかくだから、レイン君に私の力を見せちゃうね!」
シフォンはやる気たっぷりだ。
強気な笑みを浮かべて、ワイバーンに向けて駆けていく。
「ギガボルト!」
さきほどと同じ魔法。
しかし、その対象はワイバーンではない。
自らの剣だ。
「なっ……!?」
シフォンの剣に紫電が絡みついた。
剣を住処とするように、紫電がそのまま帯電する。
剣と魔法が一つに。
そして……
「雷鳴剣!」
シフォンの一撃が、ワイバーンを紙のように切り裂いた。
さらに、剣に付与されている雷撃が、ワイバーンの体を焼き尽くす。
まさに一撃必殺。
剣技と魔法を合体させた技の前に敵はいない、と断言してもいいかもしれない。
それほどの威力だった。
シフォンの必殺技を目にしたみんなも、驚きに目を大きくしている。
もちろん、俺も驚いていた。
「すごいな、それ……」
「ふふっ、そうでしょう?」
どことなく、シフォンは得意げだった。
「今の、魔法剣っていうんだ。魔法と剣を合わせた、私の必殺技」
「魔法と剣を……すごいな。まさか、そんな発想が出てくるなんて」
「けっこう苦労したんだよね。でも、がんばった甲斐はあったかな? 良い感じの技だと思わない?」
「ああ。素直にそう思うよ」
「やった。レイン君に褒められちゃった」
シフォンは無邪気に喜んで……
それから、はにかみつつ、∨サインを決めるのだった。
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