331話 勇者パーティーと一緒に旅をする
東大陸最東端にある街、カグネを目指して、俺達はクリオスを後にした。
残念ながら、カグネの近くに精霊族の里に繋がる門はないらしく、一気に移動ということはできない。
なので、地道に歩いていくしかない。
馬車という手段もあるのだけど、ソラとルナが揃って涙目で訴えてきて、諦めた。
徒歩になることを、シフォン達も快く受け入れてきた。
本当に勇者だろうか?
アリオス達とあまりに違うから、ついついそんなことを思ってしまう。
「ねえねえ、レイン君」
街道を歩いていると、隣にシフォンが並んだ。
「レイン君は、ビーストテイマーなんだよね?」
「ああ、そうだけど。見ての通りだ」
俺はちらりと後ろを見た。
荷物を背中に積んだ熊が二頭、俺達の後ろを歩いている。
荷物を運んでもらうために、俺がテイムした熊達だ。
「あの子達、レイン君の命令をなんでも聞くの?」
「まあね」
「踊ったり、芸をすることも?」
「……それはちょっと」
元からできないことを命令されても、それに従うことはできない。
まあ、時間をかけて仕込めば、いけないこともないが……
それはもはや、ビーストテイマーというよりは、サーカスの団員だ。
「すごいね」
「え? なにが?」
「あんな風に熊を従えちゃうなんて、やっぱり、ビーストテイマーはすごいなあ、って。ううん。ビーストテイマーというよりは、レイン君がすごいのかな?」
「なんでまた、そんな結論に?」
ビーストテイマーがすごいなんてこと、今までに言われたことがない。
当たり前だ。
世間一般では、ビーストテイマーは補助しかできない最弱職と言われている。
シフォンがそんなことを言うなんて、かなり意外だ。
ついつい驚いてしまう。
「そうかな? ビーストテイマーはすごいと思うよ」
率直な感想を伝えると、シフォンは不思議そうな顔をした。
こちらを気遣っているわけじゃなくて、本気でそう思っているみたいだ。
「だって、動物を従えることができるんだよ? すごい人なら、魔物も従えられるんだよね。そんなこと、普通はできないし……そういうことができるなら、きっと、色々なことができると思うの」
「そうか?」
「そうよ。今、レイン君がしているように、荷物を運んでもらうとか。これ、とても大事なことだよ。旅をする以上、食料や水は必須で、誰かが運ばないといけない。でも、疲れちゃうから、その人は戦闘に参加できない。そうなると戦力ダウンは必須。ほら、この問題をカバーできるのって、ビーストテイマー以外にいないよね?」
「そう言われると、まあ、そうかもしれないけど……うーん」
たくさん役立たずと言われてきたせいか、すごいと言われても、いまいちピンと来ない。
確かに、俺のビーストテイマーとしての能力は規格外らしいが……
ただ、それも血が為せること。
もしも一般人だとしたら、ここまでのことはできていないだろう。
「まあ……俺のことはいいよ。それよりも、シフォンのことを聞かせてくれないか?」
「私のこと?」
「勇者としてのシフォンに興味があるんだ」
「私に? ふふっ、そっか。ありがとう」
なぜお礼を?
「といっても、私が語れることなんて、大したことはないよ。勇者になったのは最近のことだし、レイン君みたいに偉業を達したわけでもないからね」
ずいぶんと謙虚だ。
今の言葉、アリオスに聞かせてやりたい。
「シフォンなら、これからいくらでも功績を立てられそうに見えるよ」
「そうかな? ふふっ。レイン君にそう言ってもらえると、うれしいかな。がんばろう、っていう気持ちになってくるよ」
「なら、俺も負けないようにがんばらないとな。せっかく、こうして知り合えたんだ。互いに切磋琢磨して、上を目指していけるような、そんな関係になりたい」
「強敵と書いて、ともと読む、っていうヤツ?」
「そんな感じだな」
「それはいいね」
互いに笑い、のんびりと話をしつつ、道をゆく。
――――――――――
「にゃうー……!」
「ぬぐぐぐ……!」
レインとシフォンの語らいを、少し離れたところから恨めしそうに見ている姿があった。
カナデとタニアだ。
二人共、どこからか用意したハンカチを口に咥えて、とても悔しそうにしている。
「見て見て、タニア! 今、あの人、頬を染めたよ!」
「突然出てきて、あたしらのポジションを奪おうとするなんて……ああもうっ、これだから人間は!」
レインとシフォンのことが気になる。
しかし、特に用事もないため、声をかけることができない。
妙な空気が形成されているため、二人の間に割り込むこともできない。
そんな思いを抱く二人は、なかなかにもどかしい気持ちを味わっていた。
さらにその後ろを歩くソラとルナは、わりと落ち着いていた。
ショコラと話をしつつ、のんびりと歩く。
「ほうほう、なるほど。タンクというのは大変なのだな」
「いやー、それほどでもあるぞ」
「ソラ達は後方なので、前衛に出ることはほとんどありませんからね。タンクを立派に務めているショコラは、すごいと思います」
「ふふふ、それほどでもあるぞ」
独特な雰囲気を持つ者同士、気が合うらしい。
それぞれに笑みを浮かべて、話が弾んでいた。
「ところで、二人はいいのか?」
「む? なにがだ?」
「シフォンとレインのことだぞ。二人きりにしていたら、仲が進展するかもしれないぞ。ソラとルナは、それでいいのか?」
ぼーっとしているようで、見るところはしっかりと見ているショコラに、ソラとルナは少し驚いた。
なんだかんだで、勇者パーティーの一員ということはある。
なかなかに侮れない。
「うむ。我らは、それほど焦っていないからな」
「カナデやタニアのように、露骨に態度に出していても、虚しいだけですからね。じっくりと構えて、慎重に事を進めるだけです」
「おー、意外と計算高い」
「ふふふ、もっと褒めるがよいぞ!」
「さすが精霊族。すごいぞー」
「ふはぁーっはっはっは!」
ショコラが褒めて、ルナが胸を張り高笑いをあげた。
妙に気の合う二人だった。
――――――――――
「レイン」
「うん?」
シフォンと一緒に先頭を歩いていると、くいくいと服を引っ張られた。
振り返ると、いつの間にかリファがすぐ傍に。
「どうしたんだ?」
「敵」
「え?」
一瞬、ぽかんとしてしまうけれど……
すぐにその言葉の意味を理解して、足を止めて、周囲を見る。
人や魔物の姿は見えない。
目を閉じて集中する。
「……気配も感じないな」
「ねえ、リファちゃん。本当に敵がいるの?」
シフォンもわからないらしく、そうリファに問いかけていた。
ただ、俺はリファのことを信じる。
こんなウソを言う子じゃないし……
なによりも、仲間の言うことだ。
俺が信じないで、他の誰が信じる。
「シフォン、敵はいるはずだ」
「……うん、わかったよ。私も信じる」
シフォンも剣を抜いて、いつ敵が来てもいいように構えた。
よかった、信じてくれて。
そのまま警戒すること少し……
刺すような敵意が、俺達を押しつぶすかのように、空から降ってきた。
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