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328話 いざ東へ

 話をした限りでは、シフォンは良い人に思えた。

 勇者にふさわしい性格をしているように見えた。


 ただ、俺の目が節穴なだけなのかもしれない。

 仮面を被っていて、本当はアリオスと同じような性格をしているのかもしれない。


 今回の依頼を引き受けて、一緒に同行することで、シフォンの人柄を見極めたいと考えた……というわけだ。


 まあ、たぶん、大丈夫だと思うけどな。

 人を見る目があるとは言えないけれど、それでも、シフォンは良い人に思えた。

 誰かのために、と語っていた時のシフォンは、ウソをついているようには見えなかった。


 甘いと言われるかもしれないが……

 やはり、疑うよりも信じたい。


「あ! おはよう、レイン君」


 朝。

 宿を出て、クリオスの入り口へ移動すると、すでにシフォンの姿があった。

 こちらを見つけると、笑顔で手を振ってくれる。


 クリオスでの仕事は終えた。

 街の人はみんな力強くて、スタンピードの被害も、すぐに復興できるだろう。


 魔族の動向、アリオスのことは気になるが……

 それは、クリオスにいても解決できるものではないし、調べられるものでもない。

 なので、今はシフォンの依頼を優先させることにした。


「悪い、遅れたか?」

「ううん、そんなことはないよ。まだ約束の時間の前だから、気にしないで。それに……」


 シフォンは軽く視線を逸らして、気まずそうに苦笑する。


「私の方も、仲間が来ていないから……」


 そういえば、シフォン一人だった。

 まだ仲間と顔を合わせたことはないんだよな。


「にゃー、遅刻?」

「うっ」


 カナデの何気ない言葉が突き刺さり、シフォンは胸元を押さえるような仕草をした。


「ごめんね……私の仲間がだらしなくて、ごめんね」

「う、ううんっ、別に謝ることはないよ!? うん、遅刻なんて誰でもするよ!」


 シフォンがおもいきり落ち込んで、カナデが慌ててフォローをいれていた。


「えっと……どうする? 急ぎでなければ、出発を伸ばしても構わないんだけど」

「ううん、迷惑をかけるわけにはいかないし、私達も、あまりゆっくりしていられないから。ちょっと待っててね、今から宿に戻って、仲間達を斬り起こして……ううん、叩き起こしてくるから」


 斬り起こす……?

 なんだ、その物騒なワードは?

 慌てて訂正していたが、しっかりと聞こえていたからな。


「あ、追いついたわ」

「……おー」


 ふんわりとした声と、のんびりした声が聞こえてきた。

 振り向くと、二人の女性だ。


 一人は俺よりも上……シフォンよりもさらに上、20後半くらいだろうか?

 大人の女性という感じで、背は高く、体の凹凸もわがままだ。

 ウェーブを巻いたロングヘアーが特徴的で、目元は柔らかい。


 腰に本を下げていた。

 彼女の武器なのだろうか?


 もう一人は、俺より少し下という感じの女の子だ。

 こう言うのはなんだけど、背が低くてコンパクトだ。

 なんだか眠そうな目をしていて、どことなくぼーっとした雰囲気をまとっている。


 そんな彼女は、背中に巨大な盾と剣を背負っていた。

 どちらも自分の身長くらいはある。

 いったい、何に使うのだろうか?


「あっ、ミルフィーユ! ショコラ!」


 二人を見たシフォンは、頬を膨らませて眉を吊り上げる。


「もう、遅いじゃない! すぐに追いかけるっていうから、先に出たのに……さては、二度寝をしていたわね?」

「えっと……ごめんなさいー。枕がふかふかで気持ちよくて、ついー」

「おー……すまん」


 おっとりしていて、のんびりしていて……

 どこか似た雰囲気を持つ二人だ。


「あらー、こちらの方はもしかして、レイン・シュラウドさん?」

「それと……愉快な仲間達?」

「「「愉快!?」」」


 カナデとタニアとルナが、がーん、というような顔になった。

 残りは、へー、という感じで特に変わらない。


「いきなり失礼なことを言わないで。ごめんね、レイン君」

「えっと……もしかして、この二人が?」

「うん。私の仲間だよ。この子は、ミルフィーユ・ブロッサム。回復、支援を主に担当しているわ」

「ミルフィーユですー、よろしくお願いしますねー。気軽に、ミルフィーユと呼んでくださいー」

「じゃあ、俺のこともレインで」

「はいー、レインさん」


 ミルフィーユが、ゆっくりとお辞儀をした。

 とても綺麗なお辞儀なので、どこかの令嬢なのかな? なんてことを思う。


「それで、この子が、ショコラ・ラテンテ。私のパーティーのタンクを務めてくれているの」

「おー。私がショコラだ。よろしくな、レイン。あ、私もショコラでいいぞ」

「うん、よろしく。ショコラ」


 こちらは、ひたすらにマイペースな感じがした。

 どことなく、ルナと似ているような気がする。


 前衛のシフォン、タンクのショコラ、ヒーラーのミルフィーユ。

 アリオスのパーティーと比べると一人足りないが、それでもバランスは良い。


 ミルフィーユとショコラも、見た目はこんなだけど、只者じゃない雰囲気を放っている。

 足運びからしても、かなりの熟練者ということがわかる。

 たぶん、非戦闘時は力を抜いてリラックスして、体を休める。

 そして戦闘時は、スイッチを切り替えるように、一気に雰囲気が変わる……そんなタイプなのだろう。


「これで全員かな?」

「うん、そうだね」


 全部で十一人。

 なかなかの大所帯だ。


 伝説の装備の修理となれば、魔族の妨害に合うかもしれない。

 再び、モニカや……あるいは、アリオスと対峙することになるかもしれない。

 そのことを考えると、多いというわけではなくて、妥当な戦力だろう。


「じゃあ、行こうか」

「うん……って言いたいところだけど、その前に、ちょっとあるみたい」


 なぜか、シフォンが苦笑していた。

 それと同時に、たくさんの足音が聞こえてくる。

 怪訝に思い、音のする方を見ると……


「おいおい、何も言わずに行く気か? つまらねえ真似するんじゃねーよ」

「まったくなのじゃ。せめて、見送りくらいさせるのじゃ」

「レインさん。この度は、誠にありがとうございました」


 レゾナさん、アルさん、カイズさんが見送りに来てくれた。

 それだけじゃなくて、街の人々も次々に集まってくる。


 レゾナさんは、引き続きクリオスに留まり……

 アルさんも、色々と積もる話があるらしく、レゾナさんと一緒にいるらしい。


「ありがとな! あんた達は、この街の英雄だ!」

「旅の帰りに、ぜひよっておくれ。街をあげて歓迎するよ」

「リファちゃんをよろしくお願いします。その子は、ちょっとわかりにくいかもしれないけど、とてもいい子ですから」


 街の人々は、みんな、笑顔を浮かべていた。

 こんな風に見送られるなんて……

 ちょっと予想外のことで、感動してしまう。


「レイン、レイン」

「うん?」

「レインの優しいところ、みんなに伝わったんだね。良かったね」


 カナデがにっこりと笑う。

 つられて、俺も優しく笑う。


「ああ、良かったな」


 こんな良い人達の力になることができて、助けることができて、本当に良かったと思う。


「行こう、レイン。新しい冒険が私達を待っているよ」

「そうだな、行こうか」


 一歩を踏み出して、俺達は新しい冒険に出た。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここより、東の国編となるのか、今まで読んでたところに追いつくのにまだまだ先は長いなあ。
[良い点] この3人なら下賎な男に絡まれても安心ですね。 [一言] 幕話のアイデアを1つ考えてみました。 タイトルは「王女の慕情」です。 昨今の不穏な空気の影響で増えた王女としての責務を黙々とこなす…
[良い点] 仲間がおっとりしたりマイペースそうだが真面そうです。遠距離攻撃担当がいなそうだが、増やそうとしたら、今度こそ何か裏がありそうな子になる気がします。 [一言] いざ、伝説の武器修理に。 スム…
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