324話 次代
宴は夜遅くまで続いた。
ずっとスタンピードの脅威に晒されてきたけれど、それがようやく解決した。
その喜びは相当なもので、大人だけではなくて子供も一緒になって騒いでいた。
もちろん、子供は酒じゃなくてジュースだけど。
そんな宴が行われて……
そして、翌日。
街の大人の半分以上が、見事に二日酔いになっていた。
「あー……やべえ、頭いてえ。この俺が二日酔いになるなんて……くっそ、ふがいねえ」
「さすがに飲みすぎたのじゃ……やばいのじゃ、マジ頭痛いのじゃ。マジいた」
カイズさんの館を訪ねると、途中、レゾナさんとアルさんが床に倒れて、ピクピクと痙攣していた。
陸に打ち上げられた魚みたいだ。
どうも、調子に乗って飲みすぎたらしい。
最強種は酒に強く、普通は二日酔いになんてならないのだけど……
二人の周りには大量の酒瓶が転がっていて、これなら最強種でも二日酔いになって当たり前だ、と思うのだった。
ちなみに、みんなはまだ寝ていた。
レゾナさんやアルさんのように二日酔いにこそなっていないものの、夜遅くまで起きていたため、まだ眠いのだろう。
今後のことをカイズさんと話す必要はあるが、その内容は、みんなには後で伝えればいい。
なので、俺一人でカイズさんのところを訪ねた、というわけだ。
「すみません、旦那様は急な来客の対応に追われていまして……誠にもうしわけありませんが、少しの間、こちらでお待ちください」
「あ、はい。わかりました」
すぐにカイズさんと面会というわけにはいかず、客間の一つに案内された。
ソファーに座り、出されたお茶を一口飲む。
「カイズさんも忙しいんだな……って、当たり前か」
連続でスタンピードが発生するという、前代未聞の事件の後だ。
街の復興に、被害者の救済。
防衛体制の見直しや、今後の対策……などなど、やることは山積みだ。
突発的な仕事が発生しても仕方ない状況なので、特に文句はない。
忙しいというわけじゃないし、のんびりさせてもらおう。
「それに、考えをまとめるにはちょうどいいか」
色々な事件が立て続けに起きて、ゆっくりと考えを広げることができなかった。
いい機会だ。
一度、考えを整理しておこう。
目下、考えなければいけないことは、今後、どう動くか? ということだ。
冒険者として活動を続けることは変わらないが、根っこのところにある方針は定めた方がいいかもしれない。
今までのように、依頼があれば請ける、という受動的な体勢では色々とまずい気がした。
なぜまずいのか?
周囲の情勢が変わってきているからだ。
「けっこうきなくさいことになっているんだよな……」
気になることは二つ。
まずは、魔族の動きだ。
クリオスを狙い、魔族がスタンピードを起こした。
おそらく、ホライズンで発生したスタンピードも、あのヴァイスというヤツの仕業だろう。
あんな力を持った魔族がほいほいといるわけがないので……というか、いてたまるものか、という感じなので、十中八九間違いない。
クリオスを狙う目的は、鬼族が関係していると言えるが……
だとしたら、ホライズンが狙われたのが謎だ。
あそこは最強種と共存している、という特殊な街じゃない。
わりとどこにでもあるような、普通の街だ。
……まあ、カナデ達、複数の最強種がいるという点では、特異かもしれない。
「ん? だとしたら、魔族は俺達を狙って?」
……いや、それも違うか。
俺達を狙っているのだとしたら、もっと違うやり方があるはずだ。
個人を狙った犯行というには、ちょっとずさんすぎる。
いくらでも逃げる方法があるからな。
「となると、やっぱり街そのものを狙った……いや。そこに住む人々を狙った犯行?」
ヴァイスは最後まで目的を吐くことはなかった。
おそらく、それだけ重要な作戦だったのだろう。
魔族が一番に考えることといえば、なにか?
「……魔王のために、っていうところだよな」
休眠期の魔王を覚醒させる。
そのことを第一の目的として、魔族は動いているはずだ。
そうなると……
先の事件は、魔王を覚醒させるために必要なこと、と考えることはできないだろうか?
例えば、スタンピードを引き起こすことで、たくさんの犠牲者を出す。
その人達の魂を捧げることで、魔王を覚醒させる……とか。
「……ちょっと違うな」
悪い線ではないと思うが、それでも謎は残る。
どうして、クリオスを狙ったのか?
たくさんの魂を捧げるなら、鬼族がいない、普通の街を狙ったほうがいいに決まっている。
いや。
ホライズンも狙われたから、そのことを考えると、謎というわけではないのか?
むしろ、謎が出てくることはなくて、特に問題のない行動で……
「ダメだ、混乱してきた」
あれこれと考えすぎて、思考回路がショートしてしまいそうだ。
ひとまず考えを放棄する。
「もう少し情報を集めないと、なんとも言えないな」
最近、魔族の動きが活発になってきている。
モニカの言葉も気になるし……
今後、魔族の動向に注意した方がいいだろう。
「モニカと言えば、アリオスのことが気になるな」
アリオスは、モニカの手引で脱獄をした。
そのことはしっかりと判明している。
故に、今も二人は一緒に行動しているのだろう。
そして、そのモニカは、魔族と繋がっていることが判明した。
そうなると、アリオスも魔族と関与していることに……
「いや、それは早計か?」
さすがのアリオスも、魔族に協力するとは思えない。
おそらく、モニカと魔族の繋がりを知らず、いいように利用されているのだろう。
もっとも、最近のアリオスは、どこか精神的に危ういところがあったから、心変わりがあって魔族に協力しないとも限らないが。
「魔族のこと、アリオスのこと……考えないといけないことが多くて大変だなあ」
やれやれ、とため息をこぼした。
これらのことを含めて、カイズさんと相談をしたい。
「……そういえば、カイズさん、遅いな?」
それなりの時間が経っているのだけど、まだ姿を見せない。
急用とやらが長引いているのだろうか?
「失礼します」
コンコンと扉をノックする音が響いて、一人の女性が現れた。
その女性は……アリオスが持っていたはずの『真実の盾』を身に着けていた。
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