表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

315/1168

315話 優しい眠りを・その1

 リファとタニアとソラは、ヴァイスに操られている鬼族達と対峙した。

 リファは目の前の敵に意識を集中しつつ、隣に立つタニアとソラに声をかける。


「タニア、ソラ。二人はお兄ちゃん以外を相手にしてほしい。できる?」

「そりゃできるけど……」

「いいのですか? そうなると、リファが……」

「さっきも言ったように、お兄ちゃんはボクが解放する。しないといけない」

「……わかったわ。リファの邪魔はさせない」

「思う存分、やってください」


 妹の手で、もう一度兄を殺す。

 それはとても残酷なことかもしれないが……

 しかし、リファ本人がそれを望んでいた。


 その決意を覆すようなことはできないし、できることなら尊重してやりたいと思う。

 リファの強い決意を見て、タニアとソラは素直に道を譲ることにした。


「いくわよ、ソラ!」

「ええ、タニア!」


 まず最初にタニアとソラが動いた。

 タニアは拳と尻尾を器用に使い、二人の鬼族に打撃を与えた。

 ソラも魔法を使い、二人の鬼族に攻撃をしかけた。


 二人の攻撃は派手なもので、一目でリファの邪魔をさせないための陽動であることが理解できた。

 しかし、相手は一度死んでいる身で、操られている状態だ。

 ヴァイスによって兵士にされているものの、自身で考える能力はない。

 あっさりとタニアとソラの陽動に乗り、四人の鬼族が場を離れた。


 そして、リファとその兄……カルスが残される。


「お兄ちゃん……!」

「グゥアアア……アアアァッ!!!」


 獣のような唸り声をあげて、カルスが飛びかかってきた。

 驚異的な跳躍を見せて、一飛でリファに襲いかかる。


 リファは慌てることなく、冷静に対応した。

 すぐに己の指を噛み、血を流す。

 その血で鎌を生成して、迫り来るカルスを迎撃する。


「ふっ!」


 斜め下から斜め上へ、鎌を大きく薙ぎ払う。

 鋭い一撃はカルスの足を裂き、その体を地面に叩き落とす。


 しかし、カルスは止まらない。

 足から流れ出た血を鎧と化して、その身にまとう。

 血で生成された鎧は刃がついていて、触れるもの全てを切り裂く。


 カルスは獣のような動きでリファに飛びかかる。


「ぐっ!」


 リファは血の鎌で受け止めるが、勢いを完全に殺すことはできない。

 カルスに押されてしまい、二歩、三歩、後ろに下がる。


 それを好機と見たか、カルスはリファを抱きしめるように両手を大きく広げた。

 抱きしめるといっても、刃のような血の鎧をまとっている状態だ。

 そんなことをされれば、無事で済むわけがない。


「このっ!」


 リファは鎌を下から上に跳ね上げて、カルスを跳ね飛ばした。

 その間に体勢を立て直そうとするが、カルスの方が上手だった。


 カルスは宙で体を回転させて、体勢を一瞬で立て直した。

 それはリファよりも速い。


 さらに足から流れる血を触手のようなものに変化させた。

 血の触手が伸びて、リファの手足に絡みつく。

 そうしてリファの動きを封じたところで、カルスが地面に着地。

 再び距離をつめて、鋭く伸びた犬歯をリファの腕に突き立てる。


「うぁ……!?」


 カルスの犬歯が深々と腕に突き刺さり、リファは思わず悲鳴をあげた。

 灼けるような痛みが広がり、血があふれ出る。

 その刺激に我慢することができず、リファは顔を歪め、わずかに涙を浮かべた。


 それでも、カルスはリファから離れない。

 腕に噛み付いたまま、さらに犬歯を突き立てて……

 骨を砕き、腕を噛みちぎるような勢いだ。


 それは獣そのものだった。


「くううう……お兄ちゃん!」


 腕を食われる痛みよりも、リファは心の痛みを覚えた。

 兄の成れの果ての姿に、どうしようもない悲しみを覚えた。


 泣き叫んで、わめいて、暴れて……

 なにもかも見なかったことにして、ふさぎ込みたい。


 しかし、それは許されない。

 自分が兄を救わなければいけないのだ。

 ヴァイスなどという魔族にいいように利用されるなんて、カルスは決して許さないだろう。

 意識はないかもしれないが、その魂は、耐え難い屈辱を覚えているだろう。

 だから、自分が解き放たなければいけないのだ。


 決意を新たにしたリファは、腕に噛みついているカルスの頭を掴んだ。

 そのまま押しつぶすような勢いで、ギリギリと締めつける。


 すでに死んでいる身のため、痛覚はないのだろう。

 カルスは頭部を圧迫されても、悲鳴をあげることなく、リファの腕に食らいついていた。

 しかし、体をコントロールする脳は悲鳴をあげていた。

 意思があろうがなかろうが、体を動かす脳がダメージを受ければ、どうしようもない。

 リファはカルスの頭を圧迫し続けて、一定のダメージを伝えて……


 ふと、カルスの顎の力が緩む。

 その一瞬を逃すことなく、リファはカルスを蹴り飛ばし、引き離した。


「穿て!」


 リファは血の弾丸を撃ち、追撃をしかけた。

 空間をいっぱいに埋めるように、血の弾丸を超高速で走らせた。


 対するカルスは体勢を崩しながらも、片手を前にやり、血の盾を展開する。

 血の弾丸が激突して、ガガガッ! と轟音が響く。


「さすがお兄ちゃん」


 リファは血の弾丸を撃ち続けて、時間を稼ぎ、作戦を考えた。


 全力で戦っているというのに、未だ、決定的な一打を与えることができない。

 意識がない状態なのにコレだ。

 もしもカルスが万全の状態だとしたら、リファはすでに地に沈んでいただろう。


 今のカルスならば勝機はある。

 しかし、力は拮抗している状態で、なかなか最後の一手を繰り出すことができない。

 どうしたらいいか?


 リファは考えて考えて考えて……その末に、とある作戦を思いついた。

 迷っているヒマはない。

 即座に実行に移す。


「えやあああぁっ!!!」


 血の弾丸を撃ち尽くした後、再び血の鎌を生成して、斬りかかる。

 さすがに血を流しすぎて、軽く目眩がした。

 それを我慢しつつ、鎌を回転させつつ横に薙ぐ。


 カルスは対抗するように血の剣を生成した。

 真正面から鎌を受け止める。


 力はほぼ互角。

 鎌と剣が拮抗する形となり、互いに武器を握る手に力を入れた。


「くうううううっ!!!」

「グアアアアアッ!!!」


 リファは苦しそうな声を。

 カルスは獣のような声を。

 それぞれに高く叫び、鍔迫り合いが続く。


「っ!?」


 一瞬、鎌を握るリファの手から力が抜けた。

 自我がない状態とはいえ、戦闘に長けたカルスは、その隙を見逃すことはない。

 ここぞとばかりに力を入れて、強引に剣を振り抜いた。


「うあっ!?」


 血の剣がリファの腹部に横から食い込んだ。

 肉が裂ける。

 血があふれる。


 それでもなお、カルスは手を止めない。

 自らの手で、妹の体を上下に両断する。


 瞬間、自我がないものの、カルスは勝利を確信した。

 このターゲットは死んだ。

 あるいは、致命傷を与えた。

 もう用はない。

 次の獲物を見つけよう。


 そう判断したカルスは、リファから視線を外して、レインたちの方を見るが……

 それが失策ということに、カルスは気がつかない。


「……甘い!」


 両断されたはずのリファが動いた。

 体が無数のコウモリに変化して、カルスの背後に移動して、再構築する。

 腹部には切り傷が刻み込まれていたが、それほど深くはない。


 刃を受けた後、その体の一部をコウモリに変化させ、分断させることで、致命傷を受けたとカルスに錯覚させた。

 カルスにまともな思考能力があれば、こんなトリックに引っかかることはないだろう。

 ただ、あえて攻撃を受けたことで真実味が増して、カルスは見事に騙されることになった。


「これで……終わり!」


 完全無防備なカルスの背後に回り込んだリファは、最後の力を振り絞り、血の杭を生成した。

 それを背中からカルスに突き立てる。


 血の杭はカルスの心臓を正確に貫いた。

 杭の先端が胸から突き出る。


「ガッ……!?」


 カルスはビクンッと痙攣して……

 足から力が抜けて、そのまま倒れた。

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[一言] 今回ちょっといつもよりグロい感じがします。それはそれでいい(ry
2020/01/03 14:07 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ