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309話 鉄壁の守護者

 地上に出ると、そこは古城の目の前だった。

 俺、カナデ、タニア、リファの順で穴から飛び出した。

 それからニーナ、ソラ、ルナ、ティナを引き上げる。


「なっ……!?」


 出た場所は古城の目の前。

 そして、門の前に複数の魔物がいた。

 そのうちの一体……ゴーレムが驚いているような声をあげた。


 まあ、驚くのも無理はない。

 いきなり地面から人が出てきたら、俺も驚くだろう。


「人間と最強種……なるほど、貴様達が侵入者か」


 ゴーレムはすぐに落ち着きを取り戻していた。

 この威圧感、落ち着きよう……おそらく、名のある魔物だろう。

 魔族ではないから、古城の警護を任されている者、という感じだろうか?


「いったいどのようにして我が包囲網を潜り抜けた?」

「見ての通り、地下を移動してきたんだよ」


 クリオスに鬼族が暮らしているためか、彼らが漏らす魔力によってこの地は特殊な環境に変化していた。

 そのため、多くの動物が普通よりも巨大化していた。


 大きくなったモグラをまとめてテイムして、地面を掘り進んでもらった……というわけだ。

 もっとも、大きなモグラでも人一人が通る穴を掘るのは大変なので、それなりに時間がかかってしまったが。

 でもおかげで敵と遭遇することなく、余計な体力や魔力を消費することなく敵陣の奥深くに切り込むことができた。


「なんというふざけた発想だ……冗談で思いつくことはあれど、本気で実行するとは……」


 モグラのことを教えてやると、ゴーレムは愕然としたような声をこぼした。

 表情が変わらないのでよくわからないが、呆れているようにすら思えた。


「私、あいつの気持ちわかるかも」

「普通は地面の中を来るなんて思わんからなー」

「レインってとんでも能力もそうだけど、発想力もおかしいのよね」


 なぜかみんなも敵に理解を示していた。

 おかしいな?

 俺、褒められてもいいようなアイディアを出したと思うのだけど……


「よしよし」

「がんばれ」


 ニーナとリファの年少組に慰められてしまった。


「しかし、貴様達が突然弾けてそのまま見失ったという報告を部下から受けている。それについては?」

「あー……そいつはただの囮だよ」


 全部教えてしまうのもどうかと思うが、こういう変則的な手は、基本的に初見で一度しか通用しない。

 一度、見た相手に再び通用することはないだろう。

 そう判断して、素直に教えることにした。


「ソラとルナに魔法を使って、俺達の幻影を作り出してもらった」

「幻影だと? 自律稼働する幻影魔法なんて聞いたことがないぞ」

「幻影魔法の投影位置をオオトカゲの背中に設定したんだ。で、後はオオトカゲをテイムして、適当に走らせる。足元は草木で覆われているから、かなり注意して見ないと、オオトカゲの背に幻影魔法が設置されていることには気づかない。魔法の有効時間が過ぎたところで終わり……っていうわけだ」

「……」


 ゴーレムが頭を抱えるような仕草をして、そのままぐらりと揺れた。

 どうしたのだろうか?


「レインの非常識さに呆れているのだと思いますよ」

「うむ。幻影魔法をトカゲの背中に設置するなど、魔法に精通している我らでも思い浮かばなかったのだ」

「そこの精霊族の娘の言う通りだ。そのような発想をするとは……貴様、常識をどこに置き忘れてきた?」

「人を常識がないように言わないでくれ」

「ないよね」

「ないわよね」


 カナデとタニアが迷うことなくそう言った。

 さっきから黙って聞いていれば、みんなはどっちの味方なんだ?


「もちろんレインの味方だけど、非常識っぷりなところは私達も呆れちゃうからねー」

「敵とはいえ、驚いたり呆れたりする気持ち、わかっちゃうのよねー」

「まったく……」


 最近はこういうやりとりは減ったと思っていたんだけど……

 まだまだ互いの認識に差異があるらしい。

 いい加減、慣れてほしいのだけど。


「まあ、世間話はここまでにして……そこを通してくれないか?」

「笑止。俺はこの門を守る番人である。あの方の元へは、アリの子一匹たりとも通すわけにはいかない」


 ゴーレムが拳を構えた。

 その動きに反応するように、部下と思わしき魔物達が周囲に展開する。


「出会ったばかりでなんだけど、俺はあんたのこと、わりと嫌いじゃないんだけどな」


 不意を突くような真似はせず、卑怯な手を使うわけでもなく、ゴーレムはあくまでも門番として俺達とまっすぐに対峙している。

 高潔な魂を持つ武人のようだ。

 魔物ではあるが、その性格を好ましく思った。


「奇遇だな。俺も貴様のことは好ましく思うぞ。人間にしておくのは惜しい」

「ありがとう」

「今すぐに引き返すというのならば、この場は見逃そう。どうする?」

「引き返すと思うか?」

「思わないな」

「なら……やろうか」

「応っ!!!」


 吠えるようにゴーレムが答えて、戦闘が開始された。




――――――――――




「カナデとソラとリファは俺と一緒に! 他のみんなは残りを頼む!」

「「「了解!!!」」」


 俺の指示に迅速に反応して、みんなはそれぞれの配置についた。

 カナデとソラとリファは俺の横に。

 タニアとルナとニーナとティナは後ろに展開して、他の魔物の相手をする。


「レインの邪魔はさせないわよ!」

「これでも食らうといいのだ!」


 まずはタニアが火球を放ち、ルナが同じように炎の魔法を撃つ。

 荒れ狂う業火が数匹の魔物を包み込み、炭と化した。


「いっくでー、ニーナ!」

「うん……!」


 ニーナの頭の上といういつものポジションに落ち着いたティナは、光の棒と光の球を魔力で生成した。

 光の棒で光の球を撃ち……

 ついでに光の棒もおもいきり振り抜き、投げつける。

 二段構えの攻撃に意表をつかれた魔物は、光の球は避けることができても光の棒を避けることはできず、頭に直撃して倒れた。


「よい……しょ」


 ティナの変則的な攻撃に魔物が一度距離を取ろうとするが、ニーナがそれを許さない。

 亜空間を繋げて、魔物の足を掴んで邪魔をする。


 その間にティナの攻撃が雨あられと炸裂して……

 見事な連携だった。

 最近、二人はますます息が合ってきているような気がした。

 ティナもニーナの頭の上が一番居心地がいいんだろうか?


「レイン、いきますよ」

「ああ。リファも頼む!」

「うん」


 俺達もがんばらないといけない。


 俺はリファと並んで一緒に駆けた。

 最初は肩を並べるくらいの距離で。

 ゴーレムに近づいたところで、大きく距離を取り、左右に展開。

 そのまま挟み込むように攻撃をしかける。


「ファイアーボール!」

「ブラッドサイズ!」


 俺は魔法をゴーレムの足元に炸裂させて、動きを止めると同時に、土煙で目くらましを。

 その隙をついて、リファが血の鎌を生成して斬りかかる。


 ギィンッ!


「っ!?」


 土煙が晴れると、リファの血の鎌が弾かれるところが見えた。

 ゴーレムは何をしているわけでもない。

 ただ悠然と立っているだけだ。

 あまりにもその装甲が硬く分厚いため、刃が通らず弾かれてしまったのだろう。


「甘いぞ、鬼族の娘よっ!」


 ゴーレムの大きな体が動く。

 巨大な拳でリファを殴り飛ばそうと、腕を振り抜いた。


「リファっ!」


 咄嗟にナルカミのワイヤーをリファに向けて射出した。

 こちらの意図を読んでくれたリファは、ワイヤーを掴む。

 それを確認したところでワイヤーを引き戻して……数瞬遅れて、ゴーレムの腕がリファが元いた場所を撃ち抜く。

 ゴゥッ! と風が生まれて、どれだけの威力があるのかと考えただけでゾッとした。


「ヴォルテクスランス! イグニートランス! アイシクルランス!」


 ソラが同時に三つの魔法を解き放つ。

 雷、炎、氷の槍がゴーレムに襲いかかり、魔力の相互干渉を引き起こして爆発した。

 巨大な爆炎が空まで立ち上がる。

 熱波が吹き荒れて、髪と服がバサバサと揺れた。

 ふんばっていないとそのまま吹き飛ばされてしまいそうだ。


「これだけの威力なら……!」

「ううん、まだ」


 リファは血の鎌を再び構えた。

 その視線の先に……無傷のゴーレムが炎の中から歩み出てきた。

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[良い点] ゴーレムのアグニの方が常識人であること。 レイン「世間話はここまでにして……」 世間話など一ミリもしてなかったこと。
[良い点] このゴーレムがアリオスより志したかいというのは何だか皮肉というか、なんというか・・。
[気になる点] ゴーレムってば、イイ奴だなぁ…ただ、レインがテイムするには、ある重要な要素が一つ…それは、 『最強種のメスである事』 …だから、ゴーレムが男もしくはツルツル(笑)だとしたら、ちょっ…
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