304話 信頼
結局、動物達にお礼をするのに徹夜作業になってしまった。
日が明ける頃に最後の動物にお礼をして、なんとか終わる。
まだまだやらないといけないことはたくさんあるが、さすがに活動限界で……
ふらふらになりつつ家に戻った。
「みんな……おつかれ……遅くまで付き合ってくれて、ホント、ありがとう……」
「にゃー……疲れたよぉ……」
「疲れたとか言わないの、余計に心が疲れるじゃない……このへろへろ猫……」
「へろへろでーす……」
カナデとタニアが左右にふらふらと蛇行しつつ、部屋に続く廊下に向かう。
その背中にティナが声をかける。
「あっ、カナデ、タニア。ごはんどうするんや?」
「私は後でいいや……」
「あたしも……今は寝たいわ……」
二人はそう言い残して、それぞれ自分の部屋に消えた。
「ソラとルナは……」
「すぅ……すぅ……すぅ……」
「すぴかー……すぴかー……すやぁ……」
ソラとルナは自分の部屋に戻る前に力尽きていて、ソファーの上で肩を寄せ合うようにして寝ていた。
こんなになるくらいまでがんばってくれるなんて……二人には感謝しかない。
「ソラ、ルナ。こんなところで寝とると風邪引くでー?」
「いいよ、ティナ。俺が二人を部屋まで運ぶから」
「ええの?」
「二人共軽いから問題ないさ。それよりもティナは……」
ちらりとニーナを見ると、うつらうつらとしていた。
瞳は半分くらい閉じていて、頭が左右に揺れている。
「たはは、ニーナも限界みたいやな」
「そういうわけだから、ティナはニーナを頼む」
「了解やで!」
俺はソラとルナを部屋に運び……
ティナはニーナを部屋に連れていき……
ようやくみんなを寝かせることができた。
いや、みんなというわけではない。
ティナとリファが残っている。
「ティナとリファは寝ないのか?」
「うち、幽霊やからなー。疲労もないし、眠気もないで」
「ボクは吸血鬼。夜こそ真骨頂。もう朝だけど」
「なるほど」
元気そうでなによりだ。
「……はふぅ」
ただ、ティナは若干ふらふらしていた。
心なしか体の輪郭がぼやけて見える。
いや。
幽霊だからぼやけるのは当たり前なのだが……
なんというか、元気がないような感じで、普段の力強さを感じられない。
「ティナも疲れているんじゃないか?」
「なんでそう思うんや?」
「なんで、と言われても……明確な理由はないな。なんとなく、としか答えられない。今のティナはいつもと違う気がするんだよな」
「レインの旦那は鋭いなあ……疲労とかないはずなんやけど、ちと体がだるいんや。たぶん、魔力を使いすぎたんやと思う」
「なら寝た方がいいんじゃないか? 横になっているだけでも、ずいぶんと違うと思うぞ」
「んー……ほなそうさせてもらうわ」
「一人で大丈夫か?」
「大丈夫やで。それともレインの旦那は、うるわしき乙女の部屋に入り込むつもりなんか?」
「い、いや、そんなつもりは……」
「あはは、冗談や。それじゃ、うちも横になってくるでー」
ひらひらと手を振り、ティナも奥に消えた。
……というか、壁をすり抜けていかないでほしい。
みんなが驚くから、廊下を飛んでいってほしいが……まあ、疲れているみたいだし、今日は大目に見ておこう。
「リファは大丈夫か? 無理してないか?」
「ん、ボクは平気」
リファがコクリと頷いた。
無理をしている様子はない。
吸血鬼ってタフなんだなあ。
それとも若さだろうか?
いやいや、俺もまだ若いはず。
「じゃあ、すまないが俺も寝ようと思う。さすがに疲れた……クリオスのことは、昼過ぎに話し合うっていうことでいいか?」
「うん、かまわない」
「助かるよ。それじゃあ、おやすみ」
「待って、レイン」
部屋に移動しようとしたら、リファに手を掴まれた。
振り返ると、なんともいえない複雑な顔をしたリファが。
こちらを見て、口を開こうとして……
しかし言葉につまり、口を閉じてしまう。
なにか言いたいことがあるみたいだけど、それをうまく言葉にできていない?
いや。
というよりは迷っているような感じだ。
自分の中の想いをきちんと消化できていなくて、どんな言葉にすればいいかわからない。
そんな感じだった。
「どうしたんだ?」
焦らせるようなことはしたくない。
俺はできるだけ優しい声をかけて、リファが言葉をまとめるのを待った。
「ボクは……」
ややあってリファが小さな口を開く。
こちらを見る目は、なぜかもうしわけなさそうで、謝罪の念がこめられていた。
「ごめん」
「え? どうして謝るんだ?」
「ボクはレインを疑った」
「それはどういう……?」
「この街の近くでスタンピードが発生して、レインが援軍を呼んでくると消えた時……ボクはレインが逃げたと思った。レインのことを……疑った」
なるほど。
だから、ごめんなさい、というわけか。
「ボク、自分が恥ずかしい。レインは約束を守ってくれた。それなのに……」
「いいよ」
ぽんっとリファの頭に手を置いた。
そのまま、なんとなくリファの頭を撫でる。
「レイン……?」
「リファがそう思うのも仕方ないさ。俺達はまだ出会ったばかり。互いのことはよく知らない。疑うことがあったとしても、それは当たり前だと思う」
「レイン……」
「だから、俺はがんばるよ」
「え?」
「リファに信頼してもらえるように、がんばりたいと思う。もう疑われることのないように、がんばりたいと思う。だから、もう少し俺の近くにいてくれないか? クリオスを救うという約束、それは絶対に守ってみせるから」
「……ありがとう」
リファがこちらに抱きついてきた。
そのまま俺の胸に顔を埋めるようにした。
「でも、がんばる必要はない」
「え? でも……」
「ボクはもうレインを信じている」
抱きつく手に力が込められる。
「最初は信じられなかった。疑った。でも、今は違う」
リファがこちらを見上げた。
その瞳に宿る感情は……信頼だ。
まっすぐにこちらを見ていて……
絶対的な信頼を寄せてくれていて……
想いを伝えるように、心を委ねるように、リファのまっすぐな視線が向けられる。
「レインを信じるよ」
「そっか……ありがとう、リファ」
「んっ」
リファの頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細くした。
まるで猫だ。
なんとなくカナデを連想した。
「ふぁ……」
ついついあくびがこぼれてしまう。
「レイン、眠い?」
「ああ、さすがに徹夜は堪える」
「ボクの話は終わり。寝ていいよ」
「んー……」
寝ていいと言いながらも、リファはどこか寂しそうな顔をしていた。
それはそうか。
俺が寝ればリファは一人になるわけで……
みんなが起きてくるまでの間、寂しい思いをすることになる。
とはいえ、この後のことを考えると、俺も寝ないわけにはいかないし……
「あー……じゃあ一緒に寝ようか」
とんでもないことを口にしたような気がするが……
かなり眠気がきつくなってきたこともあり、頭がぼーっとしてまともにものを考えることができなかった。
「んっ。ボク、レインと一緒に寝る」
「眠れそう?」
「もう朝だからぐっすりと」
「そうか。じゃあ、寝るか」
「んっ」
リファと一緒に部屋に移動して、そのまま一緒にベッドで寝た。
その後……起こしに来てくれたカナデが驚いてしまうのだけど、それはまた別の話だ。
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