302話 頼もしい援軍
思っていた以上に時間がかかってしまった。
急いで戻ったのだけど……
すでに戦闘は開始されていて、かなりの混戦になっていた。
ステラ達は最終防衛ラインまで後退。
カナデ達もがんばっているものの、依然として魔物の勢いは衰えていない。
でも……そこまでだ。
これ以上は好きにさせない。
させてたまるものか。
「レインっ!」
「うわっ」
ものすごい勢いでタニアに抱きつかれた。
突然のことで対処できず、そのまま地面に押し倒されてしまう。
「た、タニア……?」
「もうっ……もうもうもう! 遅いわよっ、レイン!」
俺の上に乗ったまま、タニアがポカポカと胸を叩いてきた。
「絶対に来るって信じてたけど、でも、あまりに遅いからなにかあったんじゃないかって……あーもうっ、このあたしに心配かけさせるなんて、ひどいご主人さまなんだから! 反省しなさいよねっ」
「悪かったよ。ごめん」
「……まあいいわ。許してあげる」
立ち上がり、タニアの頭を撫でると顔を逸らされた。
頬が朱色に染まっているところを見ると、照れているのだろう。
ここまで感情的になるタニアは久しぶりに見たような気がした。
それだけ心配をかけて……
あと、この状況に追い詰められていたのだろう。
「にゃー、レイン!」
「待っていたのだ! 遅いのだ!」
「これでもう安心ですね」
「んっ……もっと、がんばれる……ような気がしてきた」
「うっしゃー、やったるでー!」
みんなもこちらを認識して、喜ぶような気合を入れるような、そんな声をあげた。
その期待に応えないといけない。
「帰ってきたんだ」
バサバサと大量のコウモリが飛来して……
それらが一箇所に集まり、リファが姿を見せた。
「逃げたかと思った」
「逃げないさ。ちゃんとリファと約束しただろう?」
「?」
「助ける、って」
「あ……」
リファが驚いたように目を丸くした。
もしかして、約束を忘れていたのだろうか?
だとしたら、ちょっとショックだ。
でもまあ……
きちんと約束を守る意思があるということ。
そして、約束した通りにリファの仲間を助けること。
それらをこれからの行動を持って示していきたいと思う。
「でも、どうするつもり?」
リファがちらりと魔物の群れを見た。
ジャイアントトータスは穴にハマり、身動きがとれないでいる。
しかし、他の魔物は未だ健在だ。大量に。
あれらをどうするというのか?
たった一人で……しかもただの人間に対処できるというのか?
リファの目は、そんな疑問を宿していた。
「俺がなんとかするよ」
だから俺は、その疑問を払拭するようにきっぱりと、力強く言ってみせた。
「どうやって?」
「こうして」
俺はファイアーボールを唱えて……真上に飛ばした。
そのまま空で炎の花を咲かせる。
リファが不思議そうにそれを見た。
小首を傾げる。
「なに、今の?」
「合図だよ」
「合図?」
「今から来てくれ、っていう頼もしい援軍に対する合図だ」
どこからともなく地響きが聞こえてきた。
それと……獣の唸り声。
オオカミ、ライオン、トラ、クマ、ゾウ、カバ、サイ、タカ、ワシ、ワニ……
ありとあらゆる動物達が魔物の群れを挟撃するように、南北から迫ってきた。
土煙を立てるような激しい勢いで進軍する。
そのまま魔物の群れの横っ腹を叩くような感じで、動物達が食らいついた。
オオカミなどは鋭い牙を立てて、魔物の肉を食い破り……
ゾウなどの大きな体を持つものは、勢いをつけて走り轢いて……
タカなどの翼を持つものは空から強襲をしかけて……
動物達は己のスペックを最大限に発揮して、魔物の群れを蹴散らしていく。
その数は、おおよそ3000。
魔物よりも数は少ないものの、Cランクに匹敵する力を持つような動物ばかりを選んでおいた。
故に、これだけの数がいれば負けることはない。
「……」
リファが唖然としていた。
タニアとステラも唖然としていた。
他のみんなも……冒険者と騎士達も唖然としていた。
「な……なにこれ?」
みんなの気持ちを代弁するように、リファがぽつりとそう言った。
「なんで動物達が……」
「言っただろう? 俺はビーストテイマーなんだ」
「まさか……これだけの数をテイムした?」
「いや、さすがにそれは無理だ」
いくらなんでも3000もの動物をテイムすることはできない。
俺は勇者の分家らしいから、成長限界はないが……
それでも3000は無理だ。
人の範疇を超えている。
なら、どうしたか?
単純な答えだ。
「動物達の群れのリーダーだけと仮契約をした」
それなら配下にいるものは、きちんと命令通りに動いてくれる。
仮契約する対象も少なくて済む。
……という納得のいく説明をしたはずなのだけど、なぜかリファは唖然としたままだ。
「リーダーだけとしても、それなりの数がいるはず。いくつ?」
「そうだな……百くらいかな?」
「ひゃ、百……」
集めた動物の種類はそこまで多くないが……
一つの種類につきリーダーが一匹、というわけじゃない。
複数の群れがまとまって行動している場合もあり、そういう時は、いくつかのリーダーと契約をしなければいけなかった。
結果、ここまでの時間がかかってしまい……
そして、百ほどの動物と仮契約をすることになった。
「おかしい。テイムできるのは一つのはず」
「らしいけど、まあ、俺はちょっと特殊みたいだから」
「特殊の中の特殊……はっきり言っておかしい。百もありえない」
「まあレインだから」
リファは納得いかない様子だが、タニアはやれやれという感じではあるが、普通に事態を受け止めていた。
「まあ、それはともかく」
俺はカムイを抜いて、構えた。
「頼もしい援軍を連れてきた。みんなががんばってくれたし、これで対等だ」
「そうね。正直、あのままだったらちょっとやばかったけど……レインのおかげでなんとかなったわ。ここからは反撃の時間ね」
タニアが不敵に笑う。
「やれやれ……相変わらず、レインはとんでもないな。ただ、そこまでしてくれた以上、我ら騎士も遅れをとるわけにはいかない」
ステラも気合を入れ直すようにして、部下達に号令を飛ばした。
冒険者達の顔からも絶望の表情は消えて、活気あふれる希望に満ちたものになっていた。
誰もが皆、前を向いていた。
俺が援軍を連れてきたから……それだけではない。
むしろ、俺が戻ってきたから。
だからこそ気合を入れ直すことができた。
そのような感じで、誰も彼も力に満ち溢れていた。
やや恥ずかしくはあるが……
みんなに希望を届けることができたのなら、誇らしく、とてもうれしい。
そんな俺達を見て、リファは不思議そうな顔をした。
俺達の力、心の源がわからないのかもしれない。
ただ……
「……悪くない」
リファも小さく笑った。
「レイン」
リファが俺の隣に並び……血の鎌、なのか?
とにかくも武器を構えた。
まるで、背中は預けるというような感じで……
「いくよ」
「ああ!」
力強く応えて、俺とリファは魔物の群れに向かって駆け出した。
『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、
評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。
よろしくおねがいします!




