294話 VS鬼族
「まだ続ける?」
「もちろん」
「ん。その気合はいい」
拳を構えるが、リファはその場で棒立ちだ。
少しずつ距離を詰めても反応することなく、好きにしてくださいというような態度を見せている。
やはり、またコウモリに変身して逃げるつもりなのか?
でも、それはそれで好都合だ。
「いくぞっ! ……ブースト!」
魔法で身体能力を上昇させてから突撃した。
先ほどよりも速く、鋭くなっているが……
「甘いよ」
リファは動揺を見せることなく、再びコウモリになって俺の攻撃を避けた。
不意をついたつもりだけど、そう簡単にはいかないか。
一つ目の作戦は失敗。
でも、まだまだ問題はない。
作戦はまだある。
そのうちの一つが……コレだ。
「止まれっ!」
「っ!?」
ビーストテイマーの能力を使用して、コウモリに停止指示を出した。
無数のコウモリが小さく震えて、その動きが止まる。
どういう原理か知らないが……
コウモリはリファが元になっている。
そのため、他の動物と同じように指示が効くかわからないという不安要素はあったが……
俺は賭けに勝った。
無数のコウモリに分裂したリファは、再び合体することができない様子で右往左往していた。
「くっ……この!」
しかし、最強種を長時間縛り続けることは難しいらしい。
気合を入れるような声と共に、俺の中で命令が弾かれるという感覚が伝わる。
コウモリ達は自由を取り戻して、すぐに一箇所に集合。
再びリファが顕現する。
「今の……なに?」
こちらの能力を警戒している様子で、リファは距離をとりつつ、そう問いかけてきた。
「俺はビーストテイマーなんだ」
「……それで?」
「普通の人を操ることはできないけど、コウモリに変身するならなんとかなるかな……って」
「コウモリに変身しても、ボクは最強種。人間に操られるなんてありえない」
「まあ、そこは色々と」
たぶん、俺の中に流れている勇者の血のおかげだろう。
そのおかげで、普通なら通じるはずのない命令がリファにも通じている。
ただ、さすがにそこまで説明することはできない。
模擬戦のようなものなので、こちらがビーストテイマーであり、その能力を使用したことは教えてもいい。
しかし勇者の血などはけっこうな機密情報なので、信用できる相手以外に教えることはできない。
「いくよ」
まだ続けるつもりらしく、リファが構えた。
納得してもらうには勝利するしかないと思い、俺も構えた。
リファが突貫……してきたと思ったら、その体が家の影の中に沈んだ。
「なっ……!?」
突然のことに驚いて、思わず動きを止めてしまう。
リファがその隙を逃すことはない。
「隙あり」
今度は俺の影からリファが飛び出した。
そんなバカな!?
まるで瞬間移動じゃないか。
「くぅっ!?」
リファは飛び出した勢いで宙を舞い、くるくると回転して蹴りを叩きつけてきた。
咄嗟に腕でガードするものの、その威力はかなりのもので、ビリビリと痺れてしまう。
リファはさらに独楽のように体を回転させて、宙に浮いた状態のまま、連続で蹴撃を繰り出してきた。
一撃、二撃、三撃。
二撃目まではガードすることに成功したが、三撃目をまともに受けてしまう。
ガツンと頭に衝撃が走る。
かなり強烈で、一瞬、意識が消えた。
なんとか踏みとどまり、倒れることは耐えた。
反撃……というか、これ以上攻撃されないための牽制の一撃を繰り出すが……
「甘い」
再びリファが影の中に消えた。
今度は少し離れた木の影から現れる。
影と影を移動する能力か……?
確定するには材料が足りないが、瞬間移動に似たものと、ひとまず仮定することにしよう。
やりようは……ある。
「物質創造!」
リファの周囲を囲むように石壁を作りあげた。
その上で……
「重力反転!」
「これは……!?」
リファにかかる重力を倍増させた。
これで石壁の中に閉じ込めたことになるが……
「驚き、こんな能力を持っているなんて」
「色々とあってね」
「でも……やっぱり甘い」
壁に囲まれていようが重力が倍増しようが、そんなことは関係ないというようにリファは影の中に消えた。
また俺の影から……?
最大限の警戒をして……
俺はここぞというタイミングで振り返る。
「なっ!?」
絶妙なタイミングで、背後にある木の影からリファが顔を出した。
大地を踏みしめるようにして、拳を突き出して……
「……」
リファの眼前で止める。
「これでどうだ?」
「……今の一撃を食らえば無事じゃない。ボクの負け」
リファは素直に負けを認めてくれて、降参と言うように両手を挙げた。
それから、不思議そうに小首を傾げる。
「でも、どうしてボクの場所を?」
「背中を見てみるといい」
「ん……虫?」
リファが服を引っ張るようにして背中を見ると、そこには小さな虫が張り付いていた。
「俺、ビーストテイマーだけど、インセクトテイマーの力も多少あるんだ。で、その力を使ってその虫をリファの背中に貼り付けた」
「この虫は……魔力を帯びている?」
「リファが言うように、リアクターアントっていう魔力を帯びた虫なんだ。虫というかアリな。その性質上、他の魔力と干渉するんだよ。妨害できるほどじゃないんだけど……」
「ボクの魔力が乱れて、そこから出現位置を探知した?」
「正解」
「でも、こんなものいつの間に……まさか」
自分で答えに至ったらしく、リファが驚いた顔になる。
「さっきの派手な能力? あれはボクを閉じ込めるためじゃなくて、この虫を貼り付けるための目くらまし……?」
「それも正解」
頭のいい子だ。
こちらの手の内を全部晒した状態で勝負したら勝てないかもしれない。
「これが俺の力、っていうことになるかな」
「……」
「虫の力を借りているし……まあそもそも契約で得た力は俺のものじゃないから、自力じゃないんだけどな。純粋な力比べでなければ納得いかない、ってことになると、これ以上はどうすることもできないから、その場合は俺の負けになるよ」
「ううん。そんなことは言わない」
リファは小さく首を横に振る。
そして、どこかキラキラとした眼差しをこちらに向けてきた。
「レインは強い。ボクより強い」
「次やっても勝てる保証はないけどな」
「ううん……そんなことはないと思う。とにかく、ボクの負け。レインの力、認める。偉そうにしてごめんなさい」
リファはぺこりと頭を下げた。
あれこれと強気な台詞を口にしたことを気にしているらしい。
「いいよ。俺の力を確かめること、それはリファにとって必要なことなんだろ? なら、いくらでも確かめてくれて構わないさ」
「ん……ありがと。レインは優しい」
「うむっ、そうなのだ! レインは優しいのだ!」
「にゃー……なんだか、また一人、レインに……」
「大変やなあ」
勝負が終わり、みんながあれこれと感想を口にした。
いや、感想というよりは雑感……?
「とりあえず……俺を探していたっていう理由、中で聞こうか」
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