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293話 依頼と力試し

 自分で言うのはどうかと思うけど……

 俺は『ホライズンの英雄』なんて呼ばれている。


 以前、悪徳領主の不正を暴いて……

 街に突如出現した魔族を討伐したことで、街の人にそう呼ばれるようになったのだ。


 英雄なんて柄じゃないけど……

 街の人達の親愛の証のようなものでもあるので、悪い気はしていない。


「えっと……リファ」

「ん?」

「もしかして、その英雄の名前は知らないのか?」

「ん、知らない」


 リファが小さく頷いた。


「でも、とても有名と聞いた。ここに来ればすぐに見つかると思った」

「なるほど」

「レインは英雄を知っている? だとしたら紹介してほしい」


 リファはぺこりと頭を下げた。

 それから、まっすぐな瞳でこちらを見つめてきた。


 その目はとても綺麗に澄んでいて、悪いことを考えているようには見えない。

 何かしら大事な目的があるのだろう。


「えっと……俺がその英雄なんだ」


 邪な心はないと思い、素直にこちらの正体を明かすことにした。


「……レインが?」


 予想外らしく、リファが目を丸くした。

 あまり表情の変わらない子だから、こういう反応は新鮮だ。


「ホント?」

「本当だよ」

「……でも、強そうに見えない」


 ぐさりと来る一言だった。


「レインは強いよ? 私達最強種と契約しているし、それだけじゃなくてビーストテイマーとしてもすっごく優れているんだよ」


 カナデがフォローするようにそう言うと、リファが考えるような仕草をとる。


「カナデと契約……それはすごい。ティナも?」

「せやな。ウチもレインの旦那と契約してるで」

「でも、ティナは幽霊」

「レインの旦那は、ファントムテイムとかいうわけのわからん力もあるんや」

「ふぁ、ファントムテイム……?」


 聞いたことがないらしく、リファが動揺していた。

 まあ、幽霊を使役するなんて珍しいからな。

 故郷の隣のおじさん以外に見かけたことがない。


「それなら……でも……」


 リファはぶつぶつとつぶやいて、何事か考えていた。

 いったい、どんな目的があるんだろう?


「レイン」


 ややあって、リファがこちらを見た。

 今までで一番真面目な顔をしていた。


「ボクと戦う」

「え? なんで?」

「レインの力を確かめたい」

「そんなことを言われてもな……」


 理由もないのに戦うことなんてできない。

 ましてや相手は女の子だ。


 まあ、最強種なのだからそんな心配は必要ないのかもしれないけど……

 それでも戦うとなるとためらいが生まれるんだよな。


「詳しい理由を聞かせてくれないか? 力を確かめたいから戦ってほしいと言われても、ちょっと納得できない」

「むう」


 リファが困ったような顔をした。

 理由を口にすることに、ややためらいがあるみたいだ。


 しつこく聞けば教えてくれそうな雰囲気はあるが……

 それなりに大事な理由みたいだから、無理に聞き出すようなことはしたくない。


「……わかった、戦おうか」

「いいの?」

「いいよ。リファにとってとても大事なこと、っていうのは理解できたから……なら、戦うよ。理由を話すかどうか、それはリファに任せる」

「ありがと」

「ただ、俺はそんな強くないから、がっかりしても文句は言わないでくれよ?」

「レインの旦那、いつまで勘違いしてるんや?」

「レインが弱かったら、他の人はどうなるのー、っていう話だよね」

「楽しみ」

「……頼むから二人共、変に煽らないでくれ」




――――――――――




 家の中で戦うわけにはいかないので、庭に移動した。

 まだ曇ってはいるが、雨は止んでいたのでちょうどいい。


 10メートルほどの間隔を空けて、リファと対峙する。


「レイン、がんばれー!」

「リファもがんばるんやでー!」


 カナデとティナが応援をしてくれる。

 その隣でルナが地面に座り、家から持ち出したお菓子をぱくぱくと食べていた。


「うむ、こんな催しがあるなんて聞いてないのだ。わくわくなのだ」


 どこからか話を聞きつけて見物に来たらしい。

 見世物じゃないんだけど……まあいいか。

 ルナなら戦いの余波に巻き込まれる心配はしなくても平気だろう。


「いくよ」

「ああ、来い!」


 リファが地面を蹴り、戦闘が開始された。


「ふっ!」


 リファが突撃してきた。


 速い!

 10メートルほどの距離があったはずなのに、一瞬で目の前に迫る。

 どうやらリファの身体能力はかなり高いらしい。


 ただ、これくらいなら俺でも対処できる。

 カナデと契約しているおかげで、猫霊族並の力があるからな。


 驚きはすぐに押し込めて。

 落ち着いてリファが繰り出してくる拳を無手でさばいた。


 止められると思っていなかったのだろう。

 リファは驚きに目を丸くして、それから警戒するように後ろに跳んで距離をとる。


「やるね」

「一応、それなりに修羅場をくぐり抜けているからな」

「少し本気出す」


 リファから放たれる圧が強くなる。

 自然と構えを取らされた。


 数秒の睨み合いの後、リファが再び突撃してきた。

 その速度に特に変わりはない。

 少し本気を出すと言っていたけれど、身体能力が上昇するわけじゃない?


 不思議に思うが……

 とりあえず、俺はリファを迎撃するだけだ。


 リファの突撃は確かに速い。

 人の限界を超えていると思う。

 ただ、人外の相手はそれなりにしてきたし……

 なによりも二度目ともなれば目が慣れる。


 右腕で薙ぐようにして、リファの突撃に合わせてカウンターの一撃を叩き込む。

 その一撃は確実にリファを捉えるのだけど……


「なっ!?」


 拳がリファに当たる直前、その体が四散した。


 いや……四散したように見えただけで、実際にはまったく別の現象が起きていた。

 リファの体が無数の黒いコウモリに変わり、周囲に散ったのだ。


「にゃ!? こ、コウモリに変身したの!?」

「ど、どういうことなんや……?」

「ほほう、これはこれは……」


 観戦しているみんなにも予想外のことらしく驚いていた。


 そんな中、無数のコウモリが周囲を飛び回り……

 不意をついて俺の背後に集結する。

 するとコウモリが人の形を取り、再びリファが現れた。


「な、なんだそれは!?」

「ボクの能力」


 リファが背後から突貫してきた。

 慌てて防御しようとするが、あまりに予想外の光景に動揺してしまい、ガードが遅れてしまう。


「ぐっ!?」


 着弾。


 瞬間、天と地が逆転した。

 ぐるぐると回転しつつ吹き飛ばされて、地面を何度も何度も転がる。

 地面に腕を突き立てるようにしたところで、ようやく止まることができたが……


「くぅっ……今のは効いたな……!」


 骨が折れているということはなさそうだけど、打撲は確実だ。

 後で自分で治癒魔法をかけるか、ソラかルナに治療してもらわないと。


「終わり?」


 リファは追撃をかけることなく、どこか残念そうな感じで問いかけてきた。


「人間にしては強い。でも、その程度ならダメ」

「……そう判断するのはまだ早いぞ」


 このまま負けてたまるものかと、単なる負けず嫌いの心が燃え上がり、俺は立ち上がる。

 さあ……ここからは反撃の時間だ。

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[気になる点] >>その隣でルナが地面に座り、家から持ち出したお菓子をぱくぱくと食べていた さっきまで雨降ってたから地面なんてべちゃべちゃだろうに これは後でお尻がべちゃべちゃになるか実は体育座りの…
[良い点] まぁ、鬼族なのに前ぶれ無く蝙蝠に別れたら、そりゃあ驚くわな…鬼は鬼でも吸血『鬼』か(苦笑) [気になる点] ただ、それにしたって驚き過ぎのような…(本人も言ってるケド)色々と経験してきてい…
[気になる点] 腕試し始めたということはテイマーとしての力より戦闘能力が必要だということかな?テイマーだと知らなかったようですし。 ちと気が早いですが吸血鬼(?)と契約したらどんな力が手に入るのかな?…
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