284話 レインの策
翌日。
ソラとルナはちょっとした用のため出かけているため……
他のみんなを集めて、俺が考えていること、悩んでいることをそのまま話した。
その結果……
「にゃー……レインのばか」
「そうね、バカね」
「バカやな」
「えっと、えっと……めっ」
カナデとタニアとティナに、揃ってジト目を向けられた。
バカというセリフも感情がこもっているというか、なかなかに痛い。
ニーナはバカとは言わないものの、それなりに怒っているみたいだった。
珍しく頬を膨らませている。
「レインと一緒にいることで、私達が危険に晒されるとか……」
「でもって、それを自分の責任と考えるとか……」
「レインの旦那は、ホンマ、アホやなあ」
アホ、いただきました。
みんな、とても呆れているようだった。
「その悩みは、レインが優しいから、っていうのはわかるよ? でもね、なんていうか、えっと……」
「カナデ、こういう時はハッキリと言った方がいいわ。レインは余計なことを考えすぎてて、ダメダメよ」
「うぐ」
「あたしらのことを心配してくれるのは……まあ、うれしいわ。でもね、あたしらは子供じゃないの。自分で考えて、自分で物事を決めているの」
「そら、レインの旦那と一緒にいたら危険な目に遭うかもしれんけどな。でも、それら含めて、うちら自身が決めたことや。その覚悟はあるし、責任をレインの旦那に押し付ける気はないで」
「そうだよ、ティナの言う通りだよ。私達は、私達の意思でレインと一緒にいるの! 背負う必要のない責任を負うなんておかしいよ。もうっ、今日のレインはダメダメだよ!」
「いや……ホント、すまない……」
悩みを打ち明けて、話を共有するつもりだったのだけど……
途中から俺の説教大会へ移行していた。
まあ、そうなっても仕方ないので、甘んじて批判は受け入れよう。
「レイン、レイン」
ニーナが、うなだれる俺の顔を持ち上げる。
そうやって視線を合わせると、にっこりと笑う。
「わたし、まだ……子供だけど。でも、ね……レインと一緒にいたいよ」
「……ニーナ……」
「危ないとしても……やっぱり、一緒が……いいな。それは、わたしが……そう決めたことだから。だから……レインは気にする必要、ないの」
「……ああ、そうだな。ありがとう、ニーナ」
今まで、俺は自分のことしか考えてなかった。
勝手に責任があると思い込み、勝手に全てを背負い込んだ気になっていた。
でも、それは違う。
みんなの意思を確認していない。
尊重していない。
それはただの独りよがりで……
危うく、とんでもない間違いを犯すところだった。
あのまま一人で悩み、みんなと離れる選択をとっていたら、本当にパーティーは崩壊していただろう。
「ま、レインの旦那も反省しとるみたいやし、この辺にしとこか」
「そうだね。あまりしつこく言っても、それはそれで嫌な感じになっちゃうもんね」
「いい、レイン? これからは、二度とそんなバカなことを考えないように!」
「わかった、誓うよ」
「ん、よろしい」
ニーナに続いて、みんなの顔にも笑顔が戻った。
「それじゃあ、お母さん達の説得に戻ろう。そろそろ、起きているんじゃないかな?」
昨日、アルさん達は夜ふかしをしたらしく……
話をしようとしても、まだ寝ていた。
なので、みんなに対する話を先にしていた……というわけだ。
「説得はしなきゃだけど……正直、どうしたらいいのかお手上げなのよね。母さん、子供っぽいんだけど、かなり頑固なところがあるから」
「うーん、私のお母さんもそうなんだよね。自分で、こうと決めたことに関しては、なかなか道を譲ってくれないっていうか……」
「アルさんも、なかなかに厄介やなあ。三人の中で一番落ち着いとるようで、一番過激っぽいしなあ」
「でも……がんばら、ないと」
ニーナが小さな拳をぎゅっと握りしめて、気合を入れるポーズをとる。
「ニーナの言うとおりだ。ここでアルさん達を止めないと、想像するのが恐ろしいくらい、大変な事態に発展しそうだからな」
「にゃー……お母さんなら、ホントに王都を攻めそう……」
「ウチもよ……」
「まだ、うちらは聞いとらんのやけど、レインの旦那の策ってのは、進捗はどうなってるん?」
「そのことなら、ソラとルナに任せているから、二人が戻らないことにはなんとも……」
「た、大変じゃ!」
突然、扉が勢いよく開かれた。
見ると、精霊族の長が息を切らして、部屋の入り口に立っていた。
「にゃー、どうしたの、そんなに慌てて?」
「こらっ、品性欠乏症猫。口調に気をつけなさい」
「品性欠乏症猫!?」
タニアの容赦ないツッコミに、カナデがガーンというような顔をした。
「どうしたんですか? なにか問題が?」
「あ、アル達が……今から王都に攻め込むと言い始めたのじゃ!」
――――――――――
急いで精霊族の里の入り口へ行くと、スズさん、アルさん、ミルアさんの三人の姿があった。
それぞれラフな格好をしていて、普段とあまり変わりない。
ただ、その身にまとう闘気は別格で……
思わず怯んでしまいそうになるほど、三人はやる気まんまんだった。
「ちょっと、お母さん! どこに行くつもりなの!?」
「もちろん、王都ですよー」
「あたしらとの話が終わってないでしょ!」
「だってだって、タニアちゃん、難しいことばかり言って、お母さんの邪魔をするんだもん!」
「話は平行線で、互いに納得することはないじゃろ? じゃから、話はここまでじゃ。妾達は妾達で、勝手に行動させてもらうのじゃ」
やばい。
アルさん達は我慢の限界に達したらしい。
話はここまでと打ち切り、独自に行動を始めたようだ。
ソラとルナが戻ってくるまで、どうにかして時間を稼がないといけないのに!
「待ってください! 話はまだ……」
「終わりなのじゃ」
ぴしゃりと、有無を言わせない様子でアルさんが俺の話を遮る。
昨夜とは別人みたいだ。
これ以上、どうすればいいのか?
どうやって引き止めればいいのか?
打開策が思い浮かばず、次の行動に移ることができない。
ただ、アルさん達を見送ることしか……
「待つのだ!」
鋭い声が割り込み、アルさん達の足を止めた。
その声の主は……
「ルナ! それに、ソラも!」
「ふふんっ、絶妙なタイミングというヤツみたいなのだ! 我は、このような出番をずっと待ち望んでいたぞ。さあ、刮目せよ! そして、驚愕するがいい! 我こそは……」
「だまりなさい」
「ふぎゃん!?」
ソラのげんこつが炸裂して、ルナが地に沈んだ。
なんともいえない空気が流れる。
「空気の読めない駄妹が失礼しました。とりあえず……レイン、おまたせしました」
「ああ、よかった……すごく待っていたよ」
「ソラは、主の期待を裏切ることのない、優秀な使い魔なので。ふふ」
姿の見えなかった娘達が現れて、アルさんは少し驚いているみたいだった。
しかし、すぐに感情を消すと、射るような視線をソラに向ける。
「ふむ。ソラよ、そこをどくのじゃ。ソラも妾の邪魔をするつもりか?」
「ある意味で、邪魔することになるんでしょうね。とりあえず……母さん、こちらの方の話を聞いてください」
ソラがそう言って、奥から姿を見せたのは……
「こんにちは。そして、少しぶりですね、レインさん」
サーリャさまだった。
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