表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

279/1168

279話 再び精霊族の里へ

 王都からホライズンへ戻ったかと思えば、再び街を出ないといけない。

 休息はとったとはいえ、なんとも慌ただしいものだ。


 準備をした後、街を出て迷いの森へ。

 厄介なところだけど、一番近い精霊族の里への出入り口はここなんだよな。


 入り口が設置されている、大木がある場所へ移動した。


「……止まりなさい」


 どこからともなく声が響いた。


「これより先は、精霊族の里……関係のない者……ましてや、人間を通すわけにはいきません。引き返しなさい」


 アルさんの声じゃない。

 かなり若い感じで、ソラとルナと同じくらいという印象を受けた。

 まあ、声だけなので、なんとも言えないのだけど。


「誰が関係のない者ですか」

「我らは関係大アリなのだ!」


 二人は、普段は魔法で隠している光の羽を顕現させた。

 驚くような、息を飲む音が聞こえてくる。


「その羽は……私達の同族? というか、もしかして、その顔は……」


 蜃気楼のように空間が歪み……

 そこから一人の女の子が現れた。


 薄い青の髪は水のようで、とても綺麗だ。

 ソラとルナよりは歳は上だけど、俺よりは下……という感じか?

 二人と同じような服を着ていて……

 その背中には、光り輝く羽が見えた。


 間違いない、精霊族だ。

 おそらく、ソラとルナに代わり、ここの入り口の番人をしているのだろう。


「ユキ!」

「おぉ、元気にしてたか?」


 ソラとルナが笑顔になる。

 どうやら、知り合いらしい。


「久しぶり、ソラ、ルナ。アルさまから聞いていたけど、元気でやっているみたいね」


 三人は笑顔で抱き合う。

 友だちなのかな?

 ユキと呼ばれた精霊族の女の子は、さきほどとは違い、砕けた口調で言う。


「どうしてこんなところに? あっ、もしかして里に帰るつもりになったとか?」

「いいえ、違います」

「我らは母上達を止めに来たのだ」

「あぁ、そういう……」


 ユキがひどく落胆したような顔をした。

 二人が一時的な帰郷と知り、ものすごく落ち込んでいるみたいだ。

 どうして、そこまで落ち込むのだろう?

 友達がいないから寂しいのだろうか?


「そっちの人達は?」

「みんな、ソラの仲間ですよ。猫霊族のカナデ、竜族のタニア、神族のニーナ、幽霊のティナです」

「あと、我らのご主人さまのレインなのだ!」

「ご主人さま……? え? それって、どういう……」

「レインはビーストテイマーで、我とソラはレインと契約を結んだのだ」

「なっ!? せ、精霊族が人間と契約を……」


 一瞬、ものすごい勢いでユキに睨まれた。


 しかし、それは本当に一瞬のことで……

 ユキはすぐに咳払いをして、にっこりと笑ってみせる。


「すみません。予想すらしていなかったことに驚いて、つい大きな声をあげてしまいました」

「あ、いや……気にしないでくれ」

「私は、ユキといいます。ソラとルナの主というのならば、私にとってもそれにふさわしい方。どうか、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしく。あと、口調は普通で構わないよ」

「いいのですか?」

「いいよ。俺はそんな偉くないし、あと、普段の口調の方が仲良くなれたみたいでうれしい」

「……ちっ」


 あれ、舌打ちされた?


「じゃあ、そうさせてもらうわ」


 ユキは笑顔に戻る。

 気のせいだったのかな……?


「とにかくも、ユキが門番を務めているのなら話は簡単です。ソラ達を里に連れて行ってくれますか?」

「イヤよ」

「え?」


 断られるとは思ってなかったらしく、ソラがきょとんとする。

 そんなソラに代わり、ルナが問いただす。


「なぜなのだ? 我らの帰郷が許されない理由なんて、思い当たらないぞ。確かに門番を放棄したが……前に帰郷した時は誰にも文句は言われなかったのだ」

「ソラとルナに問題があるわけじゃないわ。問題は……そこの人間よ!」


 ユキは厳しい顔で、ビシッと俺を指差した。


「神聖な精霊族の里に人間なんかを入れるわけにはいかないわ!」


 さきほどとは一転して、敵意をぶつけられてしまう。

 俺、なにか気に障るようなことをしてしまっただろうか……?


「にゃー、でもでも、そういうのおかしいよね?」

「レインなら、この前、普通に精霊族の里に入っていたわね」

「特に……文句、言われなかったよ?」

「長にも認められてたしなー」

「うぐっ」


 みんなの援護射撃にユキがたじろいだ。

 もしかして、精霊族の意思ではなくてユキの独断……?


「えっと……なんで、俺は精霊族の里に入っちゃダメなんだ? 人間だから、っていうのでは理由がちょっと薄いというか……もう少し詳しいところを教えてくれないか?」

「むぐぐぐ……この人間、思ったより冷静というか理知的ね。ああいう態度をとれば、すぐに怒って本性を現すかと思ってたのに」

「えっと……それは、どういう?」

「……いいわ」

「え?」

「今回は特別に、あんたが精霊族の里に入ることを認めてあげる。でも、変なことをしたら……わかっているわね?」


 凄絶な表情をして、ユキが釘を刺してきた。

 変なことと言われても、どういうことを指しているのかわからないが……

 気をつけることにしよう。

 今のユキはちょっと怖い。




――――――――――




「おー、久しぶりの空気」


 再び精霊族の里に足を踏み入れた。

 澄んだ空気に新緑の葉に覆われた街。

 透き通るほどに綺麗な水が流れていて、見ているだけで心が癒やされていくみたいだ。


 大げさな表現かもしれないけど、楽園という表現がふさわしい。

 それくらいに良いところだ。


「相変わらず綺麗なところよね。ウチとは大違い」

「うん? タニアんところは、どういうところなんや?」

「んー……汗臭い?」

「あー……なんちゅーか、その一言でなんとなく想像できてしもうたわ。ウチ、タニアには悪いが、竜族の里には行きたくないなあ」

「それで正解よ。戦うことに特化してて、他に目を向けていない戦闘狂種族だもの。まあ、あたしが言うのもなんだけど」


 あれこれと話をしながら、ユキの案内で長の家に向かう。


「……」


 その間、じーっとユキに見つめられていた。

 敵意たっぷり。

 かなり睨まれている。


 ホント、なんでだろう……?

 失礼な態度をとった覚えはないが……

 やはり精霊族だから、人間のことが嫌いなのだろうか?

 ソラとルナの友達なのだから、できれば仲良くしたいんだけど……


「はい、ついたわよ」


 打開策が思いつかないまま、長の家に到着してしまう。

 仕方ない。

 ユキと打ち解けるための方法は後で考えることにしよう。

 今はアルさん達のことをなんとかしないといけない。

 どうにかして説得しないと。


「失礼しま……」

「徹底的に焼き払うべきだよっ!!!」


 長の家に入ると同時、いきなり物騒なセリフが聞こえてきた。


 丸いテーブルを四人で囲んでいるのが見えた。

 スズさん、アルさん、ミルアさん。

 そして、精霊族の里の長。

 後ろに世話係らしき精霊族の男の人が控えているが、ひたすらに気まずそうだ。


 ドンッ! と、ミルアさんが勢いよくテーブルを叩く。

 とんでもなく怒っているみたいだ。

 子供のように頬を膨らませて、顔を赤くして、大きな声で言う。


「うちのタニアちゃんに……かわいいタニアちゃんに……かわいいかわいいかわいいタニアちゃんに……ふざけたことをしてくれるなんて、ぜぇえええええ……ったいに許せないもん! あんな国っ、今すぐに、即刻、瞬殺で、焼き払うべきだよ!!!」


 ……説得するの、ものすごく大変そうだった。

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者様、妄想の時間となりました。 この三人と出会った精霊族の長老の気持ち 長老「お三方ともどうか落ち着いて頂きたい」 (ああ、このままこの怒りが続いたら里にどんな影響が及ぶか分からん・・・…
[気になる点] うーん"(-""-)"多分だと思うのですが、ユキの”アレ”がソラ&ルナと同じになったのは、 1.ソラとルナのためとはいえ、レインに酷い事を言ったため。 読者様方がユキもソラとルナと同…
[一言] そういえば……ユキは……貧乳同盟……仲間?
2021/11/12 23:26 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ