267話 お祝い
王城の一室でみんなと合流して、そのまま城を後にした。
空を見ると、太陽が輝いていた。
青い空の中を、白い雲がゆっくりと泳いでいる。
「んにゃー♪ 今日は良い天気だねぇ」
隣を歩くカナデが、ぐぐっと伸びをした。
どことなく幸せそうな感じで、尻尾がゆらゆらと揺れている。
「「ふんふ~ん♪」」
ソラとルナはシンクロして鼻歌を歌っていた。
精霊族だから、温かい日差しは好きなのだろう。
こういうところを見ていると、双子だなあ、って思う。
「ねえ、レイン。この後、時間あるかしら?」
反対側を歩くタニアが、そんなことを問いかけてきた。
「時間? もちろんあるけど……どうしたんだ?」
「ちょっと付き合ってもらいたいところがあるの。もちろん、断らないわよね?」
「ああ、いいよ」
「それじゃあ、一名様ご案内~♪」
「案内……するね?」
「するでー!」
ニーナと、その頭の上に乗ったティナが俺の前に回り、元気よく言う。
二人はすっかり仲良しコンビだ。
それにしても……
付き合ってもらいたいところって、どこだろう?
――――――――――
案内されたところは小さな食堂だった。
宿と一体化しているところではなくて、ごはんだけの提供だ。
その分、やや値が張るところだ。
なぜか、俺は店の外で待たされた。
みんなは店の中へ入り……なにやら楽しそうな声が聞こえてくる。
いったい、なんなんだろう?
「おまたせ、レイン」
不思議に思っているとカナデが出てきた。
「準備バッチリだよ! それじゃあ、中へどうぞ」
「あ、ああ……」
カナデに背中を押されるまま、店に入ると……
「Aランク昇格……」
「「「「「おめでとうーーーーーっ!!!!!」」」」」
パンパパンッ! とクラッカーが鳴り響いた。
紙吹雪がひらひらと宙を舞う。
突然のことに驚いて目を丸くしてしまう。
「えっと、これは……?」
「レインのAランク昇格のお祝いだよ♪」
カナデがにっこりと言う。
「俺の……?」
「いろんなことがあったけど無事に合格できたから、そのお祝いをしたいよねー、ってみんなで話していたんだ」
「それで、せっかくだからサプライズパーティーでもしない? っていう話になったわけ」
タニアがそう補足した。
「そっか、わざわざ俺のために……」
みんなを見ると、笑顔を返された。
その笑顔を見ていると、なんともいえない温かい気持ちになる。
この前の事件を経て……
改めて、みんなが近くにいることの幸せを感じた。
仲間っていいものだな。
ホント、心の底からそう思う。
「ありがとう、うれしいよ」
「にゃふー♪ サプライズ成功だね!」
「さあ、レイン。主役は席についてください。たくさんの料理とお酒が待っていますよ」
「いっぱい食べるのだ!」
ソラとルナに案内されて席に着いた。
すでに準備は完了していて、テーブルの上にはたくさんの料理が並べられていた。
色とりどりの料理が用意されていて、宝石箱みたいだ。
「レインの旦那、改めておめでとうやで!」
「おめで……とう」
「ありがとう」
ニーナに酒を注いでもらい、一口飲む。
それを合図にするように、みんなも料理を食べて酒を飲み始めた。
――――――――――
「はふぅ、お腹いっぱいなのだ……もう食べられないのだ……」
とても満足したような顔をして、ルナがイスの背もたれに寄りかかりながらお腹をさすった。
そんな妹を見て、ソラが呆れたようにため息をこぼす。
「まったく、この駄妹は……今日はレインが主役なのですよ? そのことを忘れて、飲み食いに一生懸命になる使い魔がどこにいるのですか」
「ここにいるのだ!」
「愚駄妹ですね……」
「愚駄妹!? なんなのだ、そのパワーワードは!?」
「まあ、別にいいんじゃないか? 俺のことを考えてくれるのはうれしいけど、それよりは、みんなで一緒にわいわいした方が楽しいよ」
「さすがレインなのだ! そう言ってくれると思っていたのだ!」
ルナがうれしそうにバシバシとこちらの背中を叩いてきた。
ちょっと酔っているのだろうか?
頬が赤い。
精霊族は酒に強いと聞いていたが……
「うおっ!?」
ルナの横に空になった酒瓶がいくつも転がっていた。
数えきれないほどだ。
これだけ飲めば、さすがに精霊族のルナも酔っ払うか。
「にゃあ♪ 料理もお酒もおいしー! もっと追加注文しちゃおうっと!」
「あ、カナデ。あたしの分もおねがい。この牛ステーキと羊ステーキと豚ステーキ、それぞれ三人前ね」
「おー、タニア、いっぱい食べるなあ。ウチも負けてられんでー! この体なら食べることができるから、こういう機会を逃さずにたくさん食べないと損や!」
「んっ……お料理、たくさん……全部、おいしいね♪」
「ニーナ、もっと食べないとダメやでー。大きくなれることはわかってるんやから、今のうちからたくさん栄養をとっておくんや!」
「そう……なの?」
「そうや! というわけで、メニューのここからここまで、追加や!」
こういう場は本当に久しぶりだから、みんな笑顔で全力で楽しんでいた。
それはいいんだけど……
「……なあ、ソラ」
「はい、なんですか?」
「みんな遠慮なく注文してるけど、会計、大丈夫なのか……?」
サプライズなので、ここの支払いは俺持ちじゃない。
基本、財布は俺が管理しているけど……
最近は何かあった時のために、みんなそれぞれにある程度の額を持たせている。
その額をまとめたとしても、これだけの量の支払いができるとは思えないのだけど……
まあ、足りなければ俺が払えばいいんだけど。
「なるほど、その心配をしているんですね。それなら問題ありませんよ。先の一件で、国からたくさんの金をふんだく……いえ。迷惑料をいただいたので」
「ふんだく……の後は聞かないことにするよ」
ソラはとてもちゃっかりしていた。
思わず、呆れるよりも感心してしまう。
「言っておきますが、非合法な手を使ったわけではありませんよ? あの王女が申し出てきたことなのですから」
「サーリャさまが?」
「迷惑をかけてしまったお詫びを少しでもしたい……と。そう言っていましたね」
サーリャさまの責任ではないと思うのだけど……
まあ、今更返却する方が失礼だろうし、好意に甘えることにしよう。
「ねえねえ、レイン」
ほんのりと頬を染めたカナデが声をかけてきた。
酒の匂いがする。
それなりに酔っているみたいだ。
「王さまと話をしていたんだよね? どんなことを話していたの?」
「あー」
やっぱり気になるよな。
まあ、元々、タイミングを見てみんなに話をするつもりだったから、話すこと自体は問題ないのだけど……
内容が内容だけに、周囲のことが気になってしまう。
軽く店内を見回した。
店は貸し切り状態で、俺達以外の客はいない。
俺達に気を効かせているらしく、店員は基本的に奥で待機している。
これならまあ、いいかな?
「実は……」
「実は?」
「次代の勇者にならないか? って誘われた」
「ふんふん、にゃるほど。勇者に……って、ええええええええええぇっ!!!?」
カナデが驚きの声をあげて……
「でも、断った」
「「「「ええええええええええぇっ!!!?」」」」
次いで、ニーナを除く残りのみんなが驚きの声をあげた。
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