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266話 次代

 サーリャさまによって王の私室へ案内された。


 この部屋は、王の完全なプライベートルームらしい。

 王がくつろぐことができる部屋であり……

 そして、他の誰にも聞かれたくない話をするには絶好の場所と言える。


「それでは、失礼いたします」


 俺を案内した後、サーリャさまは退室してしまう。

 俺と王のみが残されて……やや気まずい。

 というか、緊張する。


 この大陸……というか、この世界に人の国は一つしかない。

 ロールリーズ。

 それがこの国の名前であり、唯一の人の国だ。


 といっても、他の国が滅びたとか人類が追いつめられているとか、そういうわけじゃない。

 昔は無数の国が乱立していた。

 五つの大陸全てに国が存在していて、その数は十を越えたという。


 友好を結び、共に発展していった国もあれば……

 戦争を繰り返し、泥沼の争いを繰り広げた国もある。


 そんな世界の在り方が変わったきっかけは……魔王だ。


 どのようにして魔王が現れたのか?

 その目的はなんなのか?

 未だ解明されていないところはあるが……


 魔王が現れたことで世界は一変した。

 魔王の力はあまりに強大で……

 そして、その配下である魔族、魔物の脅威も捨ておけない。


 次々と国が滅びた。

 さらに、西大陸を完全に占拠されてしまい、北大陸が無法地帯となり……

 その数が半分になったところで、ようやく人類は悟った。

 身内で争っている場合ではない。

 力を合わせなければ滅びるだけだ……と。


 そして人類は一つとなり、魔王に立ち向かう。

 その後、争いが続いて、戦況は膠着状態に陥り……

 今に続く。


 そのようにして人は一つになった。

 すべての国が統合された。


 目の前に立つ王は、そんな国を背負う人だ。

 緊張しない方がおかしい。

 以前、二人で話したことがあるけど、でも、それを経験していても慣れることじゃないなあ……


「よくきてくれた。迷惑ではなかったか?」

「いえ、決してそのようなことは……」

「そんなに硬くならなくてもよい。今は非公式の場だ。もっとも……話の内容は重く、厳しいものとなるが」


 話の後半は聞きたくなかった……

 いったい、なんの話だろうか?


 まあ、なんとなく予想はついている。

 おそらくアリオスの……勇者絡みの話なんだろうな。


「まずは……詫びなければならないな。すまなかった」

「えっ!?」


 王が頭を下げた。

 前代未聞の事件だ。

 全てを束ねる王が、一冒険者に頭を下げるなんて……


「ど、どうしたんですか、いったい!? あ、頭を上げてくださいっ」

「アリオスがくだらぬことを企み、お主とその仲間を危険に晒してしまった。アリオスに自由を与えたのは儂の判断だ。見張りの騎士をつけていたが、まさかあのようなことをするなんて。人類の未来のために、どうにかして目を覚ましてほしいと願っていたのだが……いや、すまない。これは言い訳だな」

「……いえ。王の責任だなんて思っていませんから。あれはアリオスが悪いのであって、その他の人のせいではありませんから」

「……すまない。お主にそう言わせてしまっているな」

「そんなことは……」

「わかった。今回は、お主の好意に甘えさせてもらおう」


 本当に気にしてないんだけどな。

 魔王に対抗するため、アリオスにある程度の自由を与えていた。

 わからないでもない話だ。

 きちんと見張りの騎士をつけていたというし……

 後はもう、アリオスの責任でしかない。


「ただ、償いはさせてもらいたい。サーリャを助けた時のような褒美ではなくて、しっかりと形あるものを、詫びとして贈らせてほしい。このようなことで謝罪となるか、難しいだろうが……それでも最低限のことはしておきたいのだ。何を望む?」

「えっと……いきなり言われても」


 ぽんぽんと思いつかない。


「……また今度でいいですか? なにか思いついたら、その時に……ということで」

「わかった。お主がそう言うのならばそうしよう」

「話はこれで終わり……っていうわけじゃないですよね?」

「うむ。察しがいいな?」

「今の話だけなら、普通にみんなの前で話せば済むことですから。本題は……みんなの前で気軽に話せないようなこと。なるべく、秘密裏にしておきたいこと。そんなところですか?」

「本当に頭の回転が速いな……さすがだ」


 賢王という王にそう言われると、ちょっと照れてしまう。


「単刀直入に言おう……次代の勇者になってくれないか?」

「っ」


 まさか……そうくるとは。


 さすがにその話は予想外で、一瞬、混乱してしまう。


「俺が……勇者に?」

「アリオスの勇者の資格は剥奪した。あれだけのことをやらかしたのだ。それに、まだ調査中ではあるが、他にも色々と非道な行いが明らかになってきている。仲間に関しても同様だ。わしの判断が甘かった。魔王に対抗する力を持つからと様子を見ていたが……そのようなことはせずに、すぐに投獄すべきだった」

「アリオスは今どこに?」

「牢だ。仲間も同様に投獄している」

「その処分は?」

「死刑だな」


 王は迷うことなく即答した。

 あまりにも毅然とした態度に、こちらの方が驚いてしまう。


「死刑……ですか。なかなか厳しいですね」

「ヤツはそれだけのことをやらかした。調査の結果次第では、死刑すら生ぬるいと思うかもしれない」

「そうですか」


 悲しみを覚えるなんてことはない。

 アリオスは俺の仲間を傷つけた。

 許せることではない。


 ただ……

 同情はした。


 あんなだけど……

 それでも、一時はパーティーを組んでいた。

 仲間だった……からな。


「ただ、このことを公表する予定はない」

「と、いうと?」

「すでにアリオスの愚行は民が知ることとなり、その名声は地に落ちているが……それでも勇者を死刑にしたらどうなるか? お主ならわかるだろう」

「不安、動揺が広がりますね」


 唯一、魔王に対抗できる勇者を死刑にしたとなれば、大きな混乱が起きるだろう。

 魔王が覚醒したらどうするのか? と思う人がほとんどだろう。


 例えるなら、河川の補強工事を途中で放置するようなものだ。

 いつ大雨が降り、河川が決壊するかわからない。

 その不安を抱えながら生活するようなものなので、よくは思われないだろう。


「そのため、アリオスは病に伏せたことにする。頃合いを見て、病死と発表。その代わりに、次代の勇者が現れたことを発表する」

「なるほど……それなら、まあ」

「そして……その勇者をお主に務めてもらいたい。お主にはその力がある。また、勇者の名前にふさわしい勇気もある。頼まれてくれないか?」

「俺は……」

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― 新着の感想 ―
[一言] あれはアリオスが悪いのであって、その他の人のせいではありませんから 主人公のお人好しな態度、少し読んでいて気持ち悪かった。
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