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260話 快進撃

 まず最初に動いたのはカナデだ。


「いっくよーーーっ!!! 今まで好き勝手してくれたお礼、利子つけて返してあげるんだから! うにゃんっ」


 カナデは、雷撃を受け止めたダメージがまだ残っていた。

 ソラとルナに癒してもらったとはいえ、即座に完治というわけにはいかない。


 しかし、レインの心配をよそに、カナデは大活躍していた。


 四方八方から波のように押し寄せてくる騎士達の剣を、全てスレスレのところで避けた。

 顔を傾け、体を逸らし、這うようにしゃがみ……

 騎士達の嵐のような猛攻を完全に見切っていた。


「にゃあああああ……うにゃっ!!!」


 カウンターの一撃が炸裂した。

 騎士達が数人、まとめて吹き飛んだ。


 相手は王都の本部に所属している百戦錬磨の騎士だ。

 しかし、カナデにかかると赤子も同然だった。


 どれだけ鋭い斬撃を繰り出しても、カナデに当たることはない。

 そして……痛烈なカウンター。

 カナデの拳が鋼鉄の鎧を砕き、その体を紙のように吹き飛ばす。


 まるで嵐だ。


 一度飲み込まれたら、逃げることは叶わない。

 その力の前に抗うことはできず、ただただひれ伏すことしかできない。


「カナデ、張り切るのはいいが、手加減はしておけよ。その人達は、命令されているだけで罪はないんだからな」

「わかっているよー! でもでも、ちょっとくらい鬱憤晴らしに付き合ってもらってもいいよね!?」

「……ほどほどにな」


 レインが苦笑しながら返した。


 騎士達には災難だが……

 命令とはいえ、俺達に刃を向けたのだ。

 痛い目を見ることは諦めてもらおう……と。


 仲間を傷つけられた怒りもあり、今のレインは通常よりも冷たい思考をしていた。




――――――――――




「あたしの相手はあんたね?」

「くっ……!」


 タニアはミナと対峙していた。


 何度も雷撃を受けて、仲間をかばっていたため、タニアの怪我が一番ひどい。

 ソラとルナの魔法でも完全に治癒することができず、完治には数日、安静にしていないといけないだろう。


 しかし、そんなことは微塵も感じさせない力強さを見せていた。

 ミナを前に一歩も退くことはなくて、不敵に笑う。


 対するミナは冷や汗を流していた。

 以前ミナは、タニアと戦った時に痛い目に遭わされている。

 その時のことを思い返しているのかもしれない。


「以前やった時は、あたしに手も足も出なかったくせに……やるつもり?」

「っ……もちろんです。勇者パーティーの一員として、あなたのような存在を野放しにしておくわけにはいきません」

「勇者パーティー……ねぇ。あたしには、あんたらがそんなに大層な存在じゃないように見えるんだけど? 好き勝手してるおバカパーティーね」

「私達を愚弄するのですかっ?」

「あらあら。そこでムキになるっていうことは、ちょっとはバカしてる自覚あるのかしら? 自覚があるバカって、手に負えないわよねー」

「このっ……ホーリーアロー!」


 先にミナが切れて、魔法を放つ。


 タニアの力ならミナの力に介入して、魔法を打ち消すことができる。

 以前戦った時も、そうして力の差を見せつけた。


 しかし、今回はその手は使わない。


「ていっ」

「なっ……!?」


 タニアは蚊でも追い払うように手を振るい……

 それだけでミナの魔法を弾き飛ばした。


「わ、私の魔法がそんなにあっさりと……そんな……」

「さて……次はあたしの番ね? 言っておくけど、前のようにハッタリをかますと思わないことね? 今度はあたしも頭に来ているし……本気でいかせてもらうわよっ!」


 タニアは翼を広げて魔力を収束させた。

 膨大な量の魔力を感じて、ミナが小さく悲鳴をあげる。


 そうやってミナが怯える様子に、ニヤリと笑いながら……タニアが必殺のドラゴンブレスを放つ!


 ミナと……その他、数人の騎士を巻き込み……

 さらに遺跡の一部を倒壊させて、全てを薙ぎ払う。


「ふふん……ま、こんなところかしら?」




――――――――――




「アッガス! 時間を稼いでっ、あたしが一気に吹き飛ばしてやるわ!」

「ああ、わかった!」


 アッガスが前衛を務めて、リーンが後衛を務める。


 そんな二人が対峙するのは……


「ふはははっ、我らを相手にたった二人だけなのか? ふんっ、我らも甘くみられたものだな」

「色々とやってくれましたね……みんなを傷つけて、レインを悲しませて……許せません。泣いて泣いて泣いて……涙が枯れるくらいに反省させて、後悔させてやりますよ……うふっ、ふふふふふ……」

「お、おぅ……我が姉よ。ちょっと怖いぞ……?」


 ソラとルナのコンビがアッガスとリーンの前に立ちはだかる。

 どんな時でも、この二人は一緒らしい。


 とはいえ、不気味な笑い声をあげるソラに、ルナはやや引いていたが……


 ソラの怒りも無理はない。

 普段は冷静沈着ではあるが、感情を表に出さないだけで、仲間のことは大事に想っている。

 レインと同じくらいに想っている。


 そんな仲間が傷つけられた。

 理不尽な目に遭わされた。

 その首謀者の仲間と思わしき連中が目の前にいる。

 ソラの怒りは頂点を振り切り、未知の領域に突入していた。


 ルナは常々思っていることがある。

 ちょくちょく姉をからかっているものの……

 一線は踏み越えないように注意している。


 本気で怒った時のソラは……やばいのだ。


「ぬうううぅんっ!!!」

「グラビティウォール!」


 アッガスが突撃してきた。

 魔法使いタイプのソラとルナならば、守りに徹するよりは攻めた方がいいと判断したのだろう。

 ルナが魔法の障壁を作り出して、アッガスの一撃を受け止めた。


「アッガス、ソイツ、そのまま押さえておいて! レッドクリムゾンっ!」


 続けてリーンが魔法を放つ。

 アッガスはギリギリのところまでルナを押さえこんで……

 絶妙なタイミングで退いた。


 紅蓮の火球がソラとルナを包み込もうとするが……


「……なんですか、この児戯は?」

「へっ!?」


 ソラが無造作に火球に手を突っ込んだ。

 その手が炎に焼ける……ということはなく。

 逆に炎の方が霧散した。


 ソラは圧倒的な魔力でリーンの魔法に干渉。

 その場で構造式を組み替えて無力化した。

 以前、タニアがやったことと原理は同じだ。


 しかし、そんなことはできないリーンは、なにが起きたのかわからない様子で目を白黒させている。


「そ、そんなっ……なんであのデタラメ最強種みたいな真似ができるのよっ!? おかしいでしょっ、ありえないでしょっ」

「あなたはなにを勘違いしているのですか? ソラは精霊族ですよ? 魔法のエキスパートです。ソラから見れば、あなたの魔法なんて子供の火遊びそのものですよ」

「なっ、なっ……」

「いいですか? 本当の魔法というものを教えてあげます。その身をもって味わいなさい」

「や、やばいのだっ……!?」


 己を中心に、ソラは魔法陣を展開させた。

 それを見て、ルナは慌てて後方に回る。


 ルナは一目で理解した。

 ソラが使おうとしているものは、超級魔法だ。

 以前、タニアが使ったようなコケ脅しではなくて、マジものの一撃だ。

 しかも、ありったけの魔力を込めている。


 本気で怒ったソラは手がつけられない。

 そのことを知っているルナは、頭を抱えて身を低くした。


「愚かな行為、その身を持って反省しなさい……イクシオンブラストッ!!!」


 異界の幻獣を召喚して、極大の雷撃が放たれた。

 嵐のように雷が吹き荒れる。

 アッガスとリーンは紙のように吹き飛ばされた。

 ついでに、周囲に群がる騎士達も吹き飛ばされた。


 後に残るのは……晴れやかな顔をしたソラと、頭を低くして避難していたルナだった。


「ふぅ……ちょっとだけスッキリしましたね」


 にこりと、ソラが笑い……

 そんな姉の姿を見て、ルナはガクガクブルブルと戦慄するのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >本気で怒った時のソラは……やばいのだ。 そういやソラが手料理を作った時に止めなかったのも、それが理由かな?ルナは [一言] アッガスとリーンよ、ソラの手料理を食わなかっただけありが…
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