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259話 逆転

「な、なんだっ……!?」


 突如、四角錐の檻の中に光があふれた。


 俺も騎士達も……そしてアリオスにも想定外の出来事らしい。

 驚きの表情を浮かべて、皆一様に動きを止めている。


 すさまじい光があふれていて、世界を白く染めてしまうほどだ。

 目を開けていられない。


「くっ……!? みんな……!!!」


 何が起きているんだ?

 みんなは大丈夫なのか!?


 ほどなくして、少しずつ光が弱くなる。

 白い世界が色づいていく。

 やがて完全に光が収まる。


 何が起きたのか確認するために、その場にいた者全員が四角錐の檻へ視線をやる。

 すると……


「……んっ!」


 大人の姿になったニーナ? らしき姿があった。


 光を束ねたような金色に輝く髪。

 そこから飛び出した狐耳。


 その体は大きく育ち、少女から大人のものに変わっている。

 見た目の年齢は、ほぼほぼカナデやタニアと変わらない。

 いや?

 ひょっとしたら、二人よりも上かもしれない。

 大人だけが持つ、独特の雰囲気があった。


 ニーナであることを示すように、髪飾りと服はそのままだった。

 ただ、三本だった尻尾は九本に増えていた。

 もふもふ感が大きい尻尾だったが、今はスマートに、するりと伸びている。


「えっ!!!?」


 一番驚いたのは、たぶん、俺とその仲間達だ。


 あの小さかったニーナが……大人に変身した!?

 俺と仲間達は、自分が置かれている状況を忘れて唖然としてしまう。


 その中で最初に動いたのはニーナだった。


「んっ!」


 宙を薙ぐように、長く伸びた手を振るう。

 その動きに合わせるようにして、亜空間への扉が繋がる。


 その数は全部で六つ。

 自分自身を含めて、ニーナはみんなと共に亜空間へ飛び込んだ。


 それを見たアリオスが驚愕に顔をひきつらせる。


「なっ……!? 馬鹿なっ、どうして力が使える!? それに、あのガキの変貌はいったい……!?」


 驚くアリオスをよそに、俺の背後で亜空間が開いた。


 カナデ、タニア、ソラ、ルナ、ティナ。

 そして、ニーナ。


 大事な仲間達が姿を見せた。

 みんな、突然のことに頭が追いついていない様子で、目を白黒させていた。


「ん……みんな、よかった。ちょっと、待っていて……ね?」

「にゃ、にゃん……? ニーナ……なんだよね?」

「うん、わたし……だよ」


 ニーナはにこりと笑い……そして、凛とした表情を作る。


「んーーー、んぅうううーーー……んうっ!」


 ニーナが亜空間に片手を突っ込み……

 そして引き抜くと、魔力錠のものと思わしき鍵が握られていた。


 鍵を持っていたとされる騎士は慌てて自分の懐を探っている。


「はい。鍵……だよ」

「あ、ありがとう……」


 カナデはぽかーんとしながらも、鍵を受け取り、魔力錠を外した。

 そのままタニア、ソラ、ルナ、ティナも自由にする。


「ニーナ、その姿はいったい……? それに、その力は……」


 ニーナの力では、複数人を同時に転移させるなんてこと、不可能だったはずだ。

 それに、こんなに広く、たくさんの人がいる中から、魔力錠の鍵をピンポイントで……しかも短時間で探り当てることも……それもまた、不可能だったはずだ。

 それなのに……どうして?


「ん……よく、わからないの。ただ、みんなを助けたくて……力が、ほしいな、って思って……強く願ったら、こうなっていたの」

「ふむ……もしかして、ニーナは『覚醒』したのかもしれないのだ」


 カナデとタニアを魔法で治療しながら、ルナが言う。


「覚醒……?」

「我ら最強種の間で、稀に見られる現象なのだ。色々な過程をすっ飛ばして、進化することができる。成熟した時と同様の力を得ることができる。そういう『力』なのだ」

「それは初耳だな……俺も知らなかった」

「眉唾ものの伝説の話だから、仕方ないのだ。それにしても、まさか、ニーナが本当に覚醒してしまうなんて……おわっ!?」


 俺に抱きしめられて、ルナがひっくり返った声をあげた。

 ルナだけじゃない。

 カナデ、タニア、ソラ、ニーナ、ティナ……みんなを抱きしめる。


「よかった……本当によかった……」

「にゃー……レイン」

「こうして、みんなが無事でいてくれて……また会えることができて……本当によかった……!」

「もう……レインは泣き虫ね。男は簡単に涙を流さないものよ?」

「タニアよ、それは仕方ないのだ。だって……我らもすごくうれしいのだ。ホント、泣いてしまうくらいうれしいのだ……ぐすっ」

「どうやら、ルナも泣き虫みたいですね。それはそうと……心配をかけてしまい、すみませんでした。でも、ソラはまたレインと会えると信じていましたよ」


 俺も信じていた。

 諦めるなんてことは考えたことはなくて……

 絶対に助けると誓っていた。


 それでも。


 時折、恐怖に心が飲まれてしまいそうになった。

 もしも、このままみんなと会えなかったら……?

 そう思うと、狂ってしまいそうになった。


 だから、今……

 みんなと無事に再会することができて……うれしいのだ。


「レインの旦那。もう大丈夫やで。よしよし……一人でがんばったんやな。辛かったんやな。でも、もう平気やから……大丈夫やで。大丈夫……よしよし、よしよし」


 ティナが頭を撫でてくれる。

 すごく安らいだ。

 母に抱かれているみたいで……亡くなった母さんのことを思い出した。


 このまま温もりに浸りたいところだけど……

 そういうわけにはいかない。


「くそっ……殺せ! 全員でかかれっ、そいつら全員、皆殺しにしろぉっ!!!」


 我に返ったアリオスが命令を飛ばした。

 その声に反応して、騎士達も我に返り、抜剣して襲いかかってきた。


「……悪いが、そうはさせないぜ」


 第三者の声が割り込んだ。

 それと同時に、何かが飛翔してアリオスに食らいつこうとした。

 アリオスは何かを剣で叩き落として、彼方を睨みつける。


「誰だっ!? この僕の邪魔をするヤツは!?」

「こういう時、お前に名乗る名前はねえ、って言うんだっけか?」

「格好つけてないで、きちんとしてくれるかしら?」


 そこにいたのは……


「アクス!? それに、セルも!?」


 アクスとセルの姿があった。


「よう、何やらすごいことになってるな」

「加勢にきたわ」

「どうして、二人共……」

「ったく。こんなことをするつもりなら、あの時、ちゃんと言っておけよ。思わず参戦しそこねるところだったじゃねえか」

「あなたのことだから、私達を巻き込みたくないと思ったのでしょうね。でも、それはあまりにも水臭いんじゃない?」

「……ありがとう」


 二人の思いを感じて、ついつい泣いてしまいそうになる。

 それくらいにうれしくて……

 そして、頼もしかった。


「くそっ、なんで冒険者風情が僕に逆らう!? 僕は勇者だ! 尊敬されるべき存在なんだ! 貴様らとは違うんだ!!!」

「はっ、てめえなんか尊敬できるわけねえだろ。鏡見て言え」

「ここのことは、すでにあの方に伝えているわ。もうおしまいよ」

「ふざけるなっ、虫けらごときに邪魔されてたまるか! やれっ、こいつらを殺せ!!!」


 敵は数え切れないほどに多い。

 彼らは命令に従っているだけなので、殺すわけにはいかない。

 さらに、アリオスとその仲間達がいる。


 絶体絶命の状況は変わらない。

 しかし……

 もう負ける気がしない。

 俺達が地面に倒れる未来は、まるで想像できない。

 恐怖は消えて、不安は霧散して……希望だけが残る。


「さあ、みんな……いくぞっ!!!」

「「「「おぉっ!!!」」」」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ニーナが覚醒した回ですね。そうかここでか・・・。
[気になる点] そう言えば、アクスはこの時のニーナを見てどんな反応をしてたんでしょう? 状況が状況ですけど、アクスならやはり反応してそうな気がしたりしなかったり……
2022/06/30 14:31 退会済み
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