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257話 絶体絶命

「むっ?」

「貴様!」


 物陰から飛び出すと、すぐに数人の騎士に気づかれた。

 騎士達は抜剣して突撃してくるが……


「どけっ! ファイアーボール・マルチショット!」


 火球を放ち、騎士の足元で着弾させた。

 騎士達が爆炎に飲み込まれる。


 威力は絞っているから、大した怪我はしていないだろう。

 ただ、突然、炎に飲み込まれるという恐怖を与えることで、足を止めることに成功した。


「みんなっ!!!」


 放電を始めた柱は青く輝き始めた。

 それに呼応するように、四角錐の透明な壁ができあがる。


 透明な壁はみんなを覆うように形成されて……

 その頂点に、四つの柱に生まれた雷撃が収束されていく。


 嫌な予感しかしない。


 俺はさらに速度を上げるが……


「やあ、レイン!」

「くっ!?」


 アリオスが斬りかかってきた。

 他の連中とは違い、速度が桁違いだ。

 避けることはできず、カムイを抜いて受け止める。


「どけっ、アリオス!」

「はははっ、何を焦っているんだ? そんなにあの連中が大事なのか?」

「当たり前だ!」

「くっ、くははは! あはははっ!!! そうだ、その顔だ。その顔が見たかったんだよっ。僕を散々コケにしてきて……その報い、今受けてもらおうか!」

「アリオスのくだらない妄執に付き合っていられるか! そこをどけっ!」

「イヤだね。それよりも、楽しいショーの始まりだ。ほら、レインも観覧するといい」

「なに……?」


 アリオスがパチンと指を鳴らす。

 その動きと連動しているように、四つの柱が光る。


 光が四角錐の壁の頂点に収束されて……

 直後。

 雷撃となってみんなに降り注いだ!


「あああああぁっ!!!?」


 身動きできない中で、タニアだけが翼を拡げることができた。

 みんなをかばうように翼を伸ばして……


 その背中に雷撃が直撃した。

 刃が荒れ狂っているかのように、タニアの背と翼を傷つけた。


「くぅっ……」


 雷撃が収まると、ボロボロになったタニアの姿が見えた。

 みんなが悲鳴をあげる。


「タニア! 大丈夫っ!? ねえっ、大丈夫なのっ!?」

「う、うるさいわよ……あたしは竜族。カナデみたいな猫霊族とは違うの……これくらい……あぅっ」

「無理をしないでくださいっ! 今のソラ達は魔力錠のせいで能力が低下しているんですよ!?」

「そうなのだ! あんな攻撃を受けて、無傷でいるなんて無理なのだ!」

「平気ったら……平気、なんだからっ……!」


 透明な壁越しに、タニアがこちらを見た。


「レインっ、あたしたちは大丈夫だから……だから、その勇者をやっつけちゃいなさい!」

「タニア……くっ!」


 体のギアを数段引き上げる。

 全力でカムイを振るい、アリオスと切り結ぶ。


「はははっ、元気になったじゃないか」

「黙れっ!!!」

「でも、前よりも動きが雑になっているぞ? よほど、あいつらが気になるみたいだな」

「黙れと言った!!!」

「こうしたらどうなると思う?」

「やめ……」


 アリオスが再び指を鳴らした。


 雷撃が再び降り注ぎ……


「うにゃあああああっ!!!」


 囚われた中で、カナデは無理矢理体を動かして、降り注ぐ雷撃を蹴り上げた。

 いくら猫霊族でも、魔法を無効化することなんてできない。

 ましてや、今は能力を制限されているのだ。


「あうううううぅっ!!!?」


 雷撃がカナデの体を走り回る。

 剣で斬りつけられているような痛みを覚えているだろう。

 カナデの顔が歪み、悲鳴がこぼれた。


 タニアが大きな声をあげる。


「カナデっ! あんた、なんて無茶をするのよ!?」

「あう……た、タニアに言われたくないよ」

「あたしはいいの! 力を抑えられていたとしても、竜族だから、それなりに魔法に対する耐性があるんだから。でも、猫霊族のあんたは……!」

「うにゃあ……すごく痛いね……」

「なら、どうして……!?」

「タニアばかりに痛い思いをさせられないよ」

「……カナデ……」

「私達は仲間なんだから……んっ……どんな時も一緒だよ」

「くう……!」


 ボロボロになりながらも奮起するカナデにあてられたのか、タニアが錠を破ろうともがいた。

 しかし、その体と魔力を抑えつける錠から逃れることはできない。


「すばらしい友情だ、感動してしまうよ。でも、あと何発耐えられるかな?」

「アリオス、お前っ……!!!」

「はははっ、また動きが雑になっているぞ、レイン。そんなんで僕を倒せるとでも?」


 みんなを痛めつけているのはアリオスの作戦だ。

 俺を激高させて、冷静な判断力を失わせる……というものだろう。


 そのことはわかっている。

 わかっているのだけど……


「くそっ!!!」


 頭に血が上るのを止められない。

 大事な仲間が傷つけられて、ひどい目に遭わされて……冷静でいることなんてできない!


「重力操作っ! 物質創造っ!」


 早く……早くアリオスを倒さないと!

 そのために、俺の持てる能力を全て使う。


 アリオスにかかる重力を倍増させた。

 その上で、アリオスを囲うように土の壁を作り、動きを封じる。


 この状態で魔法を叩き込めば……!


「今のキミは、とことん頭に血が上っているみたいだな? そんなにあの連中が大事なのか?」

「当たり前だ! お前はここで寝てろっ、もうふざけた真似はさせない!」

「やれやれ……レイン。だからキミはダメなんだよ」

「っ!?」


 瞬間、真横から殺気がぶつけられた。

 反射的にカムイを盾のように構えた。


 直後、馬車と激突したような衝撃が走る。

 耐えることができず吹き飛ばされてしまう。


「イグニートランス!」

「ホーリーアロー!」


 赤と白の双撃が飛んできた。

 体勢を崩していて避けることも防ぐこともできない。


「ぐあっ!?」


 魔法が直撃して、全身に激痛が走る。


「キミは仲間仲間ってやかましいくらいに叫んでいるが……僕にも仲間がいるんだよ。そのことを忘れたのかい?」


 アッガス、リーン、ミナの三人がアリオスの後ろに控えていた。


 くそっ……三人の存在を忘れるなんて……

 いつもならそんなミスはしないのに!


 俺が倒れたことで能力も解除されて、アリオスは土の壁から抜け出して自由を取り戻した。


「はははっ、無様だなレイン。キミはそうやって地面に這いつくばっているのが似合っているよ」

「アリオス……貴様……!」

「たまらないな、キミのその顔は。まだまだ時間はある。さあ、もっと僕を楽しませてみせろ」


 アリオスが手を上げて周囲に合図を送る。

 騎士達が一斉に殺到してきた。


「くっ……!?」


 痛みが走る体を無理矢理動かして、騎士達をさばく。

 剣を受け止め、あるいは避けて……

 カウンターを叩き込み、戦闘力を奪う。


 相手はアリオスの命令に従っているだけだ。

 騎士達が悪いわけじゃない。

 殺すことなんてできるわけがなくて、必然と手加減を求められてしまう。


 そんな俺を見て、アリオスが嘲笑う。


「おいおい。ここまで追い詰められておいて相手の心配をしているのかい? ホント……ムカつくヤツだよ、お前は。その偽善者っぷりを見ているとヘドが出る。おいっ、徹底的にそいつを追い詰めろ!」


 アリオスとしては、俺が騎士達を手にかけるところが見たいのだろう。

 そうすれば本格的に反逆罪が適用されるし……

 なによりも、そうすることが楽しいのだろう。


 でも……そんな期待には応えてやらない。


 みんなを助けるためとはいえ、まったく関係ない命を奪うなんて……

 そんなことをしたら、みんなの隣に立つ資格がなくなってしまう。

 身を呈して、自分を犠牲にして仲間を守るカナデやタニアに顔向けができない。


 絶対にアリオスが期待することはしてやらない。


 しかし……


 このままじゃジリ貧だ。

 いずれ追い詰められて、決定的な一撃を食らい……そこで終わりだ。

 そうなる前に、どうにかしてアリオスを倒すか、あるいは、みんなを助けないといけないが……

 くそっ、どうすればいいんだ!


 事態を打開する方法は思い浮かばず……

 逃げ場のない袋小路に追い詰められていく。

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― 新着の感想 ―
[一言]兵士を殺さないか…相変わらず甘いな。でもそこがレインの良い所なんだろうな。
[気になる点] 正直に言って、気分が悪くなった。
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