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253話 囚われの……その2

「うにゃあああぁ……!」


 カナデは自分を閉じ込める牢を睨みつけていた。

 視線に力があれば、牢がへしゃげていただろう。

 それくらいに睨みつけていた。


「にゃんっ!!!」


 ガァンッ! と牢を蹴りつけた。


「にゃっ、にゃにゃにゃ!?」


 ビリビリと足が痺れた。

 その痺れが尻尾にまで伝わり、毛がピーンとなった。


「はぁ……ダメかぁ」


 牢に入れられて、そろそろ10日が経つだろうか?

 最初の頃に軽い聴取を受けただけで、後は放置だ。

 一日に三回、食事が差し入れるだけで、他に誰もやってこない。


 いったい何がしたいのだろうか?

 カナデは考えた。


 考えたけれど……


「うー……とにかく出してよぉ!」


 考えても答えは出ないので、悪あがきをすることにした。

 牢をガシャガシャと揺さぶる。


 本当にただの悪あがきだ。

 なんの意味もないだろう。


 それでも……きっと、同じように囚われた仲間達もあがいているはずだ。

 ただおとなしくじっとして、諦めているなんてことはしてないはずだ。

 だから自分もがんばらないといけない。

 最後まで諦めることなく、抗い続ける。

 そして、レインと再会するのだ。


 カナデが強く決意した時……

 牢に続く扉が開いた。


 カナデは小首を傾げた。

 食事の時間はまだ早い。

 正確無比な腹時計が、まだ食事の時間ではないと告げている。


 ならば、いったい誰なのか?


「ひさしぶりだね」

「にゃっ!? あなた……勇者!!!」


 姿を見せたのはアリオスだった。


「よくも顔を見せることができたねっ!!!」


 カナデの全身の毛が逆立つ。

 アリオスに飛びかかろうとするが……牢に阻まれてしまう。

 それでも牢をガンガンと叩いて、射るように睨みつける。


「ふんっ。元気だな? 牢に入れられてしばらく経つというのに、まだこれだけ動くことができるのか。魔力錠をつけられているのに……さすが猫霊族というところか。体力だけはトップクラスだな。他の連中とは違う」

「……どういうこと?」


 他の連中と聞いて、カナデの声のトーンが落ちた。


「わかるだろう? 捕らえられているのは君だけじゃない。竜族も精霊族も神族も……あと、あのおかしな幽霊も。それと……レインも捕らえている」


 アリオスはレインが脱走したことを隠し、ウソをつくが……

 今のカナデは、そのウソを見抜くことはできなかった。

 アリオスの言葉が気になって気になって仕方なかった。


「どういうこと、って聞いているの!? みんなはどうしているの!?」

「ふんっ、やかましいな。まあ、僕は優しいからな。特別に答えてやるよ」


 アリオスはニヤリと笑い、なぶるように粘着質な声で言う。


「竜族の女は、まだ元気にしているよ。猫霊族と同じく、体力はあるからな。だが……他の連中は微妙だな。精霊族は体力がないし、神族はまだガキだ。そして、あの幽霊は、身体能力はただの人間と同じだ。最初はやかましくしていたが、今はすっかりおとなしくなったよ。そのうち衰弱死するかもね」

「あなたという人は……!!!!!」


 カナデが拳を繰り出した。

 それは牢に阻まれるが……

 ガシャンッ!!! と大きな音を立てて、さらに牢全体を揺らした。

 カナデの怒りを表しているかのようだった。


「みんなに何かあったら、絶対に許さないんだからっ!!!」

「吠えるなよ。なにもできないくせに」

「くっ……!」


 カナデは悔しそうに唇を噛んだ。

 悔しいが、アリオスの言う通りだ。

 魔力錠をつけられている以上、どうすることもできない。


 それでも、希望は捨てていない。


「レインが……」

「うん?」

「レインがなんとかしてくれるから!」

「やれやれ……人の話を聞いていないのかい? レインも捕まっているんだよ?」

「それでも、絶対になんとかしてくれる! 私達を助けてくれる! レインは……そういう人だもんっ!」

「……っ……」


 カナデがレインに向ける絶対的な信頼を見せつけられて、わずかにアリオスがたじろいだ。

 なぜ、たじろいだのか?

 その理由をアリオスは自覚できない。

 自分達のパーティーにない絆を見せつけられて、わずかながらでもうらやましいなどと思ったなんて理由にたどり着くことはできない。


「まあいい。今日は、ちょっとしたことを教えてやろうと思ってね」

「……なに?」

「君達の処刑が決まったよ」

「えっ!?」

「君達は国家に仇なす存在として、危険視された。そして、この僕が直々に手を下すことになった」

「なんでそんなことになるの!? 私達、何もしてないじゃない! レインだって、何もしてないよ! というか、人のためになることしかしてないのに……!」

「……レインは目障りなんだよ」


 アリオスはひどく暗い表情をして、冷たい声で言う。


「たかがビーストテイマーごときが勇者である僕に逆らい、とんでもない屈辱を与えた。それだけじゃない。ヤツが僕以上に活躍して、勇者という立場を脅かすなんて……これは許されることじゃない。100回殺しても殺し足りないっ……足りないんだよ!!!」

「あ、あなたは……」

「でもさあ……残念なことに、レインの命は一つしかないだろう? 100回殺したくても、1回きりで終わってしまうだろう? なら、殺す前に、とことん後悔させてやらないとな。そのために、お前達を利用することにしたんだ。あのバカは仲間仲間って、やたらと連呼しているからな。そんなレインの前でお前達を殺したら……はっ、ははは! やばい、すごく楽しみになってきたよ。今から笑いが抑えられない!!!」

「狂ってる……」


 アリオスの奥底に秘められていたレインに対する嫉妬と憎悪を目の当たりにして、カナデは恐怖さえ覚えた。

 自然と体が震えてしまう。


 時に、狂気は人の感情を侵食する。

 恐怖に囚われてしまったカナデは、尻尾と耳を垂れ下げてしまう。


 そっと目を閉じて……


「……レイン……」


 大好きな人の無事を祈った。




――――――――――




「ごきげんよう」


 涼やかな声でニーナは目を覚ました。

 固いベッドだけど、疲労が溜まっているせいか、ぐっすりと寝ていたらしい。


 ニーナは体を起こそうとして……目眩を覚えてふらついた。

 そのままベッドから転げ落ちてしまう。


「ニーナ!?」


 その音でティナが起きて、大きな声をあげた。

 なんとか手を貸したいけれど、鳥かごにとらわれている上に、魔力を封じられている。

 なにもできないことをとても悔しく思う。


「あら、大丈夫ですか?」

「え……?」


 牢の扉が開いて、ニーナが抱き起こされた。

 ニーナを抱き起こした人物は……モニカだった。


「うーん……怪我はないみたいですね。病気にかかっている感じもしない。となると、単純に体力が落ちているんでしょう。食事、ちゃんと食べてますか?」

「あんたなあ……! そんなことやなくて、牢屋に子供が閉じ込められればどうなるか、普通わかるやろ!?」


 ティナが怒りに吠えるが、モニカは涼しい顔をしたままだ。


「あら。それもそうですね。すみません。とはいえ、さすがにお二人を勝手に逃がすわけにはいかないので。ですが……これくらいはしてあげますね。ふふっ」

「あう……?」


 モニカがニーナの首にかけられた魔力錠に触れた。

 その瞬間、カチリと鍵の外れる音がした。


「えっ……?」


 魔力錠はまだ首についたままだ。

 しかし、鍵が外れているので、あとはつなぎ目を軽くひねるだけで取ることができる。


「はい。これでいつでも魔力錠を取ることができますよ。あっ、ただ、タイミングは考えた方がいいですよ? すぐに逃げ出してもいいですが、ここぞという時まで秘密にしておくというのもアリですね。見た目では鍵が外れているかなんて判断できませんし、誰も鍵が外れているなんて思わないから確認もしないでしょうね」

「どう……して?」


 ニーナが問いかける。

 それを受けたモニカは、うっすらと笑う。


「成り行きを見守るだけのつもりだったんですけどね。ですが、どうもアリオスさまは勝手がすぎるというか……抜け道がない状態で相手を追い詰めれば、手痛い逆襲を受けてしまうものなのですが、それがわかっていないようで……なので、アリオスさまが不利な状況に陥るのが予想できたので、少しだけレインさん側の味方をすることにしました」

「……わからんな。あんた、勇者の味方なんやろ? 勇者が不利になるっていうなら、ウチらに味方してどうするねん? 余計に不利になるやないか?」

「その場合も、私達の望みは叶いますので」

「んぅー?」

「話はここまでです。必要以上の会話をするつもりはありませんので。では、ごきげん……ああ、そうそう。忘れるところでした。明日、あなた達の処刑が行われることになりました」

「なんやて!?」

「どうするか。それはあなた達にお任せしますが……お嬢ちゃんの力があれば、他の方を助けることができるかもしれませんね」

「わたし、の……」

「ただ、くれぐれもタイミングは慎重に。せっかく、私がここまでしたのですから、それを台無しにするような無謀な突撃はしないでくださいね? では……今度こそ、ごきげんよう」


 牢を閉めて鍵をかけて……

 モニカは優雅に一礼をして立ち去った。


 残された二人は、今後の判断に迷う。

 なぜかわからないが、魔力錠を外してくれた。

 アリオスが不利になるであろう情報も教えてくれた。


 普通に考えれば罠かもしれないが……


「ニーナ……どうしたらええと思う?」

「ん……みんなを、たすけたい!」


 罠だろうと何があろうと構わない。

 全てを蹴飛ばして、みんなを助けて……

 そして、レインと再会するのだ。


 ニーナとティナは固い決意を瞳に宿して、その時に備えて体力を温存することにした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アリオスとはやはり闘う運命になるのか・・・。
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