表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

252/1169

252話 罠だとしても

 配られていた号外に書かれている内容をまとめると、以下の通りになる。


 幾多の最強種が王都に潜伏して、テロを計画していたことが判明。

 そのことを突き止めた勇者アリオスは、最強種達を捕縛した。

 最強種達は魔力錠で力を押さえているものの、いつまでも放置することはできない。

 相手はテロを企てた極悪人。

 最強種は国家に所属していないものの、その罪は大きく、十分に裁きの対象になると判断。


 結果……


 翌日、最強種達の処刑を執行する。

 執行の場は、万が一の事態を想定して、王都の外にある遺跡……『大地の楔』で行われることに。

 当然ながら、当日は関係者以外の立ち入りは禁止。

 遺跡は厳重な警備が敷かれることになる。


 ……そんなことが書かれていた。


 隣から覗き込んでいたサーリャさまが、苦い顔をする。


「これは……罠、ですよね?」

「ええ……そうでしょうね」


 たぶん、アリオスがしかけたものだろうな。

 この二日の間に、魔道具がすり替えられたことに気がついたのだろう。


 魔道具には俺が冒険者を殺害した映像が収められているが……

 それが偽りのものであると判明すれば、今度はアリオスの立場が悪くなる。

 あるいは、立場が悪くなるくらいでは済まないかもしれない。

 それだけの重要な真実が収められているのかもしれない。


 それを奪われたアリオスは焦り……

 しかし、王都に潜伏している俺を、魔道具の秘密を探り出すまでに見つけることは難しい。


 ならば、俺の方から来てもらおうと思ったのだろう。

 それで、みんなを人質にするようなことを……!


「くそっ!」


 制御しがたい怒りが湧き上がり、思わず声を荒くしてしまう。

 発作的にイスをけとばしたくなるが、なんとかそれは我慢した。


 そんなことをしたら、サーリャさまを怯えさせてしまうし……

 感情に任せて暴れても何も意味はない。


「レインさん」


 そっと、サーリャさまが俺の手を握る。


「サーリャさま……?」

「このようなこと、私が言っても意味はないと思いますが……それでも言わせてください。落ち着いてください」

「……」

「ここで熱くなり、感情に身を任せてはみなさんを助けることができなくなります。それだけはダメです。だから……難しいことかもしれませんが、焦りを覚えるかもしれませんが……どうか、レインさんらしく」

「俺らしく……」


 サーリャさまと繋いだ手から、彼女の温度が流れ込んでくるみたいだった。

 温もりに満たされて……

 自然と穏やかな気持ちになる。


 ふう……と、小さな吐息を一つこぼした。

 それから笑う。


「ありがとうございます、サーリャさま。おかげで、自分を取り戻すことができました」

「レインさん……よかったです。私でも、少しはお役に立つことができましたか?」

「サーリャさまは、謙遜家なんですね。何度も助けられていますし、今も助けられたし……すごく助けられていますよ。ありがとうございます」

「よかった。レインさんの力になることができて」


 花が咲いたように、サーリャさまがにっこりと笑う。

 その笑顔はとても綺麗だ。

 再び心が落ち着くのを感じる。


「それにしても……アリオスめ。こんなことをするなんて……うん?」


 ふと、疑問に思う。


 こんな大掛かりなことをしたら、普通、周囲に話が広がるよな?

 あの王が、こんなふざけたことを許可するとは思えないんだけど……


 その疑問をサーリャさまにぶつけてみると、難しい顔をされてしまう。


「それが……父は今、公務で王都を離れているらしく……」

「え? 俺が言うのもなんですけど、サーリャさまが行方不明なのに公務を優先しているんですか?」

「まあ、そういう父ですから」

「なるほど」


 問答無用の説得力があった。

 数回しか顔を会わせていないけど、すごく合理的な人に見えたからな。

 娘のことは気になるけれど、それで公務を曲げるようなことはしないのだろう。


「これからについてですが……私は、城へ戻ろうと思います」


 サーリャさまが強い決意を瞳に宿して、そう言った。


「アリオスさまは勇者で、大きな影響力と力を持っていますが……だからといって、このようなことを許してはいけません。私が城へ赴いて上の者と話をして、このような愚行を止めてみせます」

「いえ……その前に、魔道具の解析を進めてくれませんか?」


 サーリャさまの考えに異を唱えた。

 彼女は小首を傾げる。


「魔道具の解析を優先させるのですか?」

「これだけの大掛かりなことをしているとなると、アリオスが各地に根回しをしている可能性が高い。終わった後にどうなるか、そのことを考えていないのはアリオスらしいとも言えるが……とにかく、サーリャさまの言葉とアリオスの言葉、どちらを信じるという時になった場合……」

「私の言葉がウソと判断されてしまう場合もある……ということですね?」

「はい。その可能性は否定できません」

「だとしたら、私が城へ赴いても……」

「いえ、こちらを信じてもらうための方法があります」

「それは、どうやって……あっ、魔道具を解析して証拠を用意するんですね」

「正解です」


 さすがサーリャさまだ。

 すぐにこちらの考えを察してくれる。


「アリオスが何かしら企んでいるという証拠を用意できれば、こちらの話に耳を傾けてくれると思うんです。アリオスの言葉よりも、サーリャさまの言葉を信じてくれるはず。ふざけた茶番も止められるかもしれない」

「必要な証拠は……この魔道具の中ですね」


 テーブルに上に置かれた魔道具を見る。


「サーリャさま。あとどれくらいで解析が終わりますか?」

「それは……」


 難しい顔になる。


「思っていた以上に複雑で……すみません。どれだけ急いだとしても、あと半日は……明日までかかってしまうと思います」

「今は夜だから……当日の朝か」


 それから城へ向かい、証拠を示して説得をして、バカなことをやめさせて……

 ダメだ、時間がかかりすぎる。

 こちらの動きを察して、アリオスが処刑の時間を早める可能性がある。


 今日中に、というのならまだなんとかなるかもしれないが……

 解析が明日までかかるとなると、どんな展開になるか確証が持てない。


 どうしたらいい?

 どうしたらみんなを助けることができる?

 ただただ、そのことだけを考えて……とある答えにたどり着く。


「……すみませんが、サーリャさまはこのまま解析をしてもらっていいですか? それが終わったら城へ行き、話をしてください」

「え? でも、それでは……」

「俺は別行動をします」

「もしかして……」

「俺は……みんなを助けに行きます」

「そんなっ、危険です! これはどう考えても罠です! それなのに、のこのこと顔を出すなんて……」

「わかっています。でも、罠だろうとみんなを助けるためならば、飛び込んでみせます」


 罠がしかけられていたとしても。

 どんなことが起きたとしても。


 俺には仲間を見捨てるなんてことはできない。

 例え1%でも助けられる可能性があるのならば、それに賭けるだけだ。


 俺はアリオスとは違う。

 仲間を見捨てることなんてしない。

 絶対に俺の大事な仲間を助けてみせる!


「レインさん……わかりました。私はもう何も言いません。もう……こういう時は、自分が女であることがもどかしいですね。どれだけの言葉を重ねても、固い決意を宿した男性に言葉を届ける術はないのですから」

「すみません……色々としてくれて、心配をしてもらっているのに……」

「いえ。こういう展開にこそなりましたが、これはこれで、レインさんらしいのかもしれませんね。短い付き合いですが、レインさんのことが少しずつわかってきたような気がしました」

「はは、ありがとうございます」


 今この時だけは……

 不敬かもしれないが、サーリャさまのことを一人の友人のように思えた。


「これから、俺は明日の準備をします。できる限りの手は打っておくつもりです」

「そのことなのですが……こちらを」


 サーリャさまは自分が身につけている首飾りを外して、俺の手首に巻いた。


「こちら、ちょっとした魔道具になっていまして……今、登録者情報を切り替えてレインさんを所有者にしたので、魔力を込めて念じることで発動することができます」

「効果は?」


 サーリャさまから魔道具の効果を聞いて……思わず目を大きくする。


「そんな魔道具を持っていたんですね……」

「私、継承権三位とはいえ、一応、王女なので。もしかしたら、非常時に父に代わり、多くの民に声を届ける時があるかもしれません。保険として、常備しているのです。これは兄さまも姉さまも、同じものを持っていますよ」

「なるほど……さすが王族」


 サーリャさまに託された魔道具は、うまくいけば俺とアリオスの立場を一気に逆転することができそうだ。

 そんな魔道具をくれたサーリャさまに、改めて感謝する。


 さあ……これからが勝負だ。

 絶対にみんなを助けてみせる!

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『最強だけどバズりたくない陰キャダンジョン配信者と、放っておけないアイドル配信者』

――人見知りで陰キャのダンジョン配信者の女の子。
でも実は、敵を瞬殺できる最強!

そんな主人公のところに陽キャのアイドル配信者が現れて・・・?

https://https://ncode.syosetu.com/n7272lv/
― 新着の感想 ―
[一言] サーリャさまは人間枠ですか?いい感じじゃないかい?
[良い点] >私、継承権三位とはいえ、一応、王女なので。 ここですが、ひょっとして伏線になっているかも…? [気になる点] 第三王女はサーリャさま。 後に、第一王子と第一王女は登場します。 また、やは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ