246話 囚われの……
「うにゃー……にゃんっ!!!」
カナデは大きく息を吸い……
一気に吐き出すと同時に、気合を入れて牢を蹴りつけた。
しかし、牢はびくともしない。
ガシャンと大きな音がしただけだ。
代わりに、じーんとカナデの足が痺れた。
「あわわわっ……し、痺れるぅ」
尻尾の先までピクピクと震えて……
カナデは足を抑えた。
それから牢に備え付けられているボロボロのベッドに座り、汚れた天井を見上げた。
深いため息を一つ。
「はあ……脱出は難しそうかなあ。コレさえなければ、簡単に脱出できるのに」
カナデは自分の首と両手首につけられた錠を恨めしそうに見た。
この魔力錠のせいで、本来の力を発揮することができないでいる。
こんなものがなければ、牢なんて簡単に蹴り破ることができるのに。
「レイン、大丈夫かな……」
――――――――――
「あーもうっ、こんなところにいる場合じゃないのに!」
タニアは一人、牢の中で大きな声をあげた。
忌々しい牢を睨みつけるものの、それで鍵が開くわけではない。
苛立ちだけが増していく。
もしも魔力錠をつけられていなければ、今すぐにドラゴン形態にして暴れまわりたい。
そんな過激なことを考えるくらいに、タニアはストレスが溜まっていた。
「レインも心配だけど……他のみんなは大丈夫かしら?」
カナデのことを考える。
野生児の見本のような存在なので問題ないだろう、と失礼な結論を出した。
ソラとルナのことを考える。
あの双子のことだから、なんだかんだでいつものペースでやっているであろうと結論を出した。
ニーナのことを考える。
トラウマが再発していないか心配だった。
ティナのことを考える。
門兵とのんきに話をしている光景が思い浮かんだ。
「なんとかしないといけないけど……でも、どうすればいいのかしら……?」
タニアは暗い顔になり……
それでも諦めるという選択を取ることはなくて、打開策を必死に考え続けた。
――――――――――
「「あー……」」
ソラとルナは二人用の牢に閉じ込められていた。
生まれてから今に至るまで、ほとんどの時を一緒に過ごしてきた仲だ。
離れ離れになるのなら後で絶対に後悔させてやる!
と門兵を脅して、なんとか一緒になることはできた。
ただ、魔力錠がつけられているので魔法は使えない。
脱出することはできないし、レインのことを調べることもできない。
どうすることもできず、二人はベッドに寝ていた。
「我が姉よ」
「なんですか」
「ベッドが硬いのだ。石の方がまだマシではないか?」
「さすがに石の方が硬いと思いますよ」
「そうなのか?」
「そうですよ」
「……」
「……」
沈黙が流れて……
「うだあああああぁっ!!!」
沈黙に耐えかねたようにルナがベッドから降りて、大きな声をあげた。
それから、自分達を閉じ込めている牢に手の平を向ける。
「終焉をもたらすがいいっ、アルティメットエンド!」
超級魔法を唱える。
が、魔力錠をかけられているため、魔法が発動することはなく不発に終わる。
「ぐうううっ、これさえなければ……!」
「なかったとしても、こんなところで超級魔法を唱えようとする人がいますか。もしも正常に魔法が発動していたら、とんでもないことになっていましたよ」
「レインやみんなにひどいことをする人間なんて、どうなろうと知ったことじゃないのだ!」
「まあ、その点は賛成ですが……」
過激な姉妹だった。
元々、精霊族は人間を嫌っている。
レインが例外なだけで、ソラとルナが他の人間にも心を許しているわけではない。
「とはいえ、今はあがいてもどうしようもありません」
「ソラはこのままでいいというのか!? レインやみんながどんな目に遭っているのか、わからないのだぞ!?」
「いいわけないでしょうっ!」
「っ!?」
思いの他強い口調で言われて、ルナがびくりと震えた。
「私だって、レインやみんなのことは心配です……でも、焦っても仕方ないんです。今は我慢するしかないんです」
「ソラ……」
「でも、時が来たら……全力で暴れてやりますよ。ソラ達をこのような目に遭わせたこと、後悔させてやります」
「……うむ。やってやるのだ!」
ソラとルナは決して諦めることなく、その瞳の奥に、逆襲の炎を小さく燃やしていた。
――――――――――
「んー」
鳥かごに入れられたティナは、隙間から手を伸ばして、ニーナの魔力錠をいじっていた。
ヘアピンを使い、カチャカチャといじる。
しかし、その構造は複雑で、とてもヘアピンで解錠できるようなものではない。
ましてや、ティナ自身も鳥かごに入れられているため、自由に動くことができない。
見た目はただの鳥かごだが、内部の魔力を妨害するという特別性のものだ。
ティナに合う魔力錠がないため、急遽、用意されたものだ。
「ダメや……これは無理やな」
諦めて、ティナがヘアピンを手放した。
「だいじょう……ぶ?」
ニーナが心配そうに見る。
「平気やでー。ちと疲れただけやからな。ウチのことよりも、ニーナは大丈夫か? こんなところに入れられて、変なこと思い出さんか?」
「ん……ティナが一緒だから、平気……だよ」
にっこりと笑うニーナを見ていると、ティナは無性に庇護欲をそそられた。
こんな目に遭っているというのに、ニーナは笑顔を絶やしていない。
しかし、それはいつまで続くのか?
ずっと牢に入れられていれば、やがて肉体的にも精神的にも疲れてしまうだろう。
ニーナはまだ子供だ。
この過酷な環境に、長時間耐えられるとは思えない。
限界が訪れる前に、自分がなんとかしないといけない。
ニーナのことだけではなくて、レインと仲間のこともなんとかしないといけない。
きっと、ニーナと同じように不自由な目に遭っているだろう。
ティナは決意を強くした。
絶対に諦めない。
必ずまた、みんなでホライズンの家に帰る。
「よしっ、休憩終わりや!」
「ティナ……?」
「待ってろー、今度はそこで拾った釘でやってみるで」
ティナは釘をニーナの魔力錠の鍵穴に入れて、カチャカチャと解錠を試みた。
ニーナは特に何も言うことはなく、ティナに言われるままにしている。
ただ、諦めているわけではない。
何度も何度も亜空間を開こうとがんばっていた。
魔力錠があるため、うまくいかないのだけど……
それでも諦めることなく、何度も何度も試みていた。
ただじっとしているだけなんてイヤだ。
助けられるだけなんて、そんなものはもう終わり。
今度は、自分がレインを助ける。
小さな体に強い決意を宿して、ニーナは能力の発動を繰り返し試すのだった。
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