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243話 囚われの身

 移送されている間、俺は必死になって無実を訴えた。

 しかし、誰も聞き入れてくれない。


 ここがホライズンなら、あるいは結果は違っていたのかもしれない。

 でも、ここは王都だ。

 誰も俺のことなんて知らないし、その人となりなんてわからない。


 逆に、アリオスは有名人だ。

 勇者という立場で人々に慕われており、英雄として扱われている。

 そんなアリオスが俺を犯人と断言している。

 身に覚えはないが、証拠もある。


 無実を証明することはできず……

 俺は仲間達と引き離されて、王都の騎士団本部の牢に入れられた。


 ……そして、一週間が経過した。


「くそっ」


 なにもすることができず、ただただ時間だけが流れた。


 あれから一週間。

 みんなは大丈夫だろうか……?


 カナデやタニア、ルナは直情的なところがあるから、無茶をしていないか心配だ。

 ソラとティナは落ち着いているけれど、たまに無理をするから気になってしまう。

 ニーナはまだ幼いし……牢に入れられることで、エドガーに捕まっていた時のことを思い出さないといいが。


「とはいえ……まずは自分の心配をしないといけないか」


 牢に入れられて一週間。

 一回数時間の事情聴取を日に数回。

 それ以外は外に出ることはなくて、ずっと牢に押し込められている。


 牢は地下に作られているらしく、陽の光はまったく届かない。

 一日に二回の食事で、なんとか経過した日数を把握しているところだ。


 それにしても……なかなかに厳しい。

 こんなところに押し込められて、何度も何度も尋問をされて……

 疲労がたまり、肉体的にも精神的にも疲れてしまう。

 心が摩耗していくのがわかる。


 俺でさえこうなんだ。

 みんなも同じ目に遭っているとすれば、もっと厳しいかもしれない。


「どうにかしないといけないんだけど……どうすればいいか、先がまったく見えないな」


 唯一わかることといえば、ここでじっとしていても事態は進展しないということだ。

 いや、むしろ悪化するだろう。

 アリオスが用意した証拠は、傍から見れば完璧なものだ。

 文句のつけようがないし、俺が殺人を犯したと証明するのに十分だろう。


 このままなら、俺は間違いなく殺人犯として裁かれることになるだろう。

 そうなる前に、なんとしても無実を証明しなければならない。


 しかし、こんなところにいては、それもままならないわけで……


「……いっそのこと、脱獄してしまうか?」


 ちらりと、不穏な考えが頭をよぎる。

 脱走すること自体は問題ない。


 ここは騎士団本部だけあって、かなり厳重な作りとなっているが……

 この一週間で騎士の行動パターンなどは把握した。

 やってやれないこともないと思う。


 しかし、逃げ出したところで次の手を打つことができない。

 事態を打開するアテがないのだ。

 闇雲に行動しても仕方ないため、じっとしていたが……


「このまま、ここに囚われたままというのも変わりないか……やっぱり、脱走するか? それからみんなと合流して……」


 これからのことを考えていると、足音が聞こえてきた。

 複数の足音だ。


 騎士だろうか?

 しかし、一人だけやけに足音が軽い。


 不思議に思っていると、牢の手前で足音が止まる。


「ここで大丈夫です」

「しかし、相手は殺人犯です。お一人にするわけには……」

「牢に入れられているのです。問題はないと思いますが?」

「それは……」

「あなた方はここで待機を。これは命令です」

「……はっ」


 なにやら話し声が聞こえてきて……

 ややあって扉が開く。

 そこから顔を見せたのは……


「こんにちは、レインさん」

「サーリャさま!?」


 どこかいたずらっぽい顔をしたサーリャさまが現れた。


「どうしてこんなところに……え、夢?」

「ふふ、現実ですよ。レインさんの驚くところが見れました。これは貴重ですね。わざわざここまで足を運んだ甲斐がありました」


 サーリャさまの目的はわからないが……

 これはチャンスなのでは?


 サーリャさまが味方になってくれれば、即時、無罪放免とまではいかないものの、それに近い状況を作ることができるかもしれない。

 とにかくも、俺は話をしようとして……


「しっ」


 サーリャさまが口元に指を当てて、静かに、というポーズをした。


「詳しい事情を話している時間はありません。まずは、ここを脱出しましょう」

「しかし……どうやって?」

「まずは、これで魔力錠を解いてください」


 どこで手に入れたのか、サーリャさまは魔力錠の鍵を渡してくれた。

 王女という立場を活かして、ここに来る途中で手に入れたのだろう。たぶん。


 俺は首と足につけられていた魔力錠を解錠した。

 押さえつけられていたものが解放されて、体が軽くなる。


 この状態なら、みんなと契約したことで得た力を使うことができる。

 牢を出るだけなら簡単だ。

 しかし、ここは地下で……ついでにいうのならば、騎士団本部だ。

 しっかりと確認してはいないが、数えるのが億劫になるほどの騎士がいるだろう。


 その中を誰にも見つからずに……見つかったとしても無事に逃げ切ることは、かなり難しいだろう。

 王都の騎士団本部になれば、Aランク冒険者に匹敵する騎士がうようよといる。

 そんな連中をまとめて相手にすることは、さすがに不可能だ。


「私を人質にしてください」

「……なんですって?」

「私のことを人質にして、ここから脱出してください」


 聞き間違えじゃなかった。


 確かに、サーリャさまを人質にすれば脱出は可能かもしれない。

 しかし、そんな不敬を働くわけには……


「レインさん、急いでください。時間がありません」

「それは、どういう……?」

「今、こうしている間にも、アリオスさまはレインさまを処刑しようと画策しています。そのために、あちこちに根回しをして……」

「それは本当ですか!?」

「はい。私はそのことを知り、止めようとしているのです。誰もがみな、レインさまが罪を犯したといいますが……そのようなこと、私は信じません。レインさまは、そのようなことをする方ではありません。私は、レインさまの無実を信じています」

「サーリャさま……」

「まずは、ここから逃げることを第一に考えてください。ここに捕らえられたままでは、なにもできません……アリオスさまの思うようにされてしまうでしょう。だから……私を利用して、ここから逃げてください」


 サーリャさまは、決意に満ちた瞳をしていた。

 いくら王女であろうと、罪人の逃亡の手助けをすればタダで済むわけがない。

 それなのに……サーリャさまは迷うことなく、すでに覚悟を決めていた。


 それだけの決意と覚悟を見せられたのならば、迷うわけにはいかない。


「わかりました。サーリャさまを利用します」

「その大胆な決断こそ、レインさまらしいですわ」

「では……物質創造」


 ニーナと契約したことで得た力を使い、牢の鍵を作り出した。

 解錠して外に出る。

 それから手錠を作り出して、俺とサーリャさまを繋いでしまう。


「えっと……し、失礼します」

「あ……はい」


 そっと、サーリャさまを抱きかかえた。

 手錠で繋いだ手を引っ張り回すわけにはいかないので、こうして抱きかかえるしかないのだけど……


 王女さまとはいえ、年頃の女の子。

 温かくて、柔らかい。

 時折、サーリャさまの吐息が間近で触れる。


 って、邪なことは考えるな。

 真面目にいこう。


「しっかりと掴まっていてください」

「あの……私、重くありませんか?」

「大丈夫ですよ。俺は、こう見えても力持ちなので」

「むう……それ、答えになっていませんよ」


 仕方ないじゃないか。

 成人女性を抱えているのだから、多少なりとも重さを感じるなんて、言えるわけがない。


「では……いきます!」

「はいっ」


 サーリャさまを抱えたまま、地下牢の外に出た。

 外は監視部屋になっているらしい。

 サーリャさまに同行していたと思われる騎士が三人、並んで待機していた。


「なっ……貴様は!?」

「サーリャさま!?」


 突然、飛び出してきた俺達を見て、騎士達が動揺を露わにした。

 その隙を見逃すつもりはない。

 脳を揺らすように顎を殴りつけて、脳震盪を起こして気絶させる。


 別の部屋にある俺の荷物と装備を回収して、地上へ続く階段を移動する。


「ふぁ……」


 サーリャさまが目を丸くしていた。


「すみません。あそこは、多少手荒くしても乗り切るしかなくて……驚かせてしまいましたか?」

「はい、別の意味で驚きました……話は聞いていましたが、レインさんはとても強いのですね。いくら不意をついたとはいえ、歴戦の騎士をああも簡単に倒してしまうなんて……そのようなこと、普通の人にできることではありません」


 驚いたのではなくて、感心していたのか。

 こんな時にそんな感情を抱く余裕があるなんて、サーリャさまは、かなりの大物なのかもしれない。


「これからもっと驚くことになりますよ。引き続き、しっかりと掴まっていてくださいね!」

「はいっ」


 サーリャさまを人質に取り……俺は、そのまま騎士団本部を脱出した。

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[気になる点] 「あ……はい」 そっと、サーリャさまを抱きかかえた。 手錠で繋いだ手を引っ張り回すわけにはいかないので、こうして抱きかかえるしかないのだけど…… 王女さまとはいえ、年頃の女の子。 温か…
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