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234話 最終試験、開始!

 アリオスとの模擬戦で余計な体力を使用したものの……

 その後、30分ほど休むことができた。

 体は十分に動く。

 本当に、アリオスはなにをしたかったのだろうか?


 気になるけれど……

 今は試験の方に集中しよう。


 準備が終わったらしく、いよいよ最終試験が行われることになった。

 残ったパーティーは8組、30人。

 この中から、Aランクに昇格できるのは何人なのか?

 絶対に合格者に食い込んで見せる!


「それじゃあ、これから最終試験を始めるわ」


 セルがみんなの前に立ち、説明を始める。


「最終試験は、この遺跡の攻略よ。遺跡内に多数の罠が仕掛けられていて、さらに、魔物も解き放たれているわ。それらの困難を乗り越えて、最下層に達すること。それが合格の条件になるわ」

「全部で何層なんですか?」


 セルの説明が終わり、そんな質問が飛び出した。


「それは教えることはできないわ。これは、実際の依頼を想定しているの。未踏の遺跡に挑む場合は、最下層がいくつなんてわからないでしょう? だから、教えることはできないわ」

「合格者は何名ですか?」

「何名でも。ギブアップすることなく、最下層にたどり着いたパーティーは合格よ」

「魔物のランクは?」

「基本はCランクだけど、Bランクも混じっているわ。パーティーで力を合わせてしっかりと対処すれば、問題のない相手よ」


 色々な質問が出た。

 その一つ一つを聞き逃さないように注意して、しっかりと頭に刻み込む。


「はいはーい、質問!」


 カナデがぴょんぴょんと小さくジャンプしながら声をあげた。


「最下層にたどり着けばいいんだよね?」

「ええ、そうね」

「床をぶち抜いて降りていってもいいの?」

「え?」

「こう……えいやっ、って床を割って、それで下に降りていくの。それならすぐにたどり着くと思うんだけど、ダメかな?」


 さすがにカナデの質問は予想外だったらしく、セルが固まる。


 他の試験官達は、そんなバカな……と失笑していた。

 ただ、セルは顔を強張らせている。

 少しの間だけど、一緒に旅をした仲だ。

 カナデなら本気でやりかねないこと。

 それだけの力あるということを、セルは理解している。


「……ダメよ。それは認められないわ」

「えー、ダメなの?」

「過去、砦として利用されていた遺跡だけど、それでも年月による劣化は免れないわ。床を割るなんてことをしたら、最悪、遺跡が崩壊するわ。だから、ダメ」

「ちょっとくらいなら……」

「絶対にダメ」

「にゃん……」


 ギロリと睨まれて、カナデは猫耳をシュンと落としながら引き下がった。


 お願いだから、そういう無茶苦茶な方法を思いつかないでほしい。

 そして、実践しようとしないでほしい。


 最近、カナデが活発になっているというか、無茶無謀をするようになってきた気が……?

 もしかして、タニアの影響を受けているのだろうか?

 最近は、二人は仲が良いみたいだけど、タニアの無茶無謀が感染したのかもしれない。


「ちょっとレイン。今、失礼なことを考えなかった?」

「……気のせいじゃないか」


 さすがというか、勘が鋭い。


「他に質問のある人は?」


 セルが問いかけるものの、誰も手を挙げない。

 ある程度の情報は開示されたし、後は実践に挑むだけだ。


「なら、これから最終試験を始めるわ」


 セルの合図と共に、最終試験が始められた。




――――――――――




 8組いるパーティーが順番に遺跡に突入する。

 俺達は最後だ。

 他の7組のパーティーが全て突入して……

 そして、いよいよ俺達の順番が訪れる。


「レイン」


 遺跡に入ろうとしたら、セルに声をかけられた。


「がんばってね」

「ああ、ありがとう」


 セルに応援してもらえるとは思わなかった。


 ちょっと驚いたけど……

 でも、やる気は出た。

 絶対に合格してみせる!


 そう意気込みながら、遺跡に足を踏み入れた。

 背後の扉が閉じると……


「うわっ、まっくら」


 暗闇の中、カナデの驚くような声が聞こえた。


「あたしの方は真っ暗っていうわけでもないわよ」

「む? タニアは夜目がきくのか?」

「きかないわよ。ただ、カナデの目が光っているから、それで真っ暗じゃない、っていうだけよ」

「にゃん?」


 カナデの声がした方を見ると……


「本当ですね。確かに、カナデの目が光っています」

「おおう、ちょっと怖いのだ……」

「でも……綺麗、だよ?」

「猫霊族だから、暗いところやと目が光るんやなー」


 絵の具で黒く塗りつぶしたような暗闇の中、カナデの瞳が宝石のように輝いている。

 黒目の部分が心なしか大きくなっている。

 そこらへんのシステムは、やっぱり猫と同じなんだろうか?


「ふにゃん!? 誰!? 私の尻尾触ったの誰!?」

「これはカナデの尻尾だったんですね。すみません、暗いからわかりませんでした」

「ひゃ!? だ、誰よ、あたしのお尻触ったのは!?」

「ふはははっ、我なのだ! これがタニアのお尻か……うむ、安産型だな!」

「ちょっ……レインの前でなんてことを言ってるのよ!?」


 みんな、これが最終試験ということを忘れてないか?

 遠足のようなノリで、まるで緊張感がない。


「まあ、ガチガチに緊張しているよりはいいか」


 みんなのおかげで、俺も、肩の余計な力が抜けた。

 最終試験ということで、それなりに緊張していたのだけど……

 あれこれと考えても仕方ない。

 みんなと一緒なら、どんなことでも乗り越えられると思うし……

 万全の状態で試験に挑めるようにがんばろう。


「ソラ、ルナ。明かりをお願いできるか?」

「はい、わかりました」

「ライト! なのだっ」


 ルナが魔法を唱えて、光球がふよふよと宙を漂う。

 辺りの闇を振り払う。


「ここが遺跡の入り口か……」


 意外と広い。

 中央に古代の調度品が飾られていた。

 その調度品を中心にして、左右に通路が伸びている。


「いきなり分かれ道か……さて、どうするかな?」

「我に任せるのだ!」


 ルナが自信たっぷりに前に出た。


「お? 得意の魔法で正解の道がわかるんか?」

「ふはははっ、その通りなのだ。我にかかれば、正解の道を探し出すことくらい、ちょちゃいのちぇいなのだ!」

「噛みましたね」

「うっさいのだ!」


 ソラの冷静なツッコミに、ルナは若干顔を赤くしながら、そこらに転がっている木の枝を取る。

 表の扉が開いている時に、風に飛ばされて入り込んだものだろう。


 ルナは木の枝をまっすぐに立てて、神妙な顔になる。

 気合を入れるように目を閉じて……


「えいやっ、なのだ!」


 ルナが手を離して、ぱたんと木の枝が倒れた。


「うむ。我の魔法によると、正しいルートはこっちなのだ!」

「どこが魔法やねん!? ただ木の枝を倒しただけやん! そんなん魔法ちゃうわ、ただの勘や!」


 ティナの渾身のツッコミが炸裂した。


「まあまあ。他に手がかりもないし、とりあえずルナの言う通りにしよう」

「うーん、大丈夫なのでしょうか? ソラは、ものすごくイヤな予感がしますが……」

「恐れることはないぞ! 皆のもの、我に続くのだ!」

「おー……!」


 ルナが先頭を歩き、ニーナが後に続いた。

 二人を放っておくわけにはいかないので、俺達も後に続いた。


 右の通路を進み、慎重に歩いていく。

 魔物が解き放たれているという話だけど、今のところ遭遇はしていない。


「ところで、お約束のアレはないのかしら?」


 ふと、タニアがよくわからないことを言い出した。

 カナデが小首を傾げる。


「にゃん? アレ?」

「ほら、ここは遺跡でしょう? なら、あちらこちらにトラップがしかけられていてもおかしくないんじゃない?」

「おー、確かに」

「こういう時のパターンでいくと、トラップが発動して大玉に追いかけられて、そのまま落とし穴に落ちるのが定番なんだけど」

「あかんで、タニア……それ、フラグや」

「フラグって……まさか、本当に今言った通りになるとでも? あたしが言い出したことだけど、そんなことありえるわけないじゃない。あたしたちの仲に、トラップに引っかかるような間抜けはいないわよ」


 タニアがドヤ顔で言い放つ。

 そのまま胸を張ると……その拍子に尻尾が揺れて、壁の不自然なでっぱりをカチリと押し込んでしまう。


「あっ」


 やってしまった、というような声は、果たして誰のものだったか?


 ゴゴゴゴゴッ、と大きな音と振動が響いて……


「あわわわわわっ!? お、大玉なのだ!?」

「タニアのばかー!!!?」

「あ、あたしのせいなの!?」


 後ろから大玉が転がってきて、俺達は慌てて駆け出した。


 って、待てよ?

 これがお約束だとしたら……


「あっ!?」


 再び、誰かの声が響いた。


 床がパカンと大きく開いた。

 それは見事な落とし穴で……どうしようもないほどの落とし穴で……


「にゃあああっ、タニアのばかぁあああああっ!!!?」


 カナデの叫び声が響いて、俺達は暗闇の中に吸い込まれていくのだった。

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