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233話 模擬戦

「このようなところで騒ぎを起こすなんて、君達はどういうつもりかな?」


 これ以上騒ぎを起こすのならば、こちらにも考えがある。

 そう言うように、アリオスは剣の柄に手をかけていた。


「お、俺達は別に……」

「な、なんでもないですよ」


 男達は気まずそうに目を逸らした。

 そんな二人を見て、怒りを覚えたのがバカバカしくなり、手を離した。


 男達はこちらを睨みつけた後、立ち去る。

 覚えておけ、と言いたかったのかもしれないが、もう忘れた。


「やれやれ。あまり僕の手を煩わせないでほしいんだけどね」

「悪かったな」


 アリオスに謝罪するのは癪だけど……

 今のは俺にも非があるので、素直にそう言っておいた。


 そのままテントの下に戻ろうとするが、


「待つんだ、レイン」


 アリオスに呼び止められた。

 何事かと振り返ると、アリオスは親しげな笑みを見せていた。


「今は休憩でヒマだろう? せっかくだから、模擬戦でもしないか?」

「模擬戦? アリオスと?」

「ああ、どうだい?」


 突然の申し出に、思わずぽかんとしてしまう。


 いきなり、何を言っているのだろうか?

 怪しい。

 なにか企んでいるとしか思えない。

 例えば、模擬戦にかこつけて、俺に怪我をさせて落第させようとか……

 そういうことを考えているような気がした。


 根拠はないのだけど……

 そこそこの付き合いなので、アリオスの性格、やりそうなことは理解しているつもりだ。


「悪いが、断る。最終試験に備えて、ゆっくりと休みたいんだ」

「つれないことを言わないでくれよ。軽く体を動かす程度さ。それに……軽いものとはいえ、騒ぎを起こしたキミを、このまま無罪放免っていうわけにはいかないんだよ」

「あの連中はどうなる?」

「今頃、僕の仲間がお灸をすえているさ。キミだけを罰するなんてことはしない、神に誓ってもいいよ」

「あまり信じられないが……」

「なんなら、証言をとってもいい。どうだい?」


 そこまで言うのならば、ウソではないのだろう。


「キミだけなにもなし、というわけにはいかないんだよ。とはいえ、キミに落ち度はない。絡んできたのはあの連中みたいだからね」

「それがわかっているなら、放っておいてくれないか?」

「それができないから困っている。ケンカ両成敗と言うだろう? レインにもなにかしらの罰は必要なんだ。そこで……僕と模擬戦を行ってもらう。勇者が相手になり、罰をくだした……そういう風にアピールできるだろう? これならば、全て丸く収まると思わないかい?」


 アリオスの話におかしなところはない。

 現状、場を収める一番の方法だろう。


 ただ、アリオスがこんなまともな話をするなんて思えないんだよな……

 絶対に、裏でなにか企んでいるに違いない。

 妙なことで足を引っ張られたくないのだけど……


 ちらりと周囲を見ると、他の冒険者達がこちらを見ていた。

 その視線には、不快そうな感情が混じっている。

 アリオスの言う通り、騒ぎを起こした俺のことを気に入らなく思っているのだろう。


 このまま放置したとしても、それはそれで問題になりそうだ。

 気になるところはあるが……アリオスの言う通りにした方がいいかもしれないな。


「……わかった。そういうことなら、模擬戦をしようか」

「僕の話を理解してくれて助かるよ」


 アリオスがなにか企んでいたとしても、それを阻止してしまえばいい。

 細心の注意を払い、模擬戦に挑むことにしよう。


「レイン……がんばって、ね?」

「あんな勇者なんて、コテンパンにしてーや!」


 ニーナとティナに応援された。

 二人の応援で力が湧いてくる。


 うん。

 今の状態なら負ける気はしない。

 アリオスが卑怯な手を使ってきたとしても、それを打ち破るだけの自信があった。


 テントの下を離れて、広場に移動した。

 そこでアリオスと対峙する。


「時間は、そうだね……10分にしようか。それで決着がつかなければ引き分け。それでどうだい?」

「ああ、問題ない」

「審判というか、タイマー役をその子に任せたいんだけど、いいかい?」


 意外なことに、アリオスはニーナを指名した。

 アッガス達を審判にして、グルになってあれこれとしてくるかと思っていたのだけど……


「ああ、問題はないが……」

「なら頼むよ。時間を計るだけの簡単な仕事だ。10分経ったら声をかけてくれ。ああ、決着がついたと思った時も声をかけてほしい」

「ん……了解、なの」

「ウチもいるから、安心してええでー」

「ん? もしかして、あの人形もレインの仲間なのかい? 見たことがないけれど……」

「まあ、色々とあってな」

「そうか。なら、彼女……彼女でいいんだよな? 彼女にも審判を頼むことにしよう」

「わかった。アリオスがそれでいいのなら、俺は問題ない」


 始めようか。

 そう言うように、俺はカムイを抜いて……


「ああ、武器はなしにしておこう」

「え?」

「模擬戦とはいえ、得物を使うと怪我をしてしまう可能性がある。無論、寸止めするつもりだけど、事故がないとは限らないからね」

「それは、まあ……」

「レインは試験を控えた身だ。怪我をしたらつまらないだろう? 素手でやろうじゃないか」


 おかしい。

 アリオスにしては、まともなことばかり言っている。


 こいつ、ひょっとしてニセモノか?


「どうしたんだい? じーっと僕の顔を見て。なにかついているかな?」

「……いや、なんでもない」


 もしかして、改心したのだろうか?

 王に叱責されたと聞くし……

 それで考えを改めた?


「それじゃあ、始めようか」

「……わかった」


 アリオスが改心したのか、それとも、笑顔の裏でなにかを企んでいるのか……

 真意はわからない。

 何が起きてもいいように注意しておこう。


「ところで……」

「うん?」

「そのメガネはどうしたんだ?」

「ああ、ちょっとしたファッションさ。どうだい?」

「似合っていないな」

「……うるさいな」




――――――――――




「んっ……終わり、だよ」


 ニーナの合図で、俺とアリオスは動きを止めた。


 模擬戦を始めて、10分……

 特に何事もなく終了した。


 アリオスは不正を働くわけでもなく、罠をしかけているわけでもなく、ただただ普通に戦っていた。

 互いに格闘術は慣れていないので、どちらかが倒れることもなく……時間いっぱい戦うことになった。


 剣を使っていなくても、アリオスは強かった。

 動きが素早く、打撃が重く、一撃一撃が洗練されている。

 さすが勇者というべきか。

 以前にやりあった時に比べると、遥かに成長していた。


「ふう、いい汗をかいた。なかなかやるじゃないか、レイン」

「……アリオスもな」

「また機会があれば手合わせしよう。じゃあね」


 アリオスは爽やかに笑い、立ち去る。


「レイン……大丈夫?」

「アイツになんかされんかった?」

「いや、大丈夫だ。なにも……」


 模擬戦にかこつけて俺を怪我させるわけでもなく、陥れるようなこともしていない。

 いったい、アリオスはなにがしたかったのだろうか?


 ……この時、すでにアリオスの目的が達成されていたことに、俺は気づくことはなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 素直に模擬戦を受けるのが分からんな。性根の腐ったクソ野郎なのだから、シカトで良くない?レインがお人好しで、周りの目が気になるのは分かるけど…
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