232話 謀略
三つの試験が行われた。
その結果、8組のパーティー、30人までに絞られた。
「……ふんっ、つまらないな」
その結果を見て、テントで待機していたアリオスはつまらなそうに鼻を鳴らした。
レインのパーティーがしっかりと残っている。
実におもしろくない。
途中で落第していれば、おもいきり笑ってやったものを。
レイン達は落第するどころか、好成績を残している。
試験官達はレイン達のことを称賛していた。
その言葉を耳にする度に、むかむかとした気持ちが湧き上がる。
うるさい!
僕の前でくだらない話をするな!
「……っ……」
思わず、アリオスはそんな言葉をぶつけてしまいそうになるが……
ぐっと堪えた。
そんなことをしたら、勇者としての名誉が落ちてしまう。
それだけじゃない。
これからの計画にも支障が出るかもしれない。
それだけは避けないといけない。
「ねえねえ、アリオス」
リーンがやってきた。
アッガスとミナの姿は見えない。
おそらく、次の試験について、他の場所で試験官と打ち合わせをしているのだろう。
「今更なんだけどさ、なんでこんなことしてるわけ?」
「うん? こんなことというのは?」
「試験官のこと。こんなめんどくさいこと、なんで引き受けたのかなー、って」
「リーンは反対なのかい?」
「んー……反対ってほどじゃないけど、めんどうかなあ。大した金にならないし、あたしらの評判が高くなるわけでもないし。メリットが少なくない?」
「確かに、メリットは少ないかもしれないね」
「でしょ? なんだったら、今からバックレない? 王様に呼ばれましたとかなんとか言ってさ」
「そうしたいところだけど……でも、やらないといけないことがあるんだ」
「やらないといけないこと? なにそれ?」
「とても大事なことさ」
アリオスは冷たい笑みを見せた。
その瞳には、狂気に近い感情が浮かんでいる。
しかし、リーンがそのことに気づくことはない。
「ま、アリオスがそう言うならしゃーないか」
「すまないね」
「いーよいーよ。めんどいけど、しばらくはおとなしくしなきゃいけないわけじゃん? なら、こうして地道な活動して、ポイントでも稼いでおくわ」
「なんだ、わかっているじゃないか」
「あーあ、こんな地味な仕事さっさと終わらせて、街へ遊びに行きたいし」
ぼやきながらリーンが出ていった。
入れ替わるようにモニカがやってきた。
「アリオスさま、おまたせしました」
「首尾はどうだ?」
「はい、滞りなく」
モニカは優しく微笑むと、アリオスにメガネを差し出した。
「こちら、例のアイテムになります」
「ふぅん、これが……見た目は普通のメガネだな」
「そうでないと、正体を看破る者が現れるかもしれないので。これならば、そうそう簡単にはばれないでしょう?」
「なるほど。効果の方は問題ないのかい?」
「ええ、もちろん。私達の望む通りの結果を出してくれるかと」
「レインは、即死魔法を防いだこともあるが、その点については?」
「まあ、そんなことが……そうですね」
考えるような仕草をとった後、モニカが口を開く。
「問題ないかと。このアイテムは対象に害を及ぼすわけではないので、阻害されることはないはずです。ただ単に、対象を観察するだけですからね。そんなものにまでいちいち反応していたら、レインさんは日常生活がおぼつかないはずなので」
「それもそうか」
「アリオスさまはこのメガネをかけて、しっかりとレインさんのことを見てください。そうすれば、願いは叶います」
「わかった、そうすることにしよう」
アリオスはメガネを手に、暗い顔をした。
「くくく……これで、あの時の屈辱を返すことができる。見ていろよ、レイン……!」
――――――――――
休憩がとられることなった。
テストの採点に1時間ほどかかったので、その間に体も頭も休めることができたのだけど……
次が最終試験なので、試験官達も色々と準備があるのだろう。
あちこちを忙しなく歩き回っている。
休憩をもらえることに文句はないので、俺達はのんびりと過ごしていた。
「……すぅ、すぅ……」
「……くぅ、くぅ……」
ソラとルナは、互いに寄りかかるようにして昼寝をしていた。
簡易テントの下にいるので、日差しが直撃することはない。
心地よさそうな寝息を立てていた。
こんな時も二人一緒なのが、どこか微笑ましい。
カナデとタニアの姿は見えない。
待っている間、ヒマだからということで、遺跡を探検しに行った。
おみやげ期待しててね、と言っていたけれど……
いったい、なにをとってくるつもりなのだろうか?
「あふ……レインの、気持ちいい……」
「おー、ニーナ。すっごいとろけ顔やなあ」
「うん。レイン……すごく上手だから」
「ええなー。ウチもしてほしいなー」
「ティナは尻尾がないだろ」
残った俺は、ニーナの尻尾のブラッシングをしていた。
三本もあるので、手入れが大変らしい。
めんどうになり、放置してしまう日もあるとか。
それではいけないと、俺がブラッシングをすることになった。
動物と仲良くなるための方法として、ブラッシング技術も学んでいる。
櫛でニーナのふさふさの尻尾をゆっくりと丁寧に、優しく梳いていく。
ニーナは気持ちよさそうにしていて……
そんな俺達を、ティナが見守る。
試験の最中とは思えないくらい、まったりとした空気が流れていた。
「おいおい、なんでこんなところにガキがいるんだ?」
まったりとした空気を壊すように、野太い声が響いた。
見ると、他のパーティーが俺達のことを見ていた。
ニヤニヤとした笑みを浮かべていて、好意的には見えない。
「ここは、Aランク昇格試験の会場だぜ。子供は家に帰りな」
「場違いなんだよ。こんな連中が一緒だと思うと、見てるだけで苛つくぜ」
テンプレ的な絡まれ方をした。
今時、こんなヤツがいるのか……
怒るよりも先に、珍しさが先に立ち、天然記念物を見たような気持ちになる。
「なんか、感じ悪いやつらやなあ……やったる?」
ティナが不機嫌そうな顔をして、小声で問いかけてきた。
「やめとけ。こういう手合は相手にしない方がいいぞ」
「せやな。アホがうつってもかなわんしな」
「てめえら……聞こえてるんだよ」
「もしかして、わざと言ってるのか?」
男二人が激怒した表情を作る。
キレやすいヤツらだな……
そもそも、そちらから絡んできたくせに。
「悪かった。謝るよ」
騒ぎにしたくないので、頭を下げることにした。
しかし、そのせいで余計に二人が調子に乗ってしまう。
「はっ、腰抜けやろうが」
「そうだな、許してやってもいいが……そのガキをもらおうか。よく見たら、神族じゃねえか。きっと、高く売れ……がっ!?」
「今、なんて言った?」
男の胸ぐらを掴む。
俺のことはどうでもいいが、仲間に絡むことは許せない。
「ぐっ、こ、こいつ……なんて力だ!?」
「ニーナに手を出すつもりなら、それ相応の覚悟をしてもらうぞ?」
「……そこまでにしてもらおうか」
間に割って入ったのは……アリオスだった。
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