231話 知恵の試験
問題なく第二試験を突破した俺達は、次の試験会場に案内された。
遺跡の中へ移動する。
大きい広間にテーブルとイスが並べられていた。
学院みたいだ。
「次は筆記試験よ。Aランク冒険者には、力だけではなくて様々な知識が求められるわ。なので、筆記試験を受けてもらうわ」
セルの合図で、別の試験官がテスト用紙を配る。
「テストの合格ラインは80点。1点でも足りなければ失格。ただし、今回はパーティーの内、誰か一人でも合格していれば大丈夫よ。参謀役がいるということを証明できればいいの」
80点か……
内容によるが、厳しいかもしれないな。
でも、やる前から諦めたくないので、がんばるしかない。
「制限時間は1時間。カンニングなどは、もちろん失格。バレなければいい……なんてことを考えないように。ありとあらゆる手段で監視しているから」
見ると、周囲にたくさんの試験官が散らばっている。
中には、水晶玉を手に持っている人も。
道具を使い、死角なく受験者を監視しているのだろう。
「それじゃあ、はじめ!」
セルの合図でテストに取り組む。
「うわ……」
ついつい声をあげてしまう。
一般知識から始まり、歴史、地理、数学……さまざまな問題が並べられていた。
どれもレベルが高く、なかなかに手こずりそうだ。
みんなは大丈夫だろうか?
カンニングと疑われない程度に視線を動かして、みんなの様子を見る。
「うにゃ……? にゃあああ……はううう……」
カナデはすでに目をぐるぐると回していた。
頭を酷使して知恵熱を出しているみたいだ。
無理しない程度にがんばってほしい。
「すぅ……すぅ……くぅ……」
タニアは……寝ていた!
この短時間で全問を解いたということはありえないから、問題を見て諦めたのだろう。
後は俺達に任せる、というような感じで、大胆不敵に、おもいきり寝ていた。
「ふむふむ。なるほど……こういう問題ですか」
「ふはははっ、この程度の問題、我にかかれば余裕なのだぞ!」
「そこ、私語は慎みなさい」
ルナがいつもどおりに高笑いをして、試験官に怒られていた。
そんな問題を除けば、二人はわりと順調みたいだ。
「ん……うぅ? んー……んう?」
ニーナはしきりに小首を傾げていた。
無理もない。
まだ小さいから、わからないことが多いだろう。
それでも諦めようとせず、一問一問、必死になって取り組んでいた。
そして、ティナは……
「……」
おぉ!?
ものすごい勢いで問題を解いていた。
カリカリとペンが走り続けていて、止まることがない。
今まで気にしたことがなかったのだけど……
ティナは頭がいいのだろうか?
「よし、負けてられないな」
ティナに全部任せるわけにはいかない。
俺も、できる限りのことをやらないと。
目の前の問題に集中して、俺はペンを持つ手を動かした。
――――――――――
テストが終わり……
採点のために1時間ほど、その場で待機することになった。
そして、すぐに1時間が過ぎて、結果が発表される。
「合格したのは、俺とティナか。けっこうギリギリだったな」
合格ラインの80点を越えたのは、俺とティナだけだ。
他のみんなは、残念ながら落第。
「うにゃー……あんなテスト、反則だよぉ。わかるわけないって」
「あたしの知性は、テストなんかじゃ計れないわ」
「タニア、それ負け惜しみだからね?」
「そんなことないわよ」
「というか、真っ先に寝るのはどうかと思うよ」
「うぐっ」
カナデにもっともな正論をぶつけられて、タニアがたじろいだ。
本人もどうかと思っていたらしい。
「わたしも……落ちちゃった。ごめん、なさい」
「気にすることはありませんよ。ニーナはよくがんばりました」
「そうなのだ! 落ちたのは我らも同じだから、気にすることないぞ」
しょんぼりとするニーナを、ソラとルナが励ましていた。
「それにしても、ソラとルナも落ちたのは意外だったな。見た感じ、けっこう良い調子だったが」
「ソラ達精霊族は様々な魔法を扱うため、色々な知識を習得しています。なので、テストなどは得意なのですが……」
「人間の歴史問題がまずかったな。あんな問題を出されても、我らにわかるわけがないぞ」
「ああ、そういう」
ソラとルナは頭は良いかもしれないが、その知識が偏っている。
現在も断交している人の歴史なんて、知るはずもないか。
「一番すごいのはティナだよねー。こういったらなんだけど、ちょっと意外かも」
「合格者はレインだけかも、なんて思っていたけど、まさかティナも合格するなんてね。見直したわ」
「カナデもタニアも、そんな褒めんといてな。照れるわ」
「ティナ……すごい、えらい。かっこいい……よ♪」
「おおう、ニーナまで。やばい、めっちゃ恥ずかしくなってきた」
「それにしても、ティナって博識なんだな。どこであんな知識を?」
俺も失敗した、超絶難関の問題もティナはクリアーしていた。
その点数、驚異の100点。
一問もミスしていない、パーフェクトという偉業を叩き出していた。
それほどの知識、どこで手に入れたのか?
興味がある。
「や、大したことやないで? ウチって幽霊やろ。しかも、30年物の幽霊」
「食べものみたいに言うんだな」
「特にやることなくてなー。ヒマな時は、いろんな本を見てたんや。それで、自然とあれこれと覚えた……っていう感じや」
「なるほど」
「にゃー。コツコツと努力を積み重ねた結果なんだね」
「ティナ……すごい、ね!」
「え? いや、その……」
みんなからキラキラとした眼差しを向けられて、ティナがたじろいだ。
恥ずかしそうに頬を染めている。
「単なる暇つぶしで得た知識やから、そんな威張れるようなもんやないし……いや、ホンマ大したことないから! だから、そういう目は……あううう」
「ティナの貴重な照れ顔、ゲットですね」
「ふふん、魔法で記録しておくか?」
――――――――――
「筆記試験で100点だと!?」
「バカな! あのテストの中には、宮廷魔術師ですら解けないような問題が混ざっていたのに……」
「もう一人、合格者が出ているし……なんなんだ、あのパーティーは?」
ざわつく試験官達を見て、セルは軽い笑みを浮かべた。
「まあ、レイン達ならば、これくらいはやってくれるでしょうね」
あのような別れ方になったとはいえ、レイン達のことを嫌っていることはない。
むしろ、今でも好ましいと思っている。
そんなレイン達が評価されるのは、素直にうれしく思う。
この調子なら、レイン達は問題なく昇格試験に合格できるだろう。
同じAランクになる。
その時は、祝いの言葉の一つでも贈りたい。
できれば、アクスと一緒に。
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