表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

193/1168

193話 新しい体

「こんにちは」

「おお、レインじゃないか」


 店に入ると、本を読んでいたガンツがこちらを見て、親しみのある笑顔を浮かべた。

 久しぶりにガンツの店を尋ねたけど……

 以前と比べると、色々と変わっているな。


 まず、店の品揃えが変わっている。

 以前は見た目だけの武器が並んでいたのだけど、今は一目で業物とわかるものだけが並べられている。


 それに、ガンツの雰囲気も、心なしか柔らかくなっていた。

 以前よりも接しやすい。


 以前あった事件のおかげで、色々と変わることができたのだろう。


「どうしたんじゃ、今日は? また何か入り用なのか?」

「いや。ナルカミとカムイの整備を頼みたいんだ。思えば、一度も整備をしてもらっていないし……けっこう酷使しているからな。ここらで一つ、見てもらいたくて」

「なるほど。ちと、見せてくれんか?」


 ガンツにナルカミとカムイを渡した。


「ふむ、ほうほう……これはまた」


 ガンツが苦い顔をした。


「えっと……なにか問題が?」

「大アリじゃ。ちっとやそっとじゃ壊れんように作っておったのじゃが……どちらも、ひどく消耗しておる。いったい、どのような使い方をすれば、こうなるんじゃ?」

「えっと……」


 そんなに乱暴に扱った覚えはないんだけどな?

 ただ、魔族と戦い、スズさんと戦い、イリスと戦い……


 ……十分に乱暴に扱っていたことに気がついた。


「一週間ほどかかるが、問題ないか?」

「ああ、大丈夫だ。頼むよ」

「任された。新品同様に、しっかりとメンテナンスしてやるぞ。ところで……」


 ガンツの視線が俺の脇に向けられる。

 正確に言うと、俺が手に持つヤカンに向けられている。


「なんじゃ、そのヤカンは?」

「ああ、これは……」


 説明しようとしたら、ぼんっ、と煙が吹き出して、それと同時にティナが現れた。


「これはウチのマイホームやで」

「なっ……ゆ、幽霊じゃと?」

「おっちゃん、はじめましてやろ? ウチは、ティナ・ホーリ。レインの旦那のところでお世話になってるもんや。よろしゅうなー」

「……お前さん、最強種だけじゃなくて、幽霊も従えるようになったのか?」

「まあ、色々とあって」


 呆れるようなガンツの視線に、苦笑で応じた。


 ティナと出会い、契約するに至った経緯を軽く説明して……

 それから本題に入る。


「本題なんだけど……なにかこう、ティナの体になるようなもの、ないかな?」

「うん? 幽霊の嬢ちゃんの体じゃと?」

「ティナって幽霊だから、昼は外に出ることができないんだよ。外に出るためには、こうして物に取り憑くしかないんだ。で、今まではヤカンに取り憑いてもらってたんだけど……いつまでもヤカンっていうのも、どうかと思うだろ?」

「なるほどな。まあ、もっともな話じゃな」

「というわけで、なにかないかな?」

「うーむ……とはいえ、儂は武具職人じゃからな。武具以外のものは……」

「そこはガンツの腕を見込んで」

「まったく……そう言われたら、断れんじゃろうが」


 あごのヒゲを撫でるようにしながら、しばらくの間、ガンツは考えるような仕草をとる。

 ややあって、口を開いた。


「ふむ、そうじゃな……一週間後にまた来てくれんか? それまでになんとかしておこう」

「ありがとう、助かるよ」

「なに、ホライズンの英雄様のためなら、これくらいのことはしてやるさ」

「英雄はやめてくれ……」


 わざと言っているであろうガンツに、俺は苦い顔をした。

 そんな俺達を、ティナは楽しそうに見ていた。




――――――――――




 ……そして、一週間後。


「こんにちは」

「邪魔するでー」


 ティナと一緒に、再びガンツの店を尋ねた。


 店内にガンツの姿はない。

 ただ、すぐに俺達に気がついたらしく、奥から姿を見せた。


「おう、レイン達か。ちょうどよかった」


 俺達の姿を認めると、ガンツはナルカミとカムイを取り出した。


「まずは、これらの返却じゃな。新品同様、バッチリメンテナンスしておいたぞ」

「ありがとう、助かるよ」

「なに。これからも、なにかあればすぐに持ってくるといい。儂の作った武具をたくさん使ってくれるのは、職人としてはうれしい限りじゃからな」


 ガンツは気持ちのいい笑みを浮かべる。

 職人としての魂が刺激されているのだろう。


「それと、これは幽霊の嬢ちゃんにだ」


 続けて、ガンツはとあるものを取り出した。


「人形……?」


 それは、小さな人形のようなものだった。

 サイズは、手の平よりも大きいくらいだろうか?

 とても精巧につくられていて、子供が遊びで使うようなものとは違う。


 それに、この人形、どこかで見たような……?


「ん? これ、もしかしてウチ?」

「あっ」


 ティナがそう言って、そのことに気がついた。

 ティナが言うように、この人形はティナに似ていた。

 メイド服を着ているし、顔もそっくりだし……ミニマムサイズのティナだ。


「コイツを嬢ちゃんの新しい体に、と思ったんじゃが……どうじゃ?」

「おーっ、コレがウチの新しい体なん?」

「儂のもてる技術をありったけつぎ込んだ、最新の戦闘人形じゃ。見た目がいいだけではなくて、色々なギミックが仕込まれてて、戦うこともできるぞ」

「おー♪」


 ティナが目をキラキラと輝かせていた。

 そういうの好きそうだもんなあ……


「こんなものを作ってくれるなんて……悪いな。手間じゃなかったか?」

「なーに。たまには、こういうものを作るのも悪くないぞ。それに、職人として試されているみたいで、燃えたからのう」

「ははは」


 実にガンツらしい意見だ。


「なあなあ、さっそくこの体に移ってみてもええ?」

「うむ。嬢ちゃんのために作ったものじゃからな。ぜひ、使ってくれ」

「おおきに」


 ティナの姿が揺らいで……

 霧のようになって、人形に吸い込まれていく。


 そして……


「……お? お? おおおーーー」


 机の上に置かれている人形が、すくっと立ち上がる。

 体の感覚を確かめるように手足を動かして……

 その場でジャンプをしたり、パンチをしたり、声を出したり……ティナがうれしそうにはしゃぐ。


「これ、めっちゃええな! いつもと大して変わらんし、思うように手足が動かせるし……あー、めっちゃええわ。ほんまええわ」


 ええわ、を連発するティナ。

 よほど気に入ったのだろう。


 そんなティナを見て、俺はちょっと反省していた。

 他になかったとはいえ、今まで、ヤカンに取り憑いてもらっていたからなあ……

 もう少しまともなものはなかったのか?

 今更ながら反省である。


「おっちゃん、おおきに!」

「なーに、いいってことよ。レインは上客だからな」

「ってことは、それなりに値が……?」

「これくらいでどうだ?」

「……もうちょっとまからないか?」

「おいおい。嬢ちゃんのためじゃぞ? それなのにケチってどうするんじゃ」

「はあ……そう言われたら、どうしようもないな。わかった、それでいいよ」


 ガンツが提示した金額は、決して安いものではなかったのだけど……

 ティナのためと言われたら、反論することはできなかった。


 まあ、ガンツのことだ。

 ぼったくるようなことはしていないし、むしろ、安くしてくれているのだろう。


 それに、ティナのためにこんな素敵な体を作ってもらったんだ。

 感謝する以外になにもない。


「おー、おー。ほんまええな、この体。なあなあ、レインの旦那。ウチのこと、どう思う?」

「どう、って言われてもなあ……」

「ダメやなー。そこは、かわいいって言わんと」


 そう言いたいところではあるが、見た目人形のティナにかわいいというのは、なんていうか、絵面的にまずいような……?


「なあなあ、レインの旦那」

「うん?」

「ウチのためにいろいろしてくれて、ありがとな♪」


 そんなティナの笑顔に癒やされるのだった。

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[気になる点] 机の上に置かれている人形が、すくっと立ち上がる。 体の感覚を確かめるように手足を動かして…… その場でジャンプをしたり、パンチをしたり、声を出したり……ティナがうれしそうにはしゃぐ。 …
[一言] 夜間じゃないときはヤカンに取り付くわけだwwwwww お腹痛いwwwwwwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ