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165話 ソラとルナの母

「……母上?」


 予想外の言葉に、思わずぽかんとしてしまう。

 他のみんなも似たような反応だ。


 その中で、一番最初に我に返ったタニアが、ソラとルナに問いかける。


「母上って……母さん、っていう意味の母上よね?」

「他のどのような意味があるのだ?」

「バカにしているのですか」

「いや、だって、ねえ?」


 タニアが何か言いたそうにこちらを見てきた。

 まあ、気持ちはわかる。

 ソラとルナの母親がイリスを封印したなんて……

 この世界、狭すぎだろう。


「にゃー……二人のお母さんがイリスを封印していたなんて、びっくりだよ」

「正確に言うと、母さんだけではありません」

「母上一人ではなくて、多数の最強種が見えたな。猫霊族の姿もあったぞ」

「にゃ!? もしかして、私のお母さんも……」

「それはないと思うぞ? 猫霊族の寿命は人と変わらないだろう?」

「あ、それもそうか。うーん……でもでも、お母さんなら……」


 カナデは、スズさんのことを不老長寿だと思っているのだろうか?

 まあ、あの若さを見せつけられたら、そう思ってしまうのも仕方ないかもしれないが。


「とにかく、これで手がかりを手に入れることができたな!」


 ルナが上機嫌に言う。

 魔法が成功したことで、気分が良いのかもしれない。


 そんなルナの言葉に、ニーナが小首を傾げる。


「手がかり……あった?」

「我らの母上が封印をした、ということがわかったのだ。これ以上ないくらいの手がかりだろう?」

「でも……どうやって、話を聞くの……?」

「ん? そんなもの普通に……って、ああ。なるほど。そういうことか」

「ニーナは……というか、みなさん、ひょっとして母さんが死んでいると勘違いしていませんか?」

「え? 違うのか?」


 イリスが封印されたのは百年以上前のことだ。

 普通に考えて、ソラとルナの母親が生きているわけ……


 って、待てよ?

 百年以上前に二人の母親がいたのならば、ソラとルナは百歳以上ということに……?

 でも、実際はそんなことはなくて、二人は14歳で……

 あれ、混乱してきたぞ?


「結局、どういうことなのよ?」


 タニアが焦れったそうに、ソラとルナに問いかけた。


「単純な話なのだ。精霊族は長命なのだ」

「平均的な寿命は500歳です。母さんは300歳くらいなので、イリスを封印した当事者であってもおかしくないんですよ」

「なるほど」

「にゃー……? ということは、ソラとルナは、二人のお母さんが300歳くらいの頃に産んだということで……?」

「あんた、何考えてるわけ?」

「にゃ、にゃんでもないよっ!?」


 タニアに呆れるような視線を向けられて、赤くなったカナデが、なにかをごまかすようにぱたぱたと手を横に振る。


 まあ、その辺は色々と気になるよな。

 カナデの気持ちはわかるぞ。


 って、話が逸れた。


「ソラとルナの母親は、今どこに?」

「ふむ、どこだろうな? 我らが門番をしていた頃は、用事があるとどこかに出かけていたが……」

「おかげで、助けてもらうことができませんでした」

「まあ、その代わりにレイン達に助けてもらえて、出会うことができたから、我はよしと考えておくぞ」

「その点については、ソラも同意しますけどね」

「つまり、ソラとルナのおふくろさんはどこにいるかわからないっちゅーことか?」


 ティナがヤカンの蓋をぱかぱかさせながら問いかけた。

 なぜ、ぱかぱかさせた……?

 口の動きを真似てみたんだろうか?


「里に戻ればわかると思うぞ。誰かが行き先を知っているはずだ」

「あるいは、あれからそれなりの時間が経っているので、もう用事とやらを終えて帰っているかもしれませんしね」

「それはそれで、難しくないか?」


 精霊族の里に足を踏み入れる。

 ソラやルナならば問題ないだろう。

 門番を放り出すということをしているが……

 同族なのだから、拒否されるということはないと思う。


 ただ、人間である俺や他のみんなは、どういう風に扱われるか……


「むぅ、そこが問題なのだ」

「里の入り口へ移動するだけならば、比較的簡単なんですが……」

「そうなん?」

「精霊族の里へ繋がる道は、世界各地にあります。この近くにも、その道の一つがありますよ」

「ただ、そこから先が問題なのだ。我らが他の入り口を守っていたように、絶対に門番がいるからな。まず間違いなく、揉めることになるぞ」

「相手は、多くても5人くらいだと思います。今のソラ達ならば、力づくで制圧することも可能だと思います」

「基本、引きこもりの精霊族は戦いに慣れてないからな」

「引きこもり言わないでください」

「とはいえ、強引に押し通れば、里に入ったところでどんな扱いを受けるか……想像するだけで面倒だぞ」


 俺達は精霊族にケンカを売りに行くわけじゃない。

 ソラとルナの母親に話を聞きたいだけだ。

 その点を強調して、説得することはできないだろうか?


「言っておくが、説得は難しいと思うぞ」


 俺の考えを見透かしたかのように、ルナが言う。


「我ら精霊族は、人間に対してものすっごい偏見を持っているからな。かくいう我も、レインと出会う前は、人間のことをそこらの虫と同じくらいに考えていたぞ」

「そ、そこまでなのか……?」

「人間は木々を伐採する天敵のようなものだからな。それだけ、敵視も強いのだ」

「なので、説得するということは不可能に近いかと思います」

「まいったな」


 ようやく手がかりを得たというのに、それを活かすことができない。

 とはいえ、今から他の手がかりを探している余裕はない。

 どうにかして、ソラとルナの母親と会いたいのだけど……


「我らに任せてくれないか?」


 珍しく……というのもどうかと思うが……ルナが真面目な顔をして、静かに口を開いた。


「何か考えが?」

「我らが仲間を説得してみるのだ」

「それは……」


 難しいのではないか?

 ソラとルナは、門番の仕事を放り出して、勝手に外の世界を旅している身だ。

 同族だとしても、快く思われていないだろう。


「レインの懸念は理解できます。ソラ達の話を聞いてくれるかどうか。なかなかに難しいところがあるでしょう」

「でも、ここで諦めるわけにはいかないのだ。せっかくの手がかり、放り出すわけにはいかないのだ」

「それに、成功する確率は、そこそこあると考えています。まずは説得をして……」

「それでダメなら、我らだけで里に戻る」

「そして、母さんに話を聞いてくる。これならば、問題ないと思いませんか?」

「確かに……」


 今の流れなら、うまくいくかもしれない。

 精霊族も、同族であるソラとルナの帰郷まで妨げるようなことはしないだろう。


 ただ……

 その案を採用すると、完全に二人に任せてしまうことになるんだよな。


 二人を信頼していないというわけじゃない。

 大事な仲間として、これ以上ないくらいに信頼している。


 しかし、何か想定外の事態が起きたら?

 二人だけにしたことで、危険が及ぶようなことになってしまったら?


 どうしても二人の身を案じてしまい、実行に移す決断ができない。

 そうやって迷う俺に、ソラとルナは優しい笑みを見せる。


「主殿よ。我らのことを信頼しているか?」

「ああ、しているよ」

「ならば、今回の件、ソラ達に任せてください」

「任せるということこそが、信頼の証ではないか?」

「そして、信頼された以上、ソラ達は万全を期して事に挑み、また、ご主人様のところへ帰ってくるでしょう」


 まいったな。

 俺の考えていることは全部見透かされていて……

 それでいて、もっと信頼してくれと、軽く説教されてしまった。


 心配性なのかもしれないな、俺は。

 ソラとルナのことを、もっと信じることにしよう。


「わかった。それじゃあ、頼んでもいいか?」

「うむ、任せろなのだ!」

「承りました」


 ソラとルナは、元気よく頷いた。


「それじゃあ、精霊族の里にレッツゴー、なのだ!」

「ルナ、どこへ行こうとしているのですか? そっちは正反対ですよ」

「……ちょっとした間違いなのだ」


 明後日の方向に歩き出そうとしたルナを、ソラが冷静に諌めた。

 恥ずかしかったらしく、ルナは軽く頬を染めていた。


「それで……精霊族の里の入り口はどこに?」

「ここからわりと近いぞ。我ら精霊族にしか感じることのできない、力の流れを感じるのだ」

「おそらく、この山の麓付近に入り口がありますね」

「わかった。とりあえず、入り口の近くまでは一緒に行こう」

「うむ。ではでは、改めてレッツゴー、なのだ!」


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