164話 封印をしたのは誰?
アクスとセルと別れた後……
俺達は、改めて封印の方法を探すことにした。
もう一度、村人から話を聞いて……
村に残っている文献などを調べて……
ありとあらゆる手がかりを求めて奔走する。
その結果……
「ふう……うまくいかないものだな」
村の広場のベンチに座り、ため息をこぼした。
あれこれと調べてみたものの、手がかりが見つからない。
イリスのこと、封印のこと。
表面を知っている人はいても、深いところまで知っている人がいない。
それも仕方ない。
時が経ち過ぎて、誰も覚えていないのだ。
一人二人くらいは……と思っていたのだけど、甘い考えだったらしい。
とはいえ、これくらいで諦めるなんてことはしないし、凹んでもいられない。
イリスは、先の戦いでそれなりのダメージを負った。
今すぐに行動は起こさず、しばらくは傷を癒やすはずだ。
だから、すぐに討伐隊と激突することはないと思うが……
それでも、のんびりしていられない。
時間がないことは確かなので……
今できることを確実に、迅速に行っていかないといけない。
「レイン」
振り返ると、カナデとみんなの姿が。
カナデがコップを持っていて、こちらに差し出してきた。
「喉かわいてない? 冷たい水、もらってきたよ」
「ありがとう」
冷たい水を喉に流し込む。
頭がスッキリして、力が湧いてきた。
「よしっ」
休憩終了!
もう少しがんばるとするか。
「みんなの方はどうだった?」
別行動をとり、バラバラに調査をしていたのだけど……
成果はあったのだろうか?
期待を込めて尋ねてみるが、
「にゃあ……ごめんだよ。特に何も……」
カナデの尻尾がへにゃりと垂れ下がる。
他のみんなも難しい顔をして、首を横に振る。
「そっか……」
「ごめんね」
「謝ることはないさ。カナデやみんなが悪い、っていうわけじゃないんだから」
でも……どうしたものか。
調査を諦めるつもりはないけど、こうも手がかりがないと、行動の指針を立てることすらできない。
なんでもいいから、手がかりがあればいいんだけど……
「……レイン、ちょっとした提案があるのだ」
迷うような間を置いてから、ルナが口を開いた。
「誰が封印を施したのか……それを調べてみるのはどうなのだ?」
「調べられるのなら調べたいが……方法は?」
「我がスペシャルな魔法を使おう」
「ルナ。それでは説明になっていませんよ」
「なに!? 今のでわからないのか!?」
「わかるわけないでしょう。この駄妹」
「駄妹!?」
ソラの辛辣なツッコミに、ルナはガーンとショックを受けていた。
それにしても、どこかで聞いたような鋭いツッコミだ。
「えっと……どういうことなんだ? 詳しく説明してほしい」
「うむ。封印の跡地に行った時のことを覚えているか? あの時、あそこで見つけた冒険者の死体の記憶を探る魔法を使っただろう?」
「そうだな。つい先日のことだから、ちゃんと覚えているよ」
「あの魔法の応用で、封印の跡地の記憶を探る。その場の記憶を遡り、誰が封印を施したのか探ってみようと思う」
「あんた、そんな魔法が使えるわけ!? それならそうと、もっと早く言いなさいよ」
タニアのもっともな言葉に、しかし、ルナは難しそうな顔で反論する。
「記憶を探る魔法は、過去へ戻る時間が長ければ長いほど難しいのだ。イリスが封印されたのは、百年以上前……そんなに昔の記憶を探るというのは、我もやったことがない。失敗する可能性が高いから、変に期待させるのもどうかと思い、黙っていたのだ」
「ですが、今は他に手がかりがない様子。他に手がないのならば……と、提案してみることにしました。まあ、失敗すれば、無駄に時間をかけてしまいますが……どうしますか?」
「ふむ」
二人の言葉を受けて、頭の中で考えをまとめる。
過去の記憶を探り、誰が封印を施したのか調べる。
それが可能ならば、大きな手がかりを手に入れられるかもしれない。
でも、確実なものとはいえないし……
失敗して、貴重な時間を失ってしまう可能性もある。
「……他に手がかりもない。やれるだけのことはやってみよう。ソラ、ルナ。頼めるか?」
「はい、わかりました」
「ふはははっ、我に任せるがいいぞ!」
――――――――――
パゴスの村跡へ移動して、そのまま山へ。
一度、足を運んだところなので、二度目はスムーズに移動することができた。
ほどなくして、封印の祠があった場所に辿り着いた。
「さて! 我の活躍を見せる時がやってきたぞ!」
「何か手伝えることはないか?」
「百年以上前の記憶を探るのは、ものすごく時間がかかるのだ。だから、我らを守ってほしいぞ」
「魔法を使っている間は、どうしても無防備になってしまうので。お願いできますか?」
「もちろん」
ソラとルナのことは、この身に代えても守る。
「ちなみに、どれくらいかかるわけ?」
「んー……たぶん、1時間くらいなのだ!」
「そんなに? けっこう長いわね……」
「それくらい大変なことなのだ」
「なるほどね。ま、がんばりなさい。あんたらのことは、あたしがきちんと守ってあげるから」
タニアが頼もしいことを言ってくれる。
カナデやニーナ、ティナもやる気たっぷりといった様子だった。
「じゃあ、始めるのだ」
「ソラ達が魔法を使っている間、よろしくおねがいします」
ソラとルナが、祠の跡の左右に立つ。
壊れた祠に手の平を向けて、魔法を詠唱する。
光の粒子が手の平からあふれて、壊れた祠を包み込んだ。
「さて……後は任せて、俺達はやることをやるか!」
「おーっ!」
カナデが元気よく返事をして……
俺達はソラとルナを中心に円陣を組んで、何が起きてもいいように待機した。
――――――――――
「ふっ」
熊と酷似した魔物の一撃を、腕を盾にして受け止めた。
多少、痺れるものの怪我はない。
「重力操作!」
魔物が第二撃を放とうとしたところで、重力を操作して、その体に過負荷をかけた。
魔物の動きが鈍る。
「はぁっ!」
その隙を逃すことなく、下から上へ、魔物の顎を膝で打ち抜いた。
巨体がぐらりと揺れて、そのまま地面に倒れる。
やがて、霧が晴れるように体が消えて、魔石が残される。
「ふう……こんなところか」
魔物の群れに見つかり交戦することになった。
ソラとルナを守りながらの戦いで、多少、緊張はしたけれど……
スズさんの特訓を受けた俺達が、そこらの魔物に遅れをとるわけがない。
きちんとソラとルナを守り、魔物達を殲滅させた。
「にゃー。レイン、おつかれさま」
「カナデもおつかれさま。みんなもおつかれさま。大丈夫か?」
「ええ。これくらい、なんてことないわ」
「ん……平気、だよ」
「ウチ、体力には自信あるで」
タニアとニーナとティナが、元気な様子で応える。
この分なら、特に問題なさそうだ。
とはいえ、これがずっと続くとなると辛い。
ソラとルナを守りながら戦うというのは、それなりに神経を使うからな。
自覚していないだけで、疲労が溜まっている可能性が高い。
ソラとルナが魔法を使い始めて、そろそろ一時間が経つ。
できれば、そろそろ終わってほしいのだけど……
……と。
そんな祈りが通じたのか、ソラとルナの手からあふれる光の粒子が消えた。
「……ふう」
「……疲れました」
二人は吐息をこぼしながら、そっと祠の跡から離れた。
「おつかれさま」
「うぅ、疲れたのだー……レイン、我を甘やかしてくれー」
「あ、ずるいですよ、ルナ」
ルナがふらふらしながら抱きついてきた。
それに続いて、ソラも抱きついてくる。
二人をしっかりと受け止めながら、ねぎらうようにその頭を撫でた。
「ありがとな、ここまでしてくれて。本当に助かるよ」
「なんの。我が主殿のためなのだ」
「ご主人様のためならば、ソラはがんばりますよ?」
「うにゃー……二人はおつかれだから、甘えるのは仕方ないこと……仕方ないことなんだよ、うん……」
なぜか、カナデが複雑な表情をしてじっとこちらを見つめていた。
「それで、何か見えたわけ?」
タニアがちょっと焦れた様子で二人に尋ねた。
「うむ。見えたには見えたが……」
いつも物事をハッキリと言うルナが、珍しく口ごもった。
とんでもないものが見えたのだろうか?
自然と身構えてしまう。
「魔法は成功したのだ。我らは、この祠にイリスを封印するところを見ることができた」
「やるじゃない。で、それは誰だったの? 見覚えがある人だった?」
「うむ、それが……」
迷うように視線を揺らしてから……ルナは、戸惑い気味に口を開いた。
「……母上だった」
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