表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

157/1167

157話 イリスの過去・1

「普通の人間とは違う、って言われてもな……俺は普通の」


 そこまで言いかけて、カナデやみんなからいつも言われていることを思い出した。


「……ちょっと変わったビーストテイマーにすぎないぞ?」


 そんな風に言い直しておいた。

 あまり自覚はないんだけど……

 俺みたいなビーストテイマーは、ほとんどいないらしいからな。


「ふぅん?」


 イリスがなおもじっと俺の顔を見る。


「レインさまが普通、ですか。そんなことを言われたら、普通の定義を疑ってしまいたくなりますが」

「そんなことを言われてもな……ビーストテイマーとしては特殊かもしれないが、その他は何もないぞ?」

「本当に?」

「何を疑っているのか知らないが、ウソはついていないぞ」

「なるほど、なるほど。わたくしの勘が鈍ってしまったのか、それとも……レインさまが知らないだけなのか」


 イリスがさらに顔を近づけてきた。


 綺麗な顔が目の前に……

 不思議とドキドキすることはなくて、なぜか落ち着いた。


「これは、わたくしの感覚の話なのですが……レインさまは、あの勇者と似ていますわね」

「えぇ……」


 たぶん、今の俺は、おもいきりイヤそうな顔をしているだろう。


「あら、イヤそうな顔をしていますわね」

「アリオスと一緒にされてもな……」

「性格、雰囲気などが同じ、というわけではありませんわ。そうですね、なんといえばいいのでしょうか……魂が似ている、とでもいえばいいのでしょうか」

「魂が……? それって、結局似た者同士、っていうことにならないか?」

「いえ、いえ。ぜんぜん違いますわ。魂はその者の根源を指すもの。性格や雰囲気などはまったく関係ありませんわ。その者の霊的資質を表すものですから、表面上の問題などではなくて、もっと根源的な……」

「悪い。難しい話はわからない」

「くすっ、時間はたくさんあるのですから、ゆっくりと講義いたしましょうか?」

「勘弁してくれ……」


 イリスがいらずらっ子のように笑い、俺は降参とばかりに手をあげた。


 ホント……こうしていると、普通の子と変わらないんだよな。

 なにがここまで、イリスを歪めてしまったのだろう?


「まあ、簡単に言うと『血』でしょうか」

「血?」

「レインさまの体に流れている血と、あの勇者に流れている血……それはひどく似ていますわ」

「そんなこと……」


 アリオスは勇者だ。

 そして、勇者は血筋によって選ばれる。


 そんなアリオスと似ていると言われたら、それは……


「まあ、確たる証拠があるわけではなく、わたくしの勘ですので。あまり深く考えないよう」

「……そうか」


 と言われても、簡単に忘れることはできない。

 イリスはつまらないウソをつくような性格はしていないと思う。

 こんなウソをついても、イリスにメリットがまるでないし……


 本当のこと、なのだろうか……?

 あとで真面目に考えてみる必要があるかもな。


 ……それよりも。


 今はイリスのことだ。

 せっかく、こうして話ができるんだ。

 もっともっと、色々な話をしたい。

 イリスのことを知りたい。


「聞いてもいいか?」

「はい、なんでしょうか?」

「どうして、人を殺そうとするんだ? いや……どうして、人が憎いんだ?」

「……」

「何か理由があるんだろ?」

「あら。わたくしにそのようなことを聞きますか? わたくしのことだから、理由なんてないかもしれませんわよ? ただ単に、暇つぶしにしているだけなのかも。そう……子供が意味もなくアリをつぶすように」

「イリスはそんな子じゃないよ」

「出会ったばかりなのに、どうしてそう言い切れるのでしょうか?」

「勘かな」


 イリスの言葉を借りてみた。


「あと、俺の願望も混じっているかもしれない」

「……」

「やっぱり、イリスとは戦いたくない。というか、このまま戦っていいのか迷っている。ただ単純に、魔族のような人類の敵、って断言することができないんだ。以前、魔族と戦ったことがあるんだけど……連中は意味もなく人を殺し、そうすることが当たり前のように破壊を撒き散らした」

「それが普通ですわね。魔族とは、己以外の生き物を認めませんから」

「でも、イリスは違う。なにかしら理由があって、人と戦うことを選んだように見える。何か強い理由があって……それで、敵対することを選んだ」

「……」

「違うか?」

「……正解ですわ」


 イリスは、意外とあっさりと認めた。


「レインさまの言う通りですわ。わたくしは、魔族とは違います。意味もなく人を殺すようなことはしませんわ」

「なら……」

「ですが、意味があるのならば……ためらうことなく殺します」


 イリスが笑う。

 その笑みは憎悪と狂気で満ちていた。


「……どうして」

「はい?」

「どうして、イリスはそんな風に? なにがイリスを駆り立てているんだ?」

「それを知って、どうするのですか?」

「わからない……ただ、知りたいんだ」


 じっとイリスのことを見つめた。


「希望的観測かもしれないけど……原因がわかれば、ひょっとしたら和解できるかもしれない」

「ありえませんわ」


 即答された。

 断言された。


 イリスの強い意思を感じられる。

 絶対に人を許してたまるか。

 そう言っているように聞こえた。


「ですが……レインさまは、このような答えでは納得しないのでしょうね」

「まあ、できないかもな。できることなら、イリスの口から真実を聞きたい」


 迷うような間。

 ややあって、イリスが小さな吐息をこぼした。


「ふう……強引な方。そこまで言われたら、仕方ないですわね」

「じゃあ……」

「ですが、勘違いなさらないように。話をするのは、わたくしのことを理解してもらうためでも、和解するためでもありませんわ。私が抱いているものを知り……諦めてもらうため。和解などは決してありえないと知ってもらうため。そのために話をするのですわ」

「それでも、聞かせてくれないか?」

「ふふっ……話をするのはちょっとうんざりしてしまいますが……ですが、強引な殿方は嫌いじゃありませんわ」


 くすりと笑い、イリスが俺から離れた。


 そのまま村の外れに移動する。

 俺もその後をゆっくりと追いかけた。


「レインさまには、家族はいらっしゃいますか?」


 俺に背を向けたまま、イリスは静かな声で問いかけてきた。


「いや。けっこう前に、魔物に襲われて死んだよ」

「そうでしたか……失礼しました。嫌なことを聞いてしまいましたね」

「構わないよ。一応、心の整理はついているから」

「そう言ってくださると、助かりますわ」


 イリスが微笑んだような気がした。

 こちらに背を向けているから、あくまでも『ような気がした』……だ。


「レインさまに抱いている親近感の理由の一つが、わかったような気がしますわ」

「それは……?」

「わたくしも、家族を全て失っていますの」


 イリスの声に、わずかな悲しみを感じられた。


 とても人間臭い感情に、こんな時になんだけど、イリスに親しみを覚えた。

 やっぱり、イリスも家族を失うと悲しむものなんだ。

 俺達、人と変わらない。


「……それは、天族に関わる話なのか?」


 少し迷ったけれど、踏み込んでみることにした。


 絶滅したと言われている最強種。

 なぜ絶滅したのか。

 なぜ姿を消したのか。

 それは明らかにされていない。


 ふと思う。


 もしも、天族が絶滅した理由に人が関わっているとしたら……?

 だとしたら、イリスの憎しみも納得できた。


「わたくしのことを話す前に……まずは、わたくし達天族についてお話しましょうか」


 イリスが振り返る。

 その顔は、不自然なほどに穏やかなものだった。


「レインさまは、わたくし達天族について、どれほどのことを知っていますか?」

「そうだな……ほとんど知らない、っていうのが本当のところかな。滅んだといわれてけっこう経っているし……滅んだ理由も明らかになっていない。何もわからないのが現状、っていうところだ」

「なるほど、なるほど。そういうことになっているのですか……」


 イリスが軽く爪を噛んだ。


「自分達に都合の悪いことは消す……なるほど、なるほど。いかにも人間が考えそうなことですわね」

「それは、どういう意味なんだ?」

「どういうことだと思いますか?」


 逆に問いかけられた。


 イリスは何を知っている?

 何を見てきた?


 それらを推察して、考える。

 やがて……俺は、一つの答えにたどり着いた。


「……天族が絶滅したのは、人が関わっている?」

「正解ですわ」

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ