表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

146/1096

146話 最凶との戦い・3

 二人のイリス。

 それと、魔物の群れが一斉に襲いかかってきた。


「アリオスっ、そっちでイリスを一人頼む! アクスとセル、それとソラとルナは魔物の群れを! もう一人のイリスは俺達が迎え撃つ!」

「君の指示など……!」

「そんなことを言ってる場合か!」

「くっ、仕方ない!」


 アリオスは舌打ちを一つ。

 それから、アッガス達を連れてイリスの迎撃にあたる。


 イリスの力は底が知れないけれど……

 アリオスも『勇者』の名を持つパーティーだ。

 相手を侮ることなく、冷静に戦うことができれば、最強種が相手でもなんとかなるはずだ。


「アクスとセルは……」

「おうっ、魔物の相手だな?」

「横やりは入れさせないわ。私達に任せて」


 頼もしい返事が返ってきた。


「頼む。ソラとルナをそっちに回すから……ソラ、ルナ。いけるな?」

「はい。問題ありません」

「ふふん、我らだけで問題ないくらいだが……まあ、たまには援護に回るのも悪くないぞ」


 二人は大丈夫というように、しっかりと頷いてみせた。

 それにしても、ルナの態度が、近頃タニアに似てきた気がする。

 感化されてるのかな?


 カナデ、タニアに声をかける。


「俺達はイリスを迎え撃つぞ!」

「にゃんっ!」

「ええ、了解よ!」

「ニーナとティナは二人ワンセットで行動! 合間を縫って、サポートを頼むっ」

「ん……がん、ばる!」

「任せときー!」


 ニーナはヤカンをしっかりと抱えながら、強い顔をした。

 出会った頃は儚く簡単に消えてしまいそうに見えたけど……

 今はとても頼もしい存在に見える。


「いくぞっ!」




――――――――――




「へへっ、ようやく俺の活躍を見せる時が来たな」


 アクスは腰に下げている剣に手を伸ばした。


 鞘に収められている状態でも、刀身が普通のものより細いことが見てわかる。

 また、わずかに湾曲しており、独特の形状をしていた。

 東大陸だけで作られているという『カタナ』だ。


 迫りくる魔物の群れを前に、アクスは怯むことなく……むしろ、楽しそうに笑う。

 剣の柄を握り、納刀した状態で構える。

 軽く前かがみに。

 それでいて、いつでも踏み込めるように、片足は前に。


 東大陸のみに伝わる剣技の『抜刀』と呼ばれる技術だ。


「ここで良いところを見せれば、セルも俺の魅力に気づいて……よし、やる気が出てきた! 見ていろよ、魔物共! ここから先は通さないぜ! この俺がいる限り……」

「「ドラグーンハウリング!!」」

「……」


 なにやらアクスが前口上を口にしたところで、横から、ソラとルナの魔法が炸裂した。

 竜の咆哮に似た衝撃波が魔物の群れを飲み込む。


「俺の出番が……」


 なにやらアクスが肩を落とすけれど、そのことに気がついた様子はなく、ルナが高笑いする。


「ふっはっは! 見たか、我らの力を!」

「ルナ、油断してはいけません。あまり効いていないみたいですよ」

「むぅ? なかなかやるではないか」

「次は威力を集中させますよ」

「がってんしょうち、なのだ!」

「インフェルノバースト!」

「テンペストエッジ!」


 再び、ソラとルナの魔法が炸裂した。

 紅蓮の炎の竜巻が魔物の先頭集団を飲み込み……

 さらに、そこへ真空の刃が乱舞する。


 炎と風の合体攻撃に、今度こそ魔物は沈黙した。


 しかし、それは一部にすぎない。

 後方には山程の魔物の群れがいた。


「むぅ、めんどくさいのだ。超級魔法でまとめて吹き飛ばしてもいいか?」

「ダメですよ。そんなものを使ったら、村まで巻き込んでしまいます」

「地味にやっていくしかないなんて、めんどうなのだ……でも、やるしかないのだ!」

「その意気ですよ」


 ソラとルナは小さく笑顔を交わして、

 続けて、魔物の群れを睨みつける。


「アブソリュートストライク!」


 魔物達の進軍を制止するように、空から氷塊が降り注いだ。

 魔物達を押しつぶして、氷漬けにして、その足を止める。


 それでも、全ての魔物の足を止めることはできない。

 着弾を免れた魔物達は、悶え苦しむ仲間達を振り返ることもなく、ソラとルナへ突撃する。


 が、それはルナの予想の範囲内だった。


「ふふーん、単純なヤツらなのだ。ソラに誘導されて、とある箇所に集められているとも知らず」

「解説はいいから、早くしてください」

「うむ。任せろなのだ!」


 ルナの手に光が集まる。

 それを魔物達に向けて、力ある言葉を紡ぐ。


「フラッシュインパクト!」


 光と衝撃波が炸裂した。

 それらは突出していた魔物の先頭集団を飲み込む。


 ルナがよく好んで使う広範囲魔法だ。

 複数の相手を衝撃波で打ち倒すことができる。


 ただ、今回ルナは、魔法をアレンジしていた。

 範囲を通常よりも狭く絞ることで、逆に威力を上昇させる。

 通常の何倍もの出力を叩き出していた。


 ただ魔法を唱えるだけではなくて、その構造式に手を加えて、内容をアレンジする。

 スズとの特訓で身につけた力だった。


 そして……

 ソラも新しい力を手に入れていた。


 右手を魔物に向ける。


「ヴォルテクスランス!」


 左手を魔物に向ける。


「イグニートランス!」


 紫電と紅蓮の槍が放たれた。


 複数の魔法の同時使用……それが、ソラの得た新しい力だ。


 常人には考えられない力だ。

 魔法を使うには、構造式を頭の中で構築する必要がある。

 それは膨大な精神力が必要とされて、普通は、一つを構築するので精一杯だ。


 レインが使用する重複詠唱とはまた違う力だ。

 あちらは一つの魔法を複数回、同時に展開する力。

 対するこちらは、複数の魔法を一度に同時に展開する力……ということになる。


 しかし、ソラは二つ同時に構築する方法を思いついた。

 密かに練習を繰り返して、その技術を己のものにした。

 これも、スズとの特訓で得た成果だ。


「ぬわっ、なんなのだ、それは!?」


 ソラの魔法同時詠唱を目の当たりにして、ルナが驚いた。

 そんな妹の反応に、ソラはニヤリと笑う。


「ふふふ、これがソラの切り札ですよ」

「二つの魔法を同時に使用……? まさか、そのようなことが……」


 ルナは驚いていた。

 精霊族のルナでさえ驚くほどの技術なのだ。


「ど、どうすればそんなことができるのだ!?」

「教えてほしいですか?」

「教えてほしいぞ!」

「でも、教えません」

「むきゃーーー、なのだ!!」


 じたばたと暴れるルナを見て、ソラは優越感に浸る。

 日頃、なにかと小生意気な妹に、姉としての威厳を見せつけることができた。

 ああ、なんて気持ちいいのだろう。


 ……戦いの最中だというのに、そんなことを考えていた。


「グルァッ!」


 そんな二人の隙を狙うように、犬型の魔物が飛びかかる。

『よかった』『続きが気になる』など思っていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ お知らせ ◇◆◇
既存の作品を大幅にリファインして、新作を書いてみました。

娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!

こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ