1168話 正々堂々と……?
「これより竜族の掟に従い、互いの誇りをかけた決闘を行う」
進行を務める竜族が厳粛に言う。
彼はグローヴェインの関係者ではない、とミルアさんが言っていたが……
でも、安心はできないな。
もしかしたらなにかしらの手を仕込んでいるかもしれない。
できる限りの警戒をしておいた方がいい。
「勝敗は、相手を行動不能にすること。あるいは、降参を認める。そして、その命を奪うこと」
ずいぶんと過激なルールなのだけど、竜族にとってはこれが普通らしい。
力こそ正義、というような種族。
故に、その力を証明することに己の全てをかけていて……
こうした場で命をかけることは愚かなことではなくて、むしろ、自分の全てを差し出してでも挑むことこそが誇りとされているとか。
少しだけわかるような気がした。
命のやりとりは理解できないけど……
ただ、そこまでしてやり遂げなければいけない、という気持ちはわかるつもりだ。
それくらいの覚悟、信念が必要、っていうことだよな。
「……以上が決闘のルールの全てとなる」
逃亡などは戦意喪失として敗者となる。
誇りにかけた戦いをすること。
見届人に手を出すことは許されない。
……などなど。
その後はわりと一般的なルールが説明された。
誇りにかけた戦い、っていうのは卑怯なことはしない、っていうことだと思うのだけど……さて。
それは、グローヴェインはどう受け止めるのか?
「双方、異論は?」
「ありません」
「ない」
俺とグローヴェインがほぼ同時に頷いた。
「では、構え」
続けて同時に構える。
互いに武器はなし。
竜族を相手に生半可な武器は通用しないと思うので、今回は千鳥はなしだ。
「今回の決闘……」
ふと、グローヴェインが口を開く。
「私は負けるつもりはない。しかし、それは貴殿も同じなのだろう?」
「もちろんだ」
「ふむ……人間にしては悪くない目だ。やはり、英雄と呼ばれているだけのことはあるな」
急に褒められて、嬉しいというよりは戸惑いしかない。
「しかし、我が力に及ぶことはない。己の世界がいかに小さいか、そのことを知るといい」
「その言葉、そのまま返す」
「ほう……私を相手にそこまでの言葉を紡ぐことができるか。面白い。実に興味深いな……どうだろう? この後、私に仕えるつもりはないだろうか?」
「え?」
「人間ではあるものの、それだけ貴殿のことを評価しているつもりだ。私の心意気を感じてほしい」
正気か?
これから決闘だというのに、その相手を勧誘するとか。
自分が負けることを欠片も感じていない。
その上で、相手を傘下に加えるという器が広いぞ、というところを周囲に見せつけて……
いや。
たぶん、これは無意識なんだろうな。
意図的なものではなくて、結果として、周囲に見せつけているだけ。
本人は思ったことをそのまま口にしているだけ。
そんな印象を受けた。
そんなことをスマートに、ストレートに行動に出すことができるのは、実のところなかなかできることじゃない。
大抵は打算とか下心とか、そういうものが加わり、破綻してしまう。
しかし、グローヴェインの場合はそれがない。
逆に一種のカリスマのようなものを感じるほど。
なるほど。
この辺りが、彼が慕われる理由なのだろう。
親譲りなのか、自力で積み上げてきたものかそれはわからないが、ただの常人というわけではなさそうだ。
「せっかくだけど、遠慮しておくよ」
「ふむ。英雄は人の下につかないか?」
「そういうものじゃなくて……まあ、俺は自由にやれるのが一番だから」
こちらも、ある程度の本心をぶつけてみた。
冒険者という、それなりに気楽な立場が一番良い。
自分のペースで動くのが一番。
誰かの下につけば色々と振り回されるだろうから、それはあまり好きじゃない。
「そうか、惜しいな」
本当に惜しそうにグローヴェインが言う。
「ただ、心変わりをさせてみせようではないか。この決闘で力の差を見せつけて、私のことをよく知ってもらおう。そうすれば、貴殿も考えを変えるだろう」
「悪いが、そうはならない」
強く。
強く言う。
「タニアを狙っている以上……あなたは、俺の敵だ」
◇ お知らせ ◇
新作はじめました。
『最強だけどバズりたくない陰キャダンジョン配信者と、放っておけないアイドル配信者』
二人の女の子のダンジョン配信ものです。
よかったら読んでみてください→https://ncode.syosetu.com/n7272lv/




