1163話 とある部門のエキスパート
まだ可能性の話だけど、グローヴェインはタニアとの決闘の際、なにかしらの魔道具を使用したかもしれない。
それでタニアの力を奪い、決闘に勝利した。
その予想が正しいとして……
だとしたら、俺との決闘の際も、グローヴェインは同じ魔道具を使用してくるだろう。
俺は能力を奪われてしまい敗北……なんてことになりかねない。
それを避けるために、魔道具対策は必須なのだけど……
魔道具の種類がわからないとどうしようもない。
なんの情報もなしに未知の魔物と戦うような無理難題だ。
それなのに。
「エーデルワイスは対処が可能……と?」
「ああ」
エーデルワイスは自信たっぷりに頷いた。
それから、ちらりと視線を横にやる。
その視線の先にいたのは……コハネだ。
「ただし、やるのは私ではなくてコハネだがな」
「コハネが?」
この展開を予想していたらしく、コハネに驚きはない。
「はい、そういうことならばわたくしにお任せください」
「頼もしいけど……ただ、まだ魔道具って決まったわけじゃない。魔道具だとしても、その種類を突き止めるところから始めないと」
「おそらくは魔道具でしょう。他に類する魔法や能力は確かにありますが、竜族が扱うことはないでしょう。魔道具が使われている確率……87パーセントでございます」
「おぉ……なんか、コハネが知的キャラみたいだよ!?」
「そりゃカナデとは違うもの」
「にゃんですと!?」
「しかし、魔道具と断定しても、対処は難しいのだ」
「まずは、大まかなものでもいいので、種類を突き止めないとですね」
「いえ、それも必要ありません」
「「え」」
ソラとルナがきょとんとした。
「現状の情報を整理した結果、グローヴェインという竜族が使っているであろう魔道具の特定……完了いたしました。場の魔力を乱し、その力場に巻き込むことで対象の魔力も乱す……魔力は体の一部のようなもの。軽くならば問題ありませんが、大きく乱れると本来の力を発揮することは難しく、能力も使用できないでしょう。そのような魔道具に心当たりがあります」
「さすがコハネの姐御っす!」
「疑うわけやないんやけど、その推理が間違っている、ってことは?」
「96パーセントの確率で的中しているかと」
「高っ」
「もちろん、外れている可能性もございます。なので、わたくしが思いつく限りの対策を練りましょう」
「つまり……?」
「『相手の能力を制限する』という魔道具に対するカウンター魔道具……そちらを製作いたしましょう。ありとあらゆる方法に対処できるように、考えられる限りのカウンター措置を施して」
つまり……
敵がなにかしらの魔道具を使用していることは、ほぼほぼ確定。
ただ、種類がわからない。
コハネはこう言う。
種類がわからないけど、全ての種類をカバーできるようなカウンター装置を作ればいい……と。
無茶苦茶な話だった。
一つの魔道具で、物理と魔法と精神干渉、全てを防ぐようなものだ。
現実的に考えてありえないのだけど……
「主さま、許可をいただけますか?」
「ああ、頼むよ」
「はい、かしこりましました」
コハネなら、わりとあっさりと作ってしまうんだろうな。
そういう方面に関してはエキスパート。
誰も追随することができないというか……
たぶん、遥か先を行っている。
キカイ? という力を使っているコハネからしたら、新しい魔道具の開発も。
複数の能力に対抗するカウンター装置を作ることも、わりと簡単なことなのだろう。
「でも、いいのか?」
コハネは世界の管理者だ。
世界の秩序と維持が目的であり、必要以上の干渉は望まない。
カウンター装置を作ったら、けっこうな干渉になってしまうと思うのだけど。
「条件付きではありますが、問題ありません」
「その条件とは、なんなのだ?」
「決闘が終了した後、破壊していただくこと、です」
なるほど。
今回はタニアのために例外を設けるものの、その例外をずっと放置するわけにはいかない。
カウンター装置を破壊することでなかったことにして、帳尻を合わせるわけか。
「わかった。ちゃんと壊すって約束するよ」
「ありがとうございます」
「あたしのブレスで粉々にするわ」
「私のパンチでもいいよ」
壊す話になると、なぜかタニアとカナデが嬉しそうに言う。
……気のせいだよな?




