1156話 ちょっと……いや、けっこうおかしい
「ぐっ……!」
ミルアさんの突撃を真正面から受け止めた。
重い、痛い、苦しい。
押し負けてしまいそうになるけど、とにかく気合で耐えた。
「飛んで……」
ちょっと失礼ではあるが、ミルアさんの角を両手で掴んだ。
「……いけぇえええええっ!!!」
「ぴゃあああああっ!?!?!?」
ミルアさんを空高く放り投げた。
先と同じく、本気の突撃を止められるとは思っていなかったのだろう。
わりと簡単に投げることができた。
そうやって意表を突くために、あえて突撃を受け止めた。
けっこうな荒業で失敗する確率も高かったと思うけど、それでもやるべきと判断した。
……それくらいのリスクを負わないとミルアさんに勝つことはできないからな。
「ファイアボール・マルチショット!」
追撃で複数の火球。
ミルアさんが爆炎に包まれる。
「ギガボルト!」
さらに雷撃の魔法を叩き込んだ。
ライハと契約したことで使えるようになった魔法だ。
爆炎に向けて放ったものだから、直撃したかどうかはわからない。
ただ、ある程度の追尾性はあるから、完全に外してはいないだろう。
ある程度の隙ができた。
……たとえば、ここでエーデルワイスと契約したことで得た能力を使えば?
一時的に俺も魔王と同等の力を使うことができる能力だ。
ただ、さすがにあれは危険だ。
鍛錬を積んで、それなりに制御できるようになってきたけれど……
でも威力のコントロールはまだうまくいかない。
やりすぎてミルアさんを殺してしまうかもしれない。
なので、別の方法を取ることにした。
「ふっふっふ、やるね、レインくん!」
ミルアさんは翼をバサッと広げて、その勢いで爆炎や雷撃を振り払った。
ちょっと焦げているもののダメージはなさそうだ。
さすがミルアさんだ。
攻撃力だけじゃなくて防御力も半端じゃない。
適当な攻撃は通用しないだろう。
だから……ダメージを与えることは諦めた。
「よーし、今度は私の番だね。いっくよー!」
ミルアさんは翼を大きく羽ばたかせて、勢いよく急降下してきた。
空からの一撃。
まるで首を刈り取る死神のようだ。
実際、なにもせずに直撃したら死んでしまうだろう。
「ちょっと母さん!?」
タニアも理解しているらしく慌てていた。
ただ、俺は特に慌てていない。
ミルアさんは、俺なら問題ない、と信頼してくれているのだろう。
大丈夫。
その期待は裏切らない。
そして、タニアやみんなを心配させることも悲しませることもない。
「でぇえええええいっ!!!」
ミルアさんの空からの一撃。
俺は大きく後ろに跳んで回避した。
ミルアさんはそのまま地面に突撃。
拳が大地に突き刺さり、局地的な地震が起きたかのように地面が揺れて、爆ぜた。
そこで攻撃を止めることはない。
砕けて散る破片を蹴り、再び突撃。
飛び蹴りをかましてくる。
これも必殺。
最初の突撃とは比べ物にならないほどの力が込められていて、当たれば死んでしまうだろう。
たぶん、防ぐことも難しい。
なら避けるしかないのだけど、あまりにも速すぎてすでに手遅れだ。
なので……
「重力操作」
「ふぎゃん!?」
ミルアさんの方で攻撃を外してもらうことにした。
ミルアさんにかかる重力を操作して、軌道を強引に変える。
妙な悲鳴をあげつつ、ミルアさんは明後日の方向にかっとんでいった。




