1154話 特訓!!!
あれから数時間。
笑顔のミルアさんが戻ってきた。
『話をしてきたよ。みんな、快諾してくれたよー!』
なんてことを言っていたのだけど。
拳とか頬とか、そんなところに少し血がついていたような気がするのだけど、それは見なかったことにした。
うん。
俺はなにも見ていない。
そして……
「……うん」
里から少し離れたところにある広場。
そこに移動した俺達は、軽く体を動かしてウォームアップを終えた。
「おまたせしました」
「大丈夫だよ。しっかり準備運動しておかないと怪我をしちゃうからね」
対峙するのはミルアさん。
不敵な笑顔を浮かべつつ、拳をぎゅっとしている。
これから俺はミルアさんと戦う。
といっても、仲違いをしたとかそういうわけじゃない。
稽古をつけてもらうことになったのだ。
三日後。
俺は、タニアを狙う竜族と決闘を行うことになった。
ミルアさんの穏便な話……穏便?
とにかく、ミルアさんが話をつけてくれたことで正式に決定された。
もちろん、負けるつもりはないけど……
とはいえ、相手は竜族。
最強種だ。
油断は禁物。
もしかしたら、とんでもない切り札を持っているかもしれない。
楽して勝ちたいというだけで、実はとんでもない力を持っているかもしれない。
万全をもって挑むべき。
なので、ミルアさんに稽古をつけてもらうことに。
「レインー! がんばってー!」
「母さん相手だからって遠慮しないでいいわよ!」
「ふぁい、と」
「二人共、あまり無茶せんようにな」
「アニキを応援したいっすけど、でもでも、タニアの姐御の母君も応援しなければ?」
「ふむ、なかなか興味深い組み合わせなのだ」
「コハネはどちらが勝つと思いますか?」
「主さま一択……と言いたいところですが、ミルアさまのデータが乏しいため、的確な判断を出すことは難しいです」
「なに、心配することはない。いざとなれば私がこの里を消滅させてやろう。それで全て解決だ」
「「「するわけないから!!!」」」
「む?」
エーデルワイスが物騒なことを口にして、みんなにツッコミを入れられていた。
みんな楽しそうにしているのだけど……
俺は今、わりと緊張していた。
これはただの稽古。
命のやりとりではないし、負けてもなにも問題はない。
とはいえ……
相手はミルアさん。
おそらく、竜族の頂点に立つ力を持つ。
そんな相手と戦うというのは、かなり緊張してしまう。
「……よし!」
緊張するものの、ここで萎縮なんてしていられない。
決闘に勝つためにも、ミルアさんにも勝つ!
それくらいの意気込みでいないとな。
「ミルアさん、お願いします」
「うん、よろしくね♪」
笑顔で握手。
それから距離を取り……
「……」
「……」
互いに笑顔を消して構えた。
空気が張り詰める。
離れたところで観戦するみんなも真面目な表情に。
そして……
「「っ!!」」
俺とミルアさんは同時に地面を蹴り、前に出た。




