1153話 レッドドラゴンの掟
タニアは同じ竜族に求婚された。
当然、それは断る。
しかし相手は諦めず、今度はタニアに決闘を挑む。
本来ならタニアが勝利するはず。
それだけの実力差があると、ミルアさんも安心して決闘を見守っていた。
ただ、なぜかタニアは本来の実力を発揮できない。
決闘に負けて、望まない婚約を結ばれてしまう。
それだけではなくて、相手の厄介な趣味のせいで小さくなってしまう。
……本当、厄介すぎる事態だ。
ただ、打開策はある。
決闘で全てを決めることができる。
なら、今度は俺が決闘を挑めばいい。
そして勝利してタニアを解放する。
「……っていうことですね?」
「うん、そういうこと! ごめんね……本当なら私がぼっこぼこにして、ヤツザキにして、塵も残さず天に帰すところなんだけど……」
ミルアさんは、口の端からチラチラと炎をこぼしつつ、言う。
よほど頭に来ているみたいだ。
「……私って、立場上、よほどのことがない限りは決闘したらいけない、って決められているの。絶対に負けないから」
にっこりと言う。
よほどの自信だけど、でも、それくらいの力があるんだよな。
幼い見た目だけど、ミルアさんは竜族の頂点に立つ。
「そこで、レインくんにがんばってもらおう、っていうわけなんだ!」
「わかりました」
「大変なことを押しつけちゃって、ごめんなさいって思うよ。でも、こうしないとタニアちゃんが大変なことになっちゃうから、断るなんてことは……あれ?」
「受けますよ?」
「……いいの? そんなにあっさりと受けて?」
「それ以外の方法は今のところ思い浮かばないですし。それに……」
タニアを見る。
「タニアの問題は俺の問題でもありますから」
「……れ、レイン……」
タニアが、ぼんっと赤くなる。
すごく照れている様子で視線を逸らす。
「タニアが無理矢理婚約させられるなんて、絶対に見過ごせないですからね」
「おー、その心は?」
「えっと……」
言わないとダメだろうか?
ミルアさんはにこにこ笑顔。
タニアは期待するような目。
他のみんなは楽しそう。
「……タニアは恋人ですから」
「「「きゃ~~~♪」」」
黄色い悲鳴。
状況を忘れてみんな楽しんでいないか?
「まあ、そういうわけなので」
これ以上、話が脱線しないように元に戻す。
「決闘で解決できるっていうのなら、喜んで決闘をしますよ」
「ありがとう、レインくん♪ やっぱりキミは、私が見込んだ通りの男の子だよ」
「男の子はちょっと……」
「私から見たら男の子かな?」
ミルアさんって、結局、何歳なんだろう?
見た目通りの歳でないことは確かだけど、怖くて実年齢を聞いたことがない。
仮に年齢を聞いたら……
『え、私の歳? ……なんでそんなことを知りたいのかなぁ? ねえ、なんで? なんで? そんなことを知ってどうするの? ねぇ……なんで?』
とか、そんな感じで詰め寄られそうだ。
女性に気軽に年齢を聞いてはいけない。
「じゃあ、レインくんが決闘をする、っていうことで話をまとめてくるね。ちょっとまっててくれるかな?」
「あ、母さん。いきなりそんな話をしても、みんな、納得してもらえるかどうか……」
「大丈夫♪」
ミルアさんはにっこりと、極上の笑顔で言う。
「なにがなんでも納得させてみせるから♪」
拳をぐっと見せつけて、立ち去る。
残された俺達は無言になるしかない。
「……なあ、タニア」
「……なに?」
「……ミルアさんも、けっこう武闘派なんだな」
「……今更な話だけどね」
俺達は乾いた笑い声をこぼすのだった。




