1150話 ややこしい事態……うん、本当にややこしい
「はい、どうぞー」
ミルアさんが笑顔でお茶を淹れてくれた。
いい香りだ。
それだけじゃなくて、ルリのためにミルクと砂糖も用意してくれていた。
優しい笑顔。
気配りもしてくれる。
うーん……俺の知るミルアさんだ。
最後、顔を会わせた時となにも変わっていない。
……本当に謎だな。
ミルアさんがタニアが望まない婚約をさせるなんて思えないのだけど。
「いただきます」
「いただこう」
コハネとエーデルワイスはマイペースで、普通にお茶を飲んだ。
それからカナデ達も飲む。
「さて……と」
同じくお茶を飲んだミルアさんは、カップを置いて真面目な顔を作る。
タニアの体が小さくなったこと。
そして、婚約のこと。
それについての話を聞くことができるのだろう。
自然と気持ちが引き締まる。
「実は……」
「……」
「……ちっちゃいタニアちゃん、可愛いよね! ラブリーだよね! すっごいすっごいキュートだよね!!!」
ガタンッ。
みんな、椅子から転げ落ちてしまう。
いや。
ルリとコハネとエーデルワイスはそのままか。
喜劇を見ているわけじゃないんだから……
「あの、ミルアさん……?」
「あははは、ごめんねー。私、こう堅苦しい感じ? そういうのは苦手だから、ちょっと場を和まそうかなー、って」
「……母さんがごめんなさい」
タニアがものすごく恥ずかしそうにしていた。
そんなタニアを慰めようと思ったのか、ルリがいいこいいこをする。
……タニアが小さくなっているから、妙に似合うな。
「ってか……タニアの姐御、ルリちゃんのこと気にならないっすか? まだ会ったことないっすよね?」
「ああ、この子のこと?」
タニアは頭を撫でられながらルリを見た。
「知らないけど、どうせレイン絡みでしょ?」
「「「正解」」」
「だと思っていたから、まあ、後で詳しい事情を聞けばいいかな、って」
「うむ、納得だな」
「最適な考えですね」
「にゃん!」
その俺に対する妙な信頼感……というか、妙な認識はやめてくれないか?
いや、まあ。
それらを全部否定することはなかなか難しいな、って自分でも思うんだけど。
「っていうわけで、まずはあたし達の方の事情を説明するわ」
「了解。じゃあ、まずはタニアとミルアさんの話を。それから、俺達の話をしようか」
「ええ、そうしましょう」
――――――――――
「そうね……まず、あたしが里に帰ってからの話をしましょうか」
「レインと別れた後、あたしは言っていた通り里に帰ったの。修行の旅、っていう目的で旅をして、レインやみんなと出会って……そのまま大冒険をして。すっかり忘れていたけど、当初の目的は達成していたのよね。色々な相手と戦って、あたし、一人前って呼ばれるようなことはしていたじゃない?」
「だから、一度里に帰ろうって思って帰ったのよ」
「そこから先は私が説明しようかな?」
「タニアちゃんが帰ってきて、私はウルトラハッピー! まったく会えなかったわけじゃないけど、やっぱり、家で一緒に過ごすことができるのは嬉しいからねー! ひゃっほう! って、ごめんね。ちょっとあの時の感動を思い出してテンション上がっちゃった」
「タニアちゃんは修行が終わった報告をしてくれて、みんなにも認められて、晴れて一人前に。タニアちゃんはすぐ帰ろうとしたけど、それはすごく寂しいよね? だから、ずっととは言わないけど一緒にいてほしいなー、ってお願いしたの」
「あの時の母さんは大変だったわ……あたしに抱きついて、里中に聞こえるほどの声で泣いて……はぁ、頭が痛いわ」
「だってだって、タニアちゃんがすぐ帰ろうとするんだもん。いくらレインくんのことが恋しいからって、お母さんのことも気にかけてほしいな」
「な、ななな、なにを言っているのよ!? あたしがレインのことを気に……かけているけど、そりゃ」
「えへへー、タニアちゃんのデレ、いただきましたー」
「……まあ、母さんの頭おかしい言動は置いておいて」
「ひどいよ!?」
「そんなわけで、あたしはしばらく里に滞在することにしたの。確かにまあ……母さんをほったらかし、っていうのは娘としてどうかと思うし」
「ただ……今にしてみれば、その判断は間違いだったわ」




