1091話 本物と紛い物
冒険者ギルドに移動して、報告をして。
それからシフォンのところを訪ねて、話をして。
色々なところにフィアの話を伝えた後、家に戻り……
それからまた、みんなに同じ話、説明をした。
「むぅ……なんか、思っていた以上に厄介な話になってきたのだ」
「ですね。単純に、頭のおかしい人間達を倒せばいいと思っていましたが、それだけでは終わらなそうです」
「あいつらやばいっす。自分は反対っす!」
リビングで食事をしつつ、話をすると、みんな、なんともいえない反応を見せた。
ライハは徹底抗戦の構えだけど……
ソラとルナは、どうするべきか、今後の指針に迷っている様子だ。
そしてルリは……
「……私と同じ?」
フィアがハーフという話を聞いて、感じるところがあるらしく、ちょっとだけ難しい顔をしているような気がした。
けっこうデリケートな話なのだけど、ただ、もしかしたらルリも関係しているかもしれない。
そう考えると、子供だからといって、隠さない方がいい気がした。
さらにショッキングな話が出てきた時は、さすがに隠すが。
「アニキは、どうするつもりっすか? あんな連中と手を組むなんて、自分、嫌っすよ」
「手を組むってことはないさ。ただ、積極的に対立しないかどうか、そこを考える必要があるかな、って」
「しかし、相手は邪教徒と呼ばれるような行いをしている人間達ですよ? 目的がどうあれ、その行いは犯罪者そのもの。考える必要なんてないのでは?」
「うむ。我もそう思うぞ。目的だけしか考えられない者は、視野が狭く、倫理観も緩いのだ。平気で他人を傷つけたりするぞ」
「それは、わかっているつもりだけど……」
ただ、相手のことを知りたいと思う。
知らないまま倒してしまったら、そこで終わり。
知る機会は永遠に失われてしまう。
知ったからといって和解できるとは限らない。
むしろ、より深い溝ができるかもしれない。
ただ、納得はできると思う。
迷うことがないはず。
「……とはいえ、これは自己満足か」
なにかに縛られることはなく。
やりたいことをやる。
そう考えていたのだけど、その結果、大きな被害や犠牲が出るとしたら、さすがに勝手をするのは難しいわけで……
悩ましい問題だ。
……結局。
みんなであれこれと話し合ったものの、きちんとした結論は出ないで。
その日は、それで話は終わりとなって、みんな、それぞれの部屋に戻った。
――――――――――
「レイン」
ふと、声が聞こえてきた。
「レイン」
もう一度。
それで意識が本格的に覚醒して、俺は、ゆっくりと目を開けた。
「……ルリ?」
夜。
灯りの点いていない部屋。
俺が寝るベッドの隣にルリがいた。
「えっと……どうしたんだ? 眠れないのか?」
「ごめんなさい。ただ、話しておかないといけないことがあって」
「……わかった。ちょっと待っててくれ」
たぶん、とても真面目な話だろう。
そう察した俺は、一度部屋を出て、キッチンでホットミルクを用意した。
部屋に戻り、ルリに渡す。
「これでも飲みながら話をしようか」
「うん。美味しい、ありがとう」
ルリは、ちびっとホットミルク飲んだ。
猫舌だっただろうか?
「美味しい」
「そっか、よかった」
「……あのね」
いくらかホットミルクを飲んで、ルリが小さな口を開いた。
「お昼、男の人と女の人と話をした?」
「それは……」
もしかして、ゼクスとフィアのことか?
二人のことは話していないけど、どうして、ルリがそのことを……
「……あの二人のことを知っているのか?」
「なんとなく、近くにいるような感じがしたの。知っているかについては、よくわからない。ただ……」
ルリは、珍しく表情を歪めて言う。
「……自分を感じているみたいで、怖い」
「自分を?」
「もう一人、私がいるみたいだった……うまく言葉にできないけど、そんな感じ」
ルリの言いたいこと、伝えたいことはよくわからない。
ただ、邪教徒とルリの間に、なにかしらの繋がりがあることは確定だ。
でなければ、こんな言葉は出てこないだろう。
そして、それはルリも感じているらしく、不安そうに言う。
「私……レインの敵になるのかな?」
ちょっと一回更新を休みます。
すみません……!