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103話 新しい能力は?

「というわけで、レインはどんな力を得たんや?」


 朝。

 起きてリビングに移動すると、ティナがそんなことを聞いてきた。


「なんの話だ?」

「だから、レインの力の話や。ウチと契約したっていうことは、何か新しい力を得たんやろ? みんなから、そう聞いてるで」

「そうなるのか?」


 説明を欲して、カナデを見る。


「はぐはぐはぐっ!」


 夢中でごはんを食べていた。

 代わりにタニアを見ると、丁寧に解説してくれる。


「ティナは普通の人間じゃなくて、幽霊だからね。クラス分けすると、Dランクくらい? ギリギリかもしれないけど、レインが何かしらの力を手に入れてる、って可能性はあると思うわよ」

「よっしゃ!」


 なぜかティナが喜んでいた。

 俺の話なのに、なんでティナが喜ぶんだろう?


「どんな力を得ているのか、レインは興味ないか? 調べるなら、ウチが協力するで」

「あっ、それ、あたしも興味あるかも」

「レインの新しい力ですか。ソラも気になりますね」

「幽霊と契約したら、どうなるのか? ふわふわと浮くことができるのか?」


 ソラとルナも話に参加してきた。

 ニーナは、おとなしくごはんを食べているけれど……

 時折、ちらちらとこちらを見ている。

 ニーナも興味があるらしい。


「はぐはぐはぐっ!」


 カナデは一人、ごはんを食べ続けていた。

 単に話が聞こえていないだけなのかもしれないけど……

 とことんマイペースだな。


「わかったよ。じゃあ、後で調べてみるか」

「うんうん、そうしような。幽霊関係の能力やったら、ウチが教えてあげられるで」


 ティナはやけに乗り気だけど……

 どうして、そこまで気にするんだろう?

 ちょっと不思議だった。




――――――――――




 朝食を終えて……

 場所は、再びリビング。

 ただし、動きやすいようにテーブルは端に寄せておいた。


「それじゃあ、第一回! ティナちゃんと契約したことで得た力はなんなのか!? 検証大会、始めるでーっ!!!」

「「「「わーっ、ぱちぱちぱち!」」」」

「……ぱちぱち」

「みんな、テンション高いな……」


 毎日、依頼を請けていたら大変なことになるので、今日は休日に設定してある。

 なので、それぞれ好きに過ごしていいんだけど……

 みんなが集合していた。


 ヒマなのだろうか?

 ……ヒマなんだろうなぁ。


「なあなあ、レインは幽霊と契約したことはあるか?」

「ないよ。そもそも、ちょっと前までは普通の動物としか契約してないし」

「よっしゃ! なら、幽霊の契約は、ウチが一番乗りっていうわけやな!」

「一番乗りといえば一番乗りだけど……」

「それを言うなら、レインと契約したのは私が一番最初だよ?」


 なぜか、カナデがティナに対抗する。

 胸を張っていて、どことなく得意げだ。


「誰が一番最初、って話になると、カナデじゃないでしょ」

「え、なんで?」

「レインが一番最初に契約したのは?」

「えっと……初めてのテイムは、うさぎかな?」

「っていうわけ」

「にゃあ……」


 カナデが、がくんと肩を落とした。

 そこまで一番にこだわっていたのだろうか?

 そんなこと気にしなくてもいいのに。

 俺にとって、カナデを含め、みんなは大事な仲間なのだから。

 契約した順番とか、そういうものは関係ない。


「はいはい、話が逸れてるでー。今は、ウチと契約したことで得た力の検証の時間や」


 ティナがパンパンと手を叩いて、みんなの意識を集中させた。


 突然の展開で、やや戸惑っているところはあるけれど……

 でも、力を確認しておく、という作業は必要か。

 今までは、ぶっつけ本番なところが多いからな……

 あらかじめ把握しておくことで、危険を減らせるかもしれない。


「でもでも、どうやって検証するの?」

「それは……」


 カナデの尤もな疑問に、ティナが言葉に詰まる。

 特に考えてなかったんだろうなぁ……

 すごく困った様子で、ティナがたらりと汗を流していた。


「えっと、それは……ほ、ほら、アレや。追い詰められた時に覚醒するとか、王道のパターンやろ?」

「俺、追い詰められないといけないのか……?」

「にゃー……レインに乱暴なことはしたくないよ」

「なら、えっと……そや! ニーナの時みたいに、体が使い方を学んでいるとか、そういうのはないん?」

「んー……」


 軽く体を動かしてみたり。

 手の平を握ったり開いたりしてみたり。

 あれこれと自身の体を確認してみるけれど、違和感はない。

 ニーナの時のように、何かしから感じることもない。


「特にないな」

「さいでっか……」

「新しい魔法を覚えたとか、そういうことはないのか? ほれ、集中してみるのだ」

「うーん……それもなさそうだな。使える魔法は三つのままだ」

「力が増えたとか、そういうことはありませんか?」

「どうだろうな? カナデと契約した時のような感覚もないし……それも違うんじゃないか?」

「なら、魔力はどう? ちょっと魔法を使ってみたら?」

「ちょっとで使えるような魔法が少ないんだけど……それも違う気がするな。例えば……ヒール」


 自分に治癒魔法をかけた。

 昨日、ティナと契約する時にできた親指の傷跡が消える。

 いつもと変わらない速度、威力で、変化は感じられない。


「じゃあ……わたし、みたいな……特殊能力?」

「そうなると、確認のしようがないな。どうやって発現させればいいのか、さっぱりわからない」

「ダメじゃん」

「ぐはっ」


 タニアの身も蓋もない言葉に、ティナが、がっくりとうなだれた。


 どうして、ティナがそこまで気にするんだろう?

 自分が関わっていることだから、確認しないと気が済まないんだろうか?


「……うーん、どうしたものかな」


 その後も、ティナと契約したことで得た力を確認するために、色々な方法を試してみたのだけど……

 突き止めることができず、ただ時間だけが過ぎた。


「にゃー……何もわからないねー」

「これだけやってもわからないってことは、ひょっとして、何もないんじゃない?」

「ま、マジかぁ……」


 ティナがこれ以上ないくらいに落ち込む。

 哀愁漂う感じで、簡単に声をかけられないほどだ。


 どうして、そこまで気にしているのかわからないけど……

 どうにかしてやりたい。

 そのためには、ティナと契約して得た力を確認しなければいけないんだけど……さて、どうしたものか?


「ティナは、どうして力の有無を気にしているんだ?」


 迷った末に、ストレートに尋ねてみることにした。

 言葉にしないとわからないこともある。


「それは……」

「よかったら、教えてくれないか?」

「……レインの旦那には、すっごい世話になったから……恩返しがしたいんや。それで、契約のことなら、ウチでも力になることができるかもしれない、って……」

「そっか……そういうことだったのか」


 そんなに気にしなくてもいいんだけど……

 でも、それとは別に、ティナの気持ちはうれしい。


 幽霊と契約をして手に入れた力……か。

 どうにかして突き止めたいのだけど、なかなかに難しい。

 ティナも何も思い浮かばない様子で、ふわふわと浮いている。


 ……浮いている?


「ひょっとして……」


 ふと、とある可能性を思いついた。

 試してみる価値はありそうだ。


「レイン?」

「みんな、ちょっとそこで見ててくれ」


 目を閉じて集中する。

 自分の内に意識を向けて……

 ティナと契約したことで得た力を探り当てる。


 ……見つけた!


 体の奥底に沈んでいた光。

 それを拾い上げて、自分のものにする。

 そして……


「おぉ!?」


 体についている枷を切り離すような感覚。

 それを実行すると、足元が床から離れた。

 わずかに体が浮いて、ふわふわと漂う。


「レイン、浮いているよ……え? え? なんで?」

「それが、ティナと契約して得た力……っていうことなのかしら?」

「だろうな……って、おっと……これ、制御が難しいな」

「どうやって浮いているのだ? すごい不思議だぞ」

「魔力の流れを感じますが、魔法ではない……? スキルでしょうか?」

「重力を……操作、してる……?」

「ニーナ、正解」


 重力を操作することで、ティナのようにふわふわと宙を浮く。

 重力に干渉できるなんて、考えたこともないから、最初は気がつくことができなかったけれど……

 一度、その可能性に気づいたら、あとは簡単だった。


 もっとも、制御はかなり難しい。

 わずか数センチ、浮き上がるのがやっとで……

 タニアと契約したことで大幅にアップした魔力でも、長時間、持続させることはできなさそうだ。


「ふぅ……こんなところかな」

「おー、おおおぉー……ウチと契約して、ちゃんと力を得ていたんやな……なんか、感動やわ」

「なんでティナが感動するんだよ」

「それは……レインの力になりたいから。ウチ、役に立った?」

「すごく。使いこなすことができれば、かなり役に立つ『武器』になると思うよ。ティナのおかげだ、ありがとう」

「そっか……ウチ、レインの役に立つことができたんやな……ははっ、めっちゃうれしいわ」


 にっこりと笑うティナは、とてもすがすがしい顔をしていた。

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既存の作品を大幅にリファインして、新作を書いてみました。

娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!

こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

― 新着の感想 ―
[気になる点] よくあるゲームのステータスではないから、重力操作なのかサイコキネシスなのか判断しづらい能力だ(汗)
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