挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

荒野を往く旅人

 長い長い、とても果てしなく長い道のりを歩いてきた旅人がおりました。

 舗装され、綺麗な道を歩きながらも時おりその足は、枝分かれした、荒れた道へと外れることもしばしば。

 それでも、荒野の中を旅人は歩くのです。

 目的地はありません。

 時おりすれ違う、他の旅人にその道は間違っている、こっちの道へおいでよ言われ手を引かれます。

 旅に不馴れだった頃は、他人の言葉に流されてしまった旅人でしたが、今はやんわりと断ることを覚えました。

 断った結果、哀しい言葉の刃で切りつけられることもありましたが、しかしそれは些細なことなのです。

 まだ旅を始めたばかりの頃。

 本当に最初の頃は歩き方すら覚束なくて、他の旅人を真似して歩いていた頃は、その真似すら石を投げられました。

 旅人は試行錯誤のすえ、自分なりの歩き方を見つけました。

 でも、自分なりの歩き方を見つけても、気持ち悪いとやっぱり石を投げられました。

 どうすればいいのかわからなくて、他の旅人の助言にしたがって、自分に嘘をつきながら歩いたこともありました。

 それでも、旅人は、歩き続けました。

 自分に嘘をついて、この道は楽しいのだと言い聞かせて、歩き続けました。

 でも、すぐに立ち止まってしまいました。

 荒野の真ん中で、ひとりきり。

 立ち止まって、うつむいて、うずくまって。

 そして、そのまま動けなくなってしまった頃のことを、旅人は思い出します。

 思い出して、そしてなんだか可笑しくて笑ってしまいました。

 旅人の足を再び動かしたのは、他の旅人が楽しそうに歩く光景でした。

 石を投げられ、言葉の刃で傷つけられているはずなのに、それでもヘラヘラとニコニコと笑いながら、荒れた道を選ぶとある旅人でした。

 本当なら血だらけになっていてもおかしくないのに、その旅人はまったく怪我をしていませんでした。

 思わず、旅人は、楽しそうに歩く旅人を追いかけました。

 そして、聞いたのです。

 「どうして、貴方は怪我をしていないのですか?
  どうして、貴方はそんなに楽しそうなのですか?」

 楽しそうに歩く旅人は答えました。

 「怪我をしていないわけじゃないよ。
  だって、自分の歩く道を楽しくしたほうが、楽しいでしょう?」

 楽しそうに歩く旅人にはよく見れば、あちこちに薄くなった傷痕がありました。

 「自分の決めた道くらい、好きに歩きたいじゃない」

 「でも、その道が間違っていたらどうするんですか?」

 「間違ってないよ」

 楽しそうに歩く旅人はっきりとそう言いました。

 「仮に間違ったら、すぐにわかるよ。
だって楽しくなくなるから。
他の旅人に迷惑をかけない範囲で好き勝手する、これは正義だよ」

 「でも、貴方に石を投げている人達がいます。あの人たちにとっては迷惑なのでは?」

 「違う違う、逆だよ。
だって、進んじゃいけない道には【止まれ】か【立ち入り禁止】の看板か立て札があるもの。
私が歩いてきた道には、【注意】の看板があっただけ。
進むのは良いけど、気を付けてねの看板があっただけ。
石を投げている人達はね、自分勝手に石を投げてるだけなんだよ。
【良かれと思って】の正義の心でね。
それはね。その人たちの心を満たすだけの行為であって、本当の正義じゃないんだ。
だって、本当に正しい行いなら、もっと人がいても良いのに、徒党を組んで袋叩きにしても良いのに、たった一人で石を投げて、無抵抗のニンゲンを傷つけてる。そんな事実があるだけ。
ねぇ、迷惑なのはどっちだと思う?」

 そう問われたのでした。



 そんな思い出に、自然と旅人の顔に笑みが浮かびました。

 旅人は荒野を往きます。

 笑顔で、往きます。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ