05.やあ(´・ω・`)うん、アルフォンスなんだ
究極の選択の連続に、この大空に翼を広げて飛んでいきたいーーそんな心境になった私を誰が責められるだろうか。
第一さ! なんでこんなアブノーマルな連中ばっかりなわけ! もっとふつうは、ふつうはいないのか!
私は決して贅沢を言っているわけではないのだ。身長一七〇cm以上、大卒、ハゲでもデブでもマザコンでもない三十五歳までの次男の公務員とか、そんな攻略対象はないのか!
私は前世での三十回目の見合いの後のように、太陽に吠えながら明後日へ向かって駆け出した。
「あっ、ルクレツィア!!」
ところが途中の七曲警察署の前で、誰かとすれ違った気がして足を止める。
ん? 今確かに人の気配が……。
私はキョロキョロと当たりを見回した。やがてどこからか声が聞こえ、私はぞぞっと背筋に悪寒が走った。
「やあ、ルクレツィア……」
ど、ど、どこだ! 誰だ!!
しかし声は聞こえど姿は見えず。
私は目を必死に凝らし、ようやく曲がり角の片隅に、座敷童のごとく膝を抱えて座る男を見た!!
「やっと気付いてくれたんだね……」
ヒィィ! 透けてる!! 身体が半分透けてる!!! っていうか、こ……コイツは! やっぱり攻略対象のアルフォンソ!
「昔から本当の僕を見つけられるのは君だけだったよ……フッ」
そうだろうな! だって見えないもんな!! 主に物理的な意味で!!!
生涯モテ期で何度も結婚したルクレツィアたんの人生の中で、アルフォンソは二番目と三番目のダンナの名前である。二番目がアルフォンソ・ダラゴーナでポリ王の息子、三番目がフェラーラの君主のアルフォンソ・デステである。
が、この二人のアルフォンソは影が薄い。なぜなら二番目のアルフォンソのとの結婚生活は二年しかなく、哀れウィ○○ディアの説明でも、他のダンナ&彼氏と比べてダントツに説明が少ない。三分の一くらいしかない。
三番目のアルフォンソとはなんだかんだで死ぬまで添い遂げているが、それまでを考えれば割と平和に日々を過ごしていたらしいのだ。でもって、平穏とは波乱万丈の反意語なので、ドラマの材料にはならないんだな!
そんな薄い二人のアルフォンソを足して二で割ったキャラがコイツなんだが……。
おい、製作者! いくらインパクトの薄い連中だったからと言って、ゲームでの存在感まで薄くするこたぁないだろう! 半分透けてる! むしろ消えかかっているから! あっ、言ってる端から腰の輪郭がっ。
ピコーン。
むっ、またもや画面が表示されたぞ。さて、今度の選択肢の内容は……。
A:
B:
C:
選択肢も透けてて見えねぇぇ! どないせーってんじゃい!!
もはや乙女ゲーではなく、色んな意味で無理ゲーである。