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04.それにしてもレベルの高さよ

 私は伏せ字を忘れる勢いで、目を血走らせて画面をみつめた。


 どっちにしろ妊娠するのなら、せめてよりマシな選択を……。


「よりマシ」のレベルが奈落の底にまで落ちつつあるのは、きっと気のせいだよねそうだよね?


 ともかくアオカンはアカン! バックでズッコンバックンも嫌だ! となると、残された選択肢は騎乗位か?


 うん、これならまだイケるかも。競馬好きだったし。


 はたして何がイケるのかは知らないが、私が手を伸ばしてBを選ぼうとした、次の瞬間のことであった――。


「ぶほおおおううう」


 前触れもなく背後からドロップキックを受け、顔面から画面に突っ込んでしまったのだ! ゲームの世界だからか痛みはないが、私は鼻で「A」を選んでしまった!


 アオカンでデキコンとか、オラそんなゴカンのいいオチは、絶対にイヤズラぁぁぁ!


 ところが今度はムンクになる時間もなかった。地の底から響くような声が耳に届いたからだ。


「ルクレツィアアアアアアアアアア……」


 ヒィィ! この声は!!


「お、お兄様……!?」


 そう、チェーザレがじりじりと迫ってきていたのである。


 さすがヤンデレ。無駄に執念深いな! そのエネルギー、発電にでも使えない?


「逃がしはしない……。お前は私のものだ……」


 チェーザレは目をらんらんと輝かせ、私に向かって腕を伸ばした。


 今だとばかりにその手首をつかむ。


「ルクレツィア?」


 技には技で答えるのが武士の礼儀であろう。


「――せいやっ!!」


 私はチェーザレの背後を取ると、華麗なバックドロップを披露した。そのままスリーパーホールドでシメて落とし、その背を踏みつけながら勝者のVポーズを決める。


……あれ、これ、乙女ゲーム……だったよね? あっ、ペドロがドン引きしている。


「る、ルクレツィア様」


「んじゃ、そういうことで! あばよぺっつぁん!!」


 屋敷に逃げ場を無くした私は、ついに街へ向かってダッシュした。


 吉○屋の前を駆け抜け、ユニ○ロのある通りを過ぎ、ドン○のある曲がり角を曲がる。


 ところがそこでトーストをくわえて走ってきた、セーラー服の美少女と正面衝突してしまったのだ!!


 私たちは勢いで二人とも道に転がった。


「あ、あいたたた……」


「い、いったぁい」


 トースト女子が身体を起こしてくねっと座る。おお、私に負けず劣らずの美少女だ。


 ところで彼女のスカートからは、白く細い脚が見え隠れしていた。その足にはぼさっとなった何かが生えている。


 そう、それはSU・NE・GE☆彡 


 顔に似合わずペドロに勝る剛毛である。


 ハッ。


 私はまたもや思い出した。


 この男の娘は攻略対象のジョバンニだ! ジョバンニっていうよりジョニ子だろう。 


 史実のジョニ子はルクレツィア最初の旦那、ジョバンニ・スフォルツァがモデル(笑)だ。その後ボルジア家との関係の悪化により結婚自体が白紙に戻されている。その事態にいたるまでのボルジア家の対応が鬼畜で、ジョバンニに別れろと圧力をかけたあげく、最後は「ボクたんは性的不能者で、ルクレツィアとはいたしてないんですぅ。だからこの結婚は成立してないんですぅ」と言わせてるのよね。


 そんな史実を知ってか知らずか、ジョニ子は「やだ、恥ずかしい……」と頬を染めた。

 

「一番、見られたくないところを見られちゃった……」


 ええい、紛らわしい言い方をするな!

 

「責任取って……おヨメさんにしてくれる?」


 アタシじゃなくてアンタがヨメかい!


 と、ここでピコーンと三度目の選択肢の画面が浮かぶ。


A:「私でよろしいのなら……こちらこそお願いします」

B:「申し訳ございません。遠慮させていただきますわ」

C:「とりあえず、お友達から始めませんか」


 私は必死に記憶を探った。えーと、確かそれぞれの結末は、A:「うれしい。記念に腕にルクレツィアの名前をカッターで彫ったんだ……」。B:「ひどいわ! 私とは遊びだったのね!」とグッサリ。C:二人仲良くメンヘラになる。


 ヒイイ、あらゆる意味で事故物件! 男の娘でメンヘラって斜め上にレベルが高いなこのゲーム!

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