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序
安楽庵策伝の史上稀有な業績を改めて今の時代に呼び起こすことを、生業とする。
序
いつの頃の話かと言えば、これは元和九年の癸亥の年に、天下は平和で人々が豊かに楽しく暮らしている時のことである。
わたくし策伝が幼少の小坊主のころから、聞いて趣き深かったり、面白かった話を、手控えに書き留めておいたものである。
今年わたくしは七十歳になりまして、住職をしていた誓願寺の北西のすみっこに隠居をしました。この庵の名前を「安楽庵」としました。
隠居暮らしとなった最近は、心を穏やかにして過ごす時間が多く、昔から書き溜めていたものをこの年になって改めて見直してみると、自分でも眠気が吹き飛ぶほど面白くて笑いが止まらないのである。
そういうことがあったので、この本を『醒睡笑』(睡を醒ますほど笑う)と名前をつけて、他の人が見ると下手糞で面白いだろうこの本をまとめ、全八巻として残すのである。
ここに新釈『醒睡笑』が始まるのである。